ゾラム領異変ー9

「なるほどな?動物じゃなくて魔物だな!」


「ガルルルル!」


「グルルルル!」


「ガアアアア!」




トキは変身姿と変わる光景を見たくて目の前に現した。


緩い服装は変身した後にも大丈夫にしたのだろう。


目の前で焼けた肌色の皮膚が変化していく。




「え?大きくなった西尾見て牛型魔物と想ったのに


東と美波は違うだろ?元の顔で怪物じゃん!


なんだっけ?人面牛?人面虎?鋭い毛の牛…


・・・見覚えあるな?ちょっと待ってろよ!」




トキは変身中の姿を見てストレージから図鑑を出した。


図鑑の文字を追いながら終わるのを待つ。


待っている間に変身が終わりトキは襲われる。


全てが3mある体に特徴ある姿。


首と腕には枷が嵌められたまま。




人面虎は右手の鋭い爪を振り下ろし正面から


トキを切り裂こうとする。


トキは右手に図鑑を広げたまま後ろに避けて


元の位置に戻り人面虎の右手を踏み動けなくさせる。


驚く顔を見せる人面虎に対して左足を後ろに振り、


人面虎の顎へ力強く蹴りを入れて勢いを殺さずに


バク宙して右足の蹴りを顎に当てる。




踏まれた右手を上げようと力を入れていた人面虎。


右手に集中していると突然顎に衝撃を受け、


意識を逸らされ上へと向けられる。


右手を上げようとしていた力と上へ向かう力が


重なり上半身が浮き上がる。


浮いた体で再び顎に衝撃を受けて後ろへと


回転させられ飛ばされた。


飛ばされた人面虎を見て固まる2体。




固まる2体がいる中で


トキは地面に着地して図鑑を見て調べると・・・


「あった!中国の神話の怪物だ!


檮杌とうこつに饕餮とうてつ、窮奇きゅうき!


四凶と呼ばれてると…悪神ねぇ…


混沌がいないが誰かが変身するのかな?


って神が降臨するには早すぎないか?


反乱軍の討伐が終わってからにしろよな!」


トキは図鑑の挿し絵と文章見て3体を否定した。




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ウィッキー先生の解説。


四凶しきょうとは


古代中国の舜帝に中原の四方に流された四柱の悪神。


渾沌こんとん、窮奇きゅうき、


檮杌とうこつ、饕餮とうてつ。


東方朔の『神異経』をひけば


「饕餮、獣名、身如牛、人面、目在腋下、食人」という。


ーーーーーーーーーーーー


檮杌とうこつとは


中国神話に登場する怪物の一つ。四凶の一つとされる。


虎に似た体に人の頭を持っており、猪のような長い牙と、


長い尻尾を持っている。


尊大かつ頑固な性格で、荒野の中を好き勝手に暴れ回り、


戦う時は退却することを知らずに死ぬまで戦う。


常に天下の平和を乱そうと考えている。


「難訓(なんくん。「教え難い」の意)」という別名がある。


ーーーーーーーーーーー


饕餮とうてつとは中国神話の怪物。


体は牛か羊で、曲がった角、虎の牙、人の爪、


人の顔などを持つ。饕餮の「饕」は財産を貪る、


「餮」は食物を貪るの意である。


何でも食べる猛獣というイメージから転じて


魔を喰らう、という考えが生まれ、


後代には魔除けの意味を持つようになった。


一説によると、蚩尤の頭だとされる。


ーーーーーーーーーーーーー


窮奇きゅうきは、


中国神話に登場する怪物あるいは霊獣の一つ。


四凶の一つとされる。


中国最古の地理書『山海経』では


「西山経」四の巻で、ハリネズミの毛が生えた牛で


邽山けいざんという山に住み、


イヌのような鳴き声をあげ、人間を食べるものと


説明しているが、「海内北経」では


人食いの翼をもったトラで、人間を頭から食べると


説明している。




『山海経』にならって書かれた前漢初期の


『神異経』では、前述の「海内北経」と


同様に有翼のトラで、現在ではこちらの姿の方が


一般的となっている。


人語を理解し、人が喧嘩していると正しいことを


言っている方を食べ、誠実な人がいると


その人の鼻を食べる。悪人がいると野獣を


捕まえてその者に贈るとしている。


以上、解説終わります!


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




東が人面虎の檮杌とうこつ。


美波が人面牛の饕餮とうてつ。


西尾が鋭い毛の牛の窮奇きゅうき。




「これ見てよく動物って呼んだな?


動く物だから動物か?魔物も動く物で異常だから…


止めよう!戦いに集中出来なくなる!


ヴァイス!ガデル!アーニア!ブラッド!


各組は集まれ!!作戦変更だ!」




村の四方から集まるヴァイス達。


ブラッドはフィルの足を掴んで飛んで来た。


・・・期待は裏切らないな?・・・


全員が集まりを確認して図鑑を仕舞い


トキは風の壁を作り出した。


作戦変更中の妨害を受けないために。




「先生?あれが異変の原因ですか?


人と同じ顔しててこわいですね?」


「あれがトキの知り合いなのか?


通りでトキが異常だと思った!」


「トキも変身するの?見たいな!」


「某、進化したのですが…まだ先を行かれるのですね?」


「主殿?あの状態で突っ込みしないでくださいね?


