異能力者バトルの頂上決戦!!

ちびまるフォイ

あたまでっかちな能力者たち

「やったか!?」


立ち込める煙の中から、倒したはずの男の影が現れた。


「さすがに今のは危なかったぜ……」


「キサマ! あれだけの攻撃を受けてなぜ立っていられる!?」


「それは俺の能力『不死身の不思議アンデッドリミテッド』が発動したからさ」


「なに……!?」


「この能力はものすごく煙が出たり、爆発が起きたりして

 自分の姿が見えなくなるような場合の攻撃を受けるときには

 なんやかんや上半身の服が破れるだけの軽症で済む能力」


「なるほど、大掛かりな攻撃は効かないってわけか。

 こうなったら直接その体にダメージを与えるしか無いようだな」


敵はファイティングポーズを取って戦闘態勢を整える。

しかし、主人公は手のひらを前に出した。


「無駄だ。なぜなら俺の能力『直立不動のタイイク・デ・ボッチ』があるかぎり

 肉体への物理攻撃は効かないぜ」


「なら、これならどうかな?」


敵は魔術式を展開する。


「私の能力『紅蓮光輪イチゴア・ジ・グミ』はあらゆる能力を無効化する。

 キサマがどんな能力を持っていたとしても無傷では済まない!」


「そんな強力な能力、いったいどこで!?」


「それは私がまだ5歳のときだった……」


「ぐっ!? なんだ!? 体が動かない!?」


「それは私の能力『記録回廊カイソウシテルトキウゴケナイ』が発動したのさ。

 キサマは私の思い出話がひと段落するまでは攻撃も防御も、

 荷物の受取も、トイレに立つことすらできない!!」


「なっ……! それじゃ、完全な無防備に……!?」


「そして、この能力は、私にも適用される!!」


「なん……だと……!?」

「私も回想が終わるまでは動けない!!」


そして敵の5歳の誕生日パーティに友達が誰も来なくて、

気を使った両親に言葉によってかえって幼心が傷ついたという思い出を語った。


「あの日から私は人を信じることができなくなり、

 マラソン大会でもスタート前に

 一緒にゴールしようねなどという言葉も信じられなくなった……。

 そして、この恐るべき能力が発現したのだ!」


「体が自由になった! 回想が終わった!」


体の自由を取り戻すなり能力を使おうとしたが、主人公は膝から崩れた。


「な、なんだ……!? 足が……動かないっ……!!」


「どうやら、私の能力『皇帝の諦観アシ・ガシ・ビレル』の効果が出たようだな。

 回想が始まる前にキサマにかけておいたのさ!」


「いったいどういう能力なんだ」


「この能力はおもに正座しすぎて足がしびれたときなどに発現する

 恐ろしい拘束魔法。回想している間に能力の効果がキサマのふくらはぎまで浸透し

 そして今、キサマの自由を奪っているというわけだ。どうだ動けまい?」


「なんの……これしきっ……!」

「無理して動けば死ぬぞ?」


しかし主人公は自分の能力で恐るべき拘束魔法を解除した。

これには敵も言葉をなくした。


「な、なぜだ! どうして動ける!!」


「それは俺の能力『従わざる囚人ゴツゴウシュギ』が発動したのさ!」


「バカな! 能力は私の『虚数空間フラットスペース』で封じたはず!」


「俺の第3の能力『三角関数トライ・ナンバーズ』が発動して、

 無効化する能力を無効化した!」


「そんなことが……!」


「サイン、コサイン、タンジェント……!!」


「キ、キサマ! なんの呪文を唱えている!?」


「能力『三角関数』は相手の能力を無効化するだけじゃない。

 相手の知覚を混乱させ、やがて単位を落とさせる能力もあるんだ。

 さぁ、ここからが本番だ!!」


「……ククク」


「何がおかしい!?」


「キサマ、私の能力を消したのは失策だったようだな。

 能力を消したことで、私の中に封じられていた本来の能力が発現したのだ!

 こうなってはもうキサマも終わりだ! 覚悟しろ!」


完全に追い詰められた主人公だが取り乱す様子はなく静かに告げた。



「……お前、水上置換って知ってるか?」



「なんだ? この状況で何を言っている?」


「水上置換ってのは科学の実験とかで発生した気体を

 水を経由してビンとかに集める気体抽出手法のひとつさ」


「ま、まさか!? キサマ! 私の能力発言を見越してなにか罠を!?」


「いいや!! なんの意味もない!! ただ言ってみただけだ!!」


「そうか!! ならば死ね!!」


「しかし! 時間をかせぐことはできた!!」


主人公の言葉に敵は攻撃の手を止めた。


「キサマ、このわずかな時間に一体何をした!?」


「能力が無効されていても使える能力があるんだよ。

 俺の第4の能力『緊急連絡エマージェンシーコール』がな」


「いまさら、キサマになにができる!」


「この能力の恐ろしさを知らないようだな。

 実はこの能力は箱ティッシュの1枚目を取り出すときに

 ビリッて破れないように取り出すコツを見つけたものだけが得られる特別な能力」


「そんな特別な能力が……!」


「この能力を身につけた人間はコンビニのおにぎりの袋を

 毎回キレイに海苔を破かずに開けるという副次能力を手にする。

 ただしその代償に雑誌の袋とじを開けるときは毎回失敗する」


「そんな能力で何をしようというのだ!」


「まだわからないのか。中学生で方程式を習う意味が!!」


「それは本当にわからない!!」


「俺にこの能力を使わせた段階ですでにお前の敗北は決まっていた。

 たとえどんな能力を持っていたとしてもそれは揺るぎない真実へと変わる!」


「説明しろ!! キサマ、いったい何の能力を使ったんだ!!」



叫ぶ敵の背後から、母親が出てきてゲンコツを食らわせた。

不意をつかれて敵は死んだ。



「あんた、パンチ1発で倒せるんだから

 あたしを呼びつける前に自分でなんとかしんさい」

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