ゾラム領異変ー2

「ここが森の外なの?」


アマゾネスのアーニアが呟く。


スーサイド森の外に出ると草原。


馬に踏まれ固められた土の街道。


アーニアにとって見たこと無い風景。


「まあ、木に囲まれてないからな!」


「先生?そういう意味ではないと思いますよ?」


「キュゥ…」


「うん、知ってる!


良いかヴァイス?これはな必要なプロセスなんだよ?


集落から出てきたアーニアが都会に住む為の


必要な手順なんだ!


ここで俺の故郷の創造物語を話そうか?


田舎で暮らしていた少女が


様々な理由で田舎から離れる。


理由は親が亡くなり親戚の家へ、都会に憧れて、


音信不通の親の所在が判明、居場所を追われて等ある。


極論言えば強制的か自発的かになるんだがな?


色々な街に出向く訳だ!


その街や途中の道で苦難を与えられる。


容疑者と同じ容姿の為に警備隊に捕まる、


親戚の家で不当な扱いをされる、


路銀が無く宿に止まれず野宿する、


道に迷い崖から何故か落ちる、


盗賊に襲われて身ぐるみを剥がされる、


異国の為に言葉が通じないなんてな?


それでも立ち上がる少女。


様々な困難をはね除けて


無事に何かしらの目的を達成する。


そして良い終わりと思いきや悪い終わりに


成り変わることもある。


そんな複数の物語の1つにな?


森で育った少女が森から出る場面で


アーニアの言った言葉があるんだ!


その時は狩人が案内してたかな?


その時の言葉を言っただけだからな?」


「先生はアーニアさんを物語の主人公にしたいんですか?」


「したいじゃなくてその者だからな?


俺の周りの仲間はな?ヴァイス?


お前も主人公としての素質あるからな?」


「先生はそんな目で見てたんですか?


嫌ですよ!吟遊詩人に語られるのは!」


「吟遊詩人見たこと無いから知らんけどな?


もう語られてるだろ?俺ら有名人だしな?」


「忘れてましたね…有名になってた事…


スーサイドに住んでて人の世界と離れてましたから…」


「落ち込むな!俺もさっきまで忘れてた!」


「いや、忘れるなよ!有名人!」


「ガデルもそろそろくるんじゃないか?


反乱軍から離脱した大道芸の達人とかで?」


「・・・言葉を選ぶな?この批判には…」


「批判と言うなよ!突っ込みと言え!」


「お前の世界の文化を強要するな!」




「フィル?ブラッド?いつもああなの?」


「いつも通りですよ?アーニアさん!」


「あれが無いと始まりません!」


「グルァ!」


「そうなんだ!楽しいね!スーサイドの生活と違って


男性と魔物と一緒だし、なんだか新鮮だよ!」


「そう言って頂くと私達もやり易いですよ!


ふざける時にふざけられる幸せがありますからね!


真剣になる時には真剣になりますから!私達は」


「ブモォォ、某も同意です!」


「ウォン!」


「本当に変わってるよね?


私も族長してた時の言い方から変わってるけどね?」


「そうなんですか?柔らかい言い方しか


私達知らないですからね…」


「上に立ってないといけなかったのと


アマゾネスとしてのプライドあったからね?


厳しい言い方してたし全てを下に見下してたから


あとは男性は弱くてペットにしてたしね?」


「それが不思議なんですよ?


どういう飼育してたんですか?」


「舐められない様に常に首輪で鎖に繋がれてて


外の地面に放置して1日2食は飯を与える。


反抗してきたら武器で折檻かな?


暇潰しにも虐めてたね!楽しかったよ?


アマゾネスの繁殖用にも使われてたかな?


子供が男なら殺すかペットの仲間入りしてたよ?」


「なんですかね?ブラッド殿?


女性が強い種族としか言えないですよね?」


「平等なんてこの世界には無い証拠ですね?


某はそう感じましたよ?フィル殿」


「ウォン!」


「今はトキに迷惑掛けないように努力してるからね!


ガデルさんやヴァイス君に常識教えて貰ってね?」


「まあ、我々は魔物ですからね!


常識なんて有って無い存在ですから!」


「某も迷惑掛けないようには努力してますから


頑張りましょう!アーニアさん!」


「よろしくね!ブラッド!」




「ガデル?ヴァイス?あっちでは普通に会話してるな?」


「突っ込みがいないからですかね?先生?」


「ボケのフィルも宥める言い方だしな?」


「キュゥ…」


「ルティが心配してますね?ボケないから…」


「ルティ?そんな時もあるからな?


いつも漫才してたら進まないからな?


現に森出てから一歩も歩いてないだろ?」


「キュイ?」


「今気付いたのか…話も歩みも進んでないから


飛ばして行くぞ!