絶対に死にますから!」


「キュゥ…」「ウォゥ…」「ワォゥ…」




「お前らな?・・・ここでボケるな!!


折角シリアスになってたのに台無しだよ!!


ここはあれだろ?悲しむな的な励ましの言葉だろ?」


「・・・先生?励まされたいのですか?」


「ハハハ!まさか!変身するの


見たくて変身させたからな!」


「人のこと言えねえよ?トキ?」


「変身しないの?残念だよ…」


「アーニア殿!残念がらないでくださいね?


あんなのが主殿なら付いてきてますか?」


「・・・無理かな?」


「某も流石にキツいです!」


「ですよね?いくら異常でも彼処までは


いかないですよ?ねぇ先生?」


「・・・ガデル?泣いていい?」


「終わってからな!それでどうするんだ?」




「あの枷を全て切りたいから足止め頼む!


一瞬でやれなくは無いけどな?


ヴァイス達は戦闘欲しいだろ?」


「先生の僕達への認識は戦闘狂なんですか?


全然違いますよ!先生と一緒にしないでください!」


「俺は戦いたいけどな?


スーサイドで成長したから試したい!」


「私も!普通に戦ってみたいな!」


「某も強くなるために!」


「・・・フィル達は違うよね?」


「「「「・・・」」」」




「一斉に横向かないで!ルティは仲間だと思ってたのに…


そんなに戦いたいの?怖くないの?」


「ヴァイスは怖いのか?」


「全然?先生の激怒した姿のほうが怖いですよ?


あれと同じ顔以上してましたから!」


「・・・ガデル?本気で泣いていい?」


「自業自得だ!馬鹿!集まると進まねぇよ!」


「ボケと突っ込みの集団だからな!」


「威張るな!早く進めろ!飽きるぞ?」




「分かりましたよ・・・切り替えていきますかね!


ガデル、ケル、ブラッド、フィルは鋭毛の牛を、


ヴァイス、アーニア、ルティ、ルミスは人面牛を、


俺が人面虎の枷を外したら人面牛、牛の順に


外していくからそれまでは耐えろよ!


枷外したら元の人間に戻るからな?


後、身体能力の制限は解除していいからな!


枷をゆっくり外すから!!死ぬなよ!!」


「・・・いや、危険だからな?早めろよ!」


「活躍する程度まではゆっくりするよ!


頑張れよ?では風の壁を解除するからな!解散!」


「待て!話が終わ・・・本当にやりやがったよ!糞!


ケル!ブラッド!フィル!行くぞ!」


「アーニアさん!ルティ!ルミス!僕達も行きましょう!」


「いってらっしゃーい!」


「行ってきまーす!」


「反応するな!アーニア!!お前も動け!トキ!!」




トキ達は互いに手を振り相手へと向かう。


トキVS東、人面虎とうこつ。




ヴァイス、アーニア、ルティ、ルミス


VS美波、人面牛とうてつ。




ガデル、ケル、ブラッド、フィル


VS西尾、鋭毛の牛きゅうき。




先に攻撃を始めたのは人面虎。


さっきの仕返しと長い尻尾を鞭の様にトキへと振るう。




「愚策だろ?体が邪魔してる!」




トキは正面へと鞭の雨を避けながら進んでいく。


フルバルとシロクロは使わない。


流石に枷を切るだけなので右の手刀だけで


充分だと判断している。




「尻尾って切っても良いのか?邪魔なんだけど!


でもな…枷を外して東が尻から血が出てる光景は


見たくはないよな…我慢するか…」




トキは呟きながら両腕の腕輪を白炎を纏わせた


手刀で焼き割いた。




「グルァァァァァ!!」




人面虎の体から高熱が発せられる。


どうやら枷が外されると他の枷が反抗したと


判断して他の枷から高熱が流れる様だ。


人面虎は苦しい顔して暴れまわっている。


無事な家も人面虎の攻撃で壊されていく。




「3つ同時は厄介だな…高熱が流れて暴れるし…


暴れられると狙いがな…後は首輪だけだからな!


多少は許してくれるだろ!」




トキは電気属性魔法『スタン』を左手に纏わせて


暴れる人面虎の右腕を傷付けた。


暴れていた人面虎は『スタン』が効いたのか


暴れるのを止めて大人しくなる。


しかし顔は苦しい顔のままでトキを睨んでる。




「睨むなよ?東!直ぐに戻してやるからよ!」




トキは首輪の2箇所を素早く焼き切る。


ドン!と音を立てて崩れる人面虎。


トキが暫く見てると変身が解けていく。


長い尻尾、鋭く長い牙、虎の体が消えていき


人の体に戻りだした。


一瞬トキと東が目を合わしたが東は意識を失った。


トキは枷を回収して傷付けた右腕を回復させる。


地面に敷物を敷いて東を載せて布を被せた。




「もう大丈夫だからな!安心して寝てろ!」


トキは被せた布を叩いて次の解放する人間を探した。




村の南側にある森の中・・・


「厄介ですね…魔法が吸い込まれます…」


「キュゥ…」


「トキが枷外すから刃で攻撃してないけど


殴るだけじゃきついよね?」


「ワォゥ…」




ヴァイスと人面牛が戦っていた。


傷付け無いように打撃だけにしている。


トキが来るまで痺れさせようとしていたが


人面牛が魔力を食べてしまい苦戦していた・・・

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