第7話 対策本部①
「おい、なんでこんなにも艦の行方不明が相次いでいる!?」
怒りを全く隠さない、何度目かの大声が響いた。パソコンが並び、壁一面にある画面に情報が並ぶその部屋ではおよそ30人ほどがキーボードを叩いたり、端の方の机で話し合いを行ったりしている。
騒がしい室内に、ある女性が駆け込んできた。最も誰も気にかける者はいなかったが。
「部長!ワープを禁止することで被害を押さえられる可能性があると報告がありました!」
この声に、全員の動きが止まる。そしてこの部長、と呼ばれた男が全員の心の中の意見を代弁して声を出した。
「なに?なんでそんなことでか?」
「詳しくはこれを読んでください!」
そう言って彼女は数枚の紙を渡した。その紙にはある本の数ページをコピーした内容があった。長々と書かれたその論文の最後には、「ジャグラー・ベル」と名前があった。
「うむむ・・・・・・」
これは100%朗報・・・では無かった。というのもベルは無名。さらに書かれていた内容は全て机上論。これでは艦乗りからの批判は避けられない。
「・・・少し検討させてくれ」
そうとだけ言い、背もたれに体を預けた。
実際これ以外有力な説はない。どの研究者も頭を悩ませ、ついには
「そもそも仕組みが分からないものを大衆化したのが問題だ」だの、
「原理も分からないものを平気で使えるようにするなんて過去の研究者は何を考えていたんだ 全く歴史から学んでいない」
等と好き勝手言っている始末だ。
これしている間にも被害が広がっているかもしれない。そうは思うが気が進まない。
「・・・・・・・・・しょうがないか・・・・・・」
彼はそう呟くと電話を取り、大儀そうにボタンを押した。部屋が軽くざわつく。
「もしもし、ああ、おれだ 今すぐ全ての艦のワープを禁止しろ ・・・いいから早くしろ 責任は俺がとる!早く伝えろ!」
そう言い、相手の応答を聞かないまま電話を切った。部屋のなかにいる誰もが部長と目を合わせないようにしている。
部長はもう一度、背もたれに体を預けた。机の上にのった自分の子供の写真は極力見ないようにしながら。
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