ゾラム領異変ー10

村の南側にある森の中・・・


「厄介ですね…魔法が吸い込まれます…」


「キュゥ…」


「トキが枷外すから刃で攻撃してないけど


殴るだけじゃきついよね?


軽く殴ったら折れそうだし…」


「ワォゥ…」




ヴァイスと人面牛が戦っていた。


傷付け無いように打撃だけにしている。


トキが来るまで痺れさせようとしていたが


人面牛が魔力を食べてしまい苦戦していた・・・


現在人面牛の後ろの草むらに隠れている。


人面牛はヴァイス達を探そうと首を回している。




ヴァイス達が相手しているのは


四凶の一体の饕餮とうてつ。




饕餮とうてつの「饕」は財産を貪る、


「餮」は食物を貪るの意である。


何でも食べる猛獣というイメージから転じて


魔を喰らうという考えが


生まれている神話の怪物である。




このエクサクロスは魔法が存在する。


魔力は魔法使いにとって財産である為に


枷の製作者のイメージが実現した姿が今の姿。


対魔法使い魔物となっている。




ヴァイス達は悩んでいた。


「どうしましょうか?火魔法を纏わせたチャクラムが


火を吸い込まれてチャクラムがバリバリと


食べられましたし…


魔力が含まれた物なら駄目ですからね?


あれ作るしか無いですかね?」


「あれって?」




「動き止めて死なないのが僕達の与えられた


仕事ですからね!それを果たすために


やる手段は2つありますよ!


1つは逃げ回り先生が来るのを待つ。


もう1つは動きを止めて待つですね!」




「出来るの?動きを止めるの?


痺れさせようとしても駄目だったよね?」


「痺れだけが動きを止める方法じゃないですよ!


そうですね・・・アーニアさんとルミスは


準備出来るまで対処しててくれませんか?


僕とルティで準備しますので!」


ヴァイスは確信あるように話す。




「分かった!なら任せるよ!ルミス!行こうか!」


「ワォゥ!」




アーニアとルミスは森を人面牛の左右から駆け抜けて


人面牛の正面へと向かった。




「グルルルル!」


女性の顔の額から曲がった角が2本、


口からは虎のような牙を生やして唸ってる。




「同じ女として戻さないといけないよね?


あの醜い姿はアマゾネスの強さと美しさに反する!


強さの中に美しさを魅せる私達と


魔法専用の強さだけを持つのは美しくない!


美しくありたいならその大きな顔をどうにかしな!


醜いったらありゃしないよ!


魔物でも洗練された美しさを魅せるのに


あんたのはなんだい!魔力吸うだけの半端者!


ルミスより速くもない!私より力弱い!


ルティ見たいな愛嬌が無いじゃないか!


ヴァイスよりも賢くも無いあんたは負けるんだよ!


つまり私達が負けないなら躾は大丈夫ってことだ!」


「ワォゥ?」




「ルミス?考えてみて!私達は闘う者だ!


そしてヴァイスの策を待つだけなんて


黙ってるのと同じなんだよ!


私達は勇敢な美しさを持つ女性!


トキがあの女を人に戻したいから


切ったり噛み砕いたりしてない!


加減して戦ってたんだよ?トキが来るまでね?


動けないように打撃をして命を取らなければ良い!


さっきまでと同じ事を速くすれば


追い付かれないし追い付けない!


あいつの目の動きや反応が遅いからね!


魔力を吸うだけなら行けるさ!


ルミス!左右から合わせろよ!」


「ワォン!」




アーニアはアマゾネスとしての誇りを胸に掲げている。


強さの中に美しさがある。


だがらアマゾネスでは強者ほど美しいと言われる。


アーニアはスーサイドで暮らしていたアマゾネスの


5つの部族の内、1つの部族の族長していた。




ルミスもスーサイドで暮らしていたフェンリル。


ケルと会うまでは相手が見るのは銀色の影だけ。


どんな魔物も一撃で屠る実力を持っていたが


ケルという強者と戦い負けて一目惚れし今に至る。


基本はアマゾネスと同じ考えを持っていた。


強者が正義ではなく美しくないといけない。


凛とした姿をした者が上に立つ存在と理解している。




アーニアとルミスは左右に別れて人面牛を


横から攻撃を始める。


今までは人の世界で暮らす為の


手加減を試す練習していた。


今回はスーサイドで暮らしていた時と同じ速さで


フレイムアックスの柄の部分で殴り始める。


ルミスも体をぶつけるだけでなく


回転を与えて攻撃したりして薄皮のみを裂いていた。




唸りを上げて苦しい顔を見せる人面牛。


反応出来ない速さで攻撃されて


その場から動けなくなっていた。




「ルティ?アーニアさん性格変わってない?」


「キュイ?」


「元があれなのかな?先生とあって丸くなった?


