第5話 ポテトチップス幸福問答

「ポテチってさ。おいしいじゃん」

「何よ急に」

「でもさ、夢中で食べてるとあっという間に終わる」

「たしかにね」

「そこで考えたんだよ。袋の中身を見ずに食べる方が幸せなのか、それとも中身を確認しながら食べる方が幸せなのか」

「貴方、退屈なのね。…面白いとは思うけれど」

「中身を知らなければ、今自分の手の中にある一枚のチップスは、ただただ美味しい。中身を知っているなら、その一枚のチップスは、美味しいには変わりないけど、咀嚼してしまえば、中身が終わりに近づいていることを如実に突き付けてくる」

「一枚のチップスを全力で楽しむのなら、見ない方がいいんじゃない?もし貴方が楽観主義者だとしたら、また話は別だけれど」

「そう、そうなんだけどね。その一枚のチップスも必ず終わる時が来るんだ。しかも、中身を知らない人にとっては唐突に」

「……そんな細々したこと考えずにやりたいように食べるのが一番幸せなんじゃない?」


「あ、もうなくなった。他のある?」

「もうストックはない。けど、コンビニでいくらでも次は買えるわ」

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