夢を夢見る僕達は。

@hoshi___

第1話

<西内海人side>

深夜バイトから帰ると時計は5時半をさしていた。薄明るくなった空と反比例した自称マンションの薄汚い暗い部屋に入る。店長が「賞味期限切れたから持って帰っていいよ」って無愛想に言ったから遠慮もせず持って帰ってきたシャキシャキレタスサンドウィッチをテレビを見ながら食べる。テレビから流れるキャピキャピした女の声が虚無感漂う部屋に無駄に響き渡って、自分が1人であるということを1層強調させた。テレビの中のキャピキャピ女は「桧山連樹さんってバンドやめようとか思ったことないんですかー?」とゲストである桧山連樹に問いただしている。それに対して、桧山連樹は「そりゃありますよ。」とぎこちない笑顔で返していた。彼はぎこちない笑顔だったもののやっぱり輝いていてそれが昔の彼ではないことを証明させていた。「えー、そうなんですね!」とキャピキャピ女は返していて、あまりにも予定調和なその会話に僕は吐き気がした。この番組の裏にはいつでも笑えるバラエティーがあることと僕は知っていたが、この番組を変えることも消すことも出来なかった。いつもならバイトから帰ってきたこの時間はバイトの疲れで寝るのに今日に限って、つけたテレビのゲストが桧山連樹でついつい見てしまった。


僕はずっと、桧山連樹という人間から離れられないでいる。そんな僕が分からない。ずっと変わらないままだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

夢を夢見る僕達は。 @hoshi___

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る