でもさ?・・・成りすぎてない?


体格と性格に差があると思ってたけど…


彼処までとは思わなかったよ!」




アーニアは


両腕の前腕を魔物皮で纏いその上から


手首を守るように紐が巻かれている。


上腕にも紐を巻き付けている。


筋骨隆々の体付きをしている。


身体を守る服は外套と布のみ。


豊満な胸全体を隠すだけの服装。


留め具は首輪と繋がっている


スカートは魔物の皮を纏っているだけ。


膝当てにすね当てを着けている。


どちらも魔物の骨で出来てる。


頭には鉢巻をしており部族の紋章を刻まれている。




見た目の露出度と引き締まった筋肉だが


少女の様な言葉使いに違和感を感じていたヴァイス。


しかし今の動きと先程の言葉を聞いて驚いていた。


見た目と言動が合い過ぎてると理解した。




「あれなら僕の作戦要らないかな?


折角準備出来て実行するだけなのに…」


「キュゥ…」


「その作戦ってのはなにするんだ?」


「魔力を吸うので落とし穴に・・・


って先生!いつの間に!?」




「アーニアが『同じ女として…』からだな!」


「ほぼ最初からじゃないですか!


そんなに速く終わったんですか?」


「5分以内だな!早すぎると皆の出番無いからな?


言ったろ?活躍するまではゆっくりするとな?


今から落とし穴に落として動きを止めるんだろ?


前向きに落とさないようにな!」


「・・・分かりました…


人面牛は魔力を吸うので気をつけてくださいね?」


「火でも吸うのか?」


「魔力含まれた物は全てですね…


僕の火でも吸い込まれました…」




「へー!吸い込むのか!面白そうだが


アーニアが昔に戻り始めてるからな…


ルミスも母親の目からアーニアと同じ


闘う者の目になって来てるな?


完全に戻る前に終わらせるから速く落とせよ?」


「分かりました!アーニアさん!!


正面からこっちに人面牛飛ばしてください!」


「了解だ!」




アーニアは人面牛の右側から正面に動き


顔面を蹴り後ろへと飛ばした。


耐えようと地面を削りながら飛ばされる人面牛は


突然後ろから地面へと落下する。


ルティが急いで人面牛の回りを土で固めて


下半身を落とし穴に埋める。




慌てて吸い込む人面牛を気にせずに


一瞬で腕輪と首輪を焼き切り


ドスンと音を立てて外れる。




東の時と同じ様に徐々に元の人間に戻っていく。


角と牙が戻り上半身のみ出ている女性が現れる。


アーニアが女性を引き上げてトキが回復する。




「トキ!!私頑張ったよ!」


「ああ!良くやった!ルミスも良くやったよ!」


トキは2人の頭を撫でて2人は喜び笑顔になる。




こそっ「アーニアさんが付いてきた理由分かったでしょ?」


こそっ「キュイ!」


「・・・聞こえてるからな?」


トキは告げて枷を回収しストレージに入れた。




「村に1人寝かしてるからそっちに行ってくれ!


その女性を忘れずにな?


俺はガデル達の元に向かうからな!


