第334話 攻撃のしかたがおかしい

 ヤマトはすこし首を頷かせてから口をひらいた。


「レイに指摘されてみて、今やっとなんとなく、なにかおかしい、と感じはじめている。だけど残念ながら、それがなんなのか、ぼくもわからない」

 ヤマトがお手上げであることを認めたせいで、全員の目がレイのほうへ向いた。


 その視線は、はやく教えてくれ、という脅迫に満ちていたが、レイはそれには頓着せず中空のエア・コンソールを操作すると、今度は『フーディアム』の映像を呼び出した。


 フーディアムに現れたおんながステッキを前につきだす。

 そのステッキの先にいた『特殊アンドロイド隊員』たちが吹き飛んでいく。からだの真ん中から半分になる。手や足がもぎとられる。首がとれて爆発する。

 映像がその背後にいた人間たちが吹き飛ばされるシーンにさしかかったところで、レイはストップをかけた。

「それで?」

 すこし苛立ち気味にアスカがその先をうながした。ユウキも困りはてて声をあげる。

「レイくん。申し訳ない。わたしたちにはこれらの映像から、なにを読み解けばいいのかわからない」

 レイは嘆息した。自分はみんなを前にして、意見を滔々とうとうと述べられる種類の人間ではない。だれかが自分の言わんとしていることを代弁してくれれば助かると思っていたが、そううまくいきそうにもなかった。

「攻撃のしかたがおかしい」

 レイはひとことそう言った。

「なるほど、レイ。きみの言いたいことがわかった」

 ヤマトが声をあげた。

「最初に横一線で突入した戦闘機は、ステッキをふられると、数百メートル離れているにもかかわらず爆発してバラバラに飛び散った。だけど、次のV字編隊の戦闘機は、ステッキをふられると、ばらばらになって爆発した——。レイ、もういちど『フーディアム』の映像を。スローモーションで」

 レイはさきほどの映像をプレイバックした。今度は攻撃の瞬間がゆっくりと再生されていく。

 『特殊アンドロイド隊員』たちが爆風のようなものに吹き飛ばされていく。と同時に隊員のからだのパーツがバラけはじめ、手や足がはずれていき、内部のパーツが徐々にむきだしになり、ついに動力パーツがバラけたところで、なにかが発火し爆発したことがわかった。

「たぶんレイが言いたいのは、戦闘機の最初の攻撃はあきらかに外側から衝撃をくらって爆発したものだったが、二回目の攻撃は内側から解体されたために爆発したものだった。あの『フーディアム』の魔法少女の攻撃のように。そうだろ?。レイ」

「うん、そう。なぜおなじ攻撃を二回続けなかったのか?。そしてあの『フーディアム』の魔法少女はほかの連中と違って、なぜ電撃攻撃を仕掛けなかったのか——」

「それって重要……ですか?」

 クララがおずおずとレイに訊いた。

「わからない。でももしあの魔法少女がイオージャの電撃を媒介する以外の攻撃ができるとしたら……」


「イオージャ以外に、もう一体、亜獣がいるのかもしれない」

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