あ、ルティはゾラム侯爵の元に行って


村の所に連れてきてくれ!」


「分かりました!先生!」「キュイ!」


「分かったよ!」「ワォン!」




トキはヴァイス達に指示だしてその場から離れる。


美波はアーニアがおんぶしている。


ルティはシルの匂いを元にゾラム侯爵へと向かった。




~~~~~~~~~~~~~~


ヴァイス達が解放している頃・・・


「まだ人面じゃないからやり易いな!」


「某は牛なので少し遣りづらいです…」


「出番終わりましたので次はケル殿ですよ!」


「「「ウォン!」」」




ガデル達は順番に戦っていた。


森から逃げられないように50mの壁を作っている。


2本の角と針ネズミの様な鋭く硬い毛の牛。


風魔法と飛び針の攻撃をしてくる。




そんな相手を複数ではなく単体で戦う。


順番は賽子の数が大きい順に決めた。


ケルは器用に左前足で振って出た目が2。


三つ首が頭を下げて落ち込んだ。




最初のガデルでは飛び針を短刀の鞘で弾いて


逆に貫かせていた。


鋭い毛もスーサイドでの成長を試すようにして


力任せに折られていく。




「なるほどな…力が強くなってる…


トキの制限の意味が分かるな!


普通は逆に戦闘時だけ上げるんだが


全体的に向上してるから制限なんだな…


鞘に罅入りかけてる…


スーサイドの木で作らんといかんか?」




ガデルが制限を解除して牛と戦う。


牛は普通の四本脚。


左後ろ脚を折ってブラッドに任せた。




ブラッドは甲冑を纏い戦う。


飛び針が甲冑に衝撃を与えるが極小の為効いてない。


トキに言われて魔力を流して甲冑の防御力を試してる。


流す量によって硬度が変わり


内部は快適な温度を作り出す。


金属バットで叩き折りながら仮面の下には


苦々しい顔をしていた。


牛仲間としてこのまま痛めるのに感傷に浸っていた。


速く終わらすために右後ろ脚を折り


フィルへと出番を任したら。




フィルと戦う前にまともに立てない牛は


魔法攻撃を始める。


白い風の刃を作りフィルを切り裂く。


フィルは驚いて切り裂かれた場所をみると


血が出てなかった。


何故?切られたのに?と疑問に思いながらも


飛んで風の刃を避けて右前足を折る。


この異様な攻撃から離れたかった。




ケルに出番を回してガデル達のいる場所に向かった。


「お疲れ!変わった攻撃受けたな?」


「そうですね…普通の風の刃と違いますね?


白いから気にしなかったですけど


何か分泌して含ませたんでしょうか?


血が出てないんですよね…」


「フィル殿が切られた痕治ってますよ?」


「本当ですね?何故でしょうか?」




「俺が治したからな!」


「トキ?どうやって・・・空飛んできたのか?」


「それしか高い壁から入れないだろうが!


態々逃がさないようにしてんだろうが…


後から入る俺の事を考えろ!


後な?いくら治すからってな?


何知り合いの脚を折ってんだよ!!


見ろ!ケルのストレス発散に使われて


真ん中の首が喜んでるぞ!」




「あのな?ヴァイス達でも考慮してたぞ!


なのにお前らは・・・後で説教な?


何、重石の説教だ!短く終わらせてやるから!


覚悟しとけよ?


ケルには申し訳ないが終わらさせてもらうからな?」




トキがガデル達に説教すると告げて


牛の元に向かった。




ケルは動かない相手に蒸し地獄を味会わせていた。


トキはケルを呼び振り向いた首から


順にビンタを与えた。




「ケル?人の話聞いてたかな?


枷を外して人間に戻すと言ったよな?


何殺そうとしてんのかなあ?ああ!!」


「ウォゥ…」


「あのなぁ?お前も同じ目に合いたいか?


ヒュドラより達悪いもの食らわすぞ?


知り合いだって言ったよなぁ?


お前もガデルと同じ説教させるからな?


覚悟しとけよ?重くキツイ罰与えるからな!!」


「「「ウォン…」」」




トキは怒りをケルにぶつけて魔法を解除した。


トキはケルを掴みガデルの元へ投げ渡す。


ガデル達は突然の出来事にケルとぶつかり


倒れてしまう。


倒れたガデル達を無視して枷を外して戻らせた。


苛つきながらストレージに枷を回収して


西尾を担ぎ上げ壁を殴り壊して村へと戻った。




ガデル達は急いで壁を無くして村へと戻っていく。


これで異変の原因となっていたクラスメイトを


保護して解決した。


後は話を聞くのと説教するだけとなった・・・

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