あ、忘れてた!ヴァイスとガデルとアーニアは


身体能力確認して制限しとけよ!」


「はい!先生!」


「分かったわ!」


「・・・突っ込み入れるべきなのか?」




トキ達は各組で会話を行い、


各自の力を確認してべラムに着くまでは


スーサイドでの身体力で走る。


人間の歩く速度は時速6kmと言われてる。


その数十倍の速度で走るトキ達。


トキ達の中で遅いのはガデルとブラッド。


なんとか後列に並んでいる。


ヴァイスが先頭に立ち案内する。


よく考えたらスーサイドの東側にべラムがあるとしか


記憶に無かったトキ。


フィルに頼んで来てたから自分で歩いて来ていない。


なのでヴァイスを先頭にトキ達は向かっているが


途中からリケラに乗って行動している。




「よく考えたら走る必要無いよな?


リケラがいるから乗れば直ぐに着くし


ヴァイスが案内すれば良いだけだもんな!」


「私、リケラ殿の後ろに乗るの初めてです!主殿!」


「そりゃ乗る必要無いからな!飛べるだろ?


しかも普段居ないからな!」


「そうですね!スーサイドで守護してますから!


しかし大丈夫ですかね?


この前みたいに警備隊が集まるなんてありますよね?」


「この前はそうだったのか?」


「お前は激怒してたからな…覚えてないのか?


警備隊に並ばれるよりお前が怖かったよ…」


「ハハハ!当たり前のこと言うなよ!


俺より怖いのは見たこと無いぞ?」


「変な自慢は止めろよ!」


「フィルは怖かったのか?」


「ずっと背中がゾワっとして寒気ありましたからね!」


「それ風邪だろ?」


「そうなんですか?


だから早く帰りたかったんですね?私は!」


「違うからな!激怒を忘れるなよ!


あの時は凄かったからな?


お前が召喚したのか集めたのか知らんが


骨だけのぼろい布を纏った死神?がいたからな!」


「それ見たかったな…馬鹿以外の神をよ…」


「スーサイド入口まで一緒だったぞ?


お前が暴れてる時に一緒に傍観してた。


俺、別れの挨拶したし…手を振って消えたな…」


「なんだよ、呼べよ!会いたかったな…」


「激怒して殺気放ったら来るだろ?


顔見知りだから紹介出来るぞ?」


「お前は自分の言ってる意味分かってるのか?


俺にあの時の怒りを再現しろと?


そしてな・・・ガデル…死神と仲良くなるなよ…


お前は突っ込みなんだからさ…」


「お前が召喚したんじゃないか!死神をよ?


3人が後ろで丸い机の前に座ってお茶飲みしてさ!」


「なんだろうな…怒りに後悔するなんてな…」


「仕方ないだろ?どうせまた来るさ!


絶対どっかで見てるぞ?木の影でな?」


「それも怖いな…あれだろ?


命を取りにじゃなくて茶飲みにだろ?」


「でしょうね!主殿のお茶は旨味ありますからね!」


「私は苦く感じたけどな…」


「人それぞれ味覚が違うからな!


仕方ないだろ?・・・ん?


今骨が手を振っててたな?


この早さで見えない筈なんだが…」


「待ってるんでしょうね?呼び出されるのを!」


「フィル、呼ばないぞ!見たけどな…」


「あれ?走って来てないか?」


「先頭には見覚えあるな…


10人が全力で走ってるな!」


「リケラ早く走れ!!追い付かれると死ぬぞ!!」




リケラの後ろで死神達がアスリート走りで


追いかけてきている。


途中で仕事を見つけたのか少しずつ減っていき


べラムにつく頃にはいなくなった。


「あの話題は止めとこうか!


違う恐怖を見たぞ?あんな全力で走るなんてな…」


「お前より怖いもの見つかったな!」


「蒸し返さないでくれ…忘れろ…


ほら警備隊が並び出したから行くぞ!」


1km超える山がべラムに近付き慌てて出てきた警備隊。


トキはリケラから降りて警備隊に説明する。


「俺の魔物だから安心しろ!」


「イや、無理だろ…」


ガデルも後ろに付いてきていた。


ヴァイス達も降りてきている。


「ホッホッホッ!リケラが来たのか!」


「ヴァルカ様!何故?危険ですよ!!」


「知り合いだから問題ないぞ?なあリケラ?」


「グルァ!」


「・・・」


警備隊の一人が呆然と立ち尽くしてしまった。




「トキ君!久しぶりじゃな?


トキ君にお客さんが来とるぞ?」


「俺にか?珍しいな…誰だ?


ほとんど殺してるから知らないんだが…」


「物騒じゃのぅ…とりあえず入りなさいな


リケラ達は登録するのかのぅ?」


「ああ登録してスーサイドに戻す予定だ!」


「そうか・・・登録は必要じゃしな…


しかし戻さん方がええぞ?


トキ君に依頼が来とるからのぅ…


手伝いしてもらった方が早いと思うが?」


「依頼?お客さん?・・・来てるのゾラム侯爵関係か?


ラグ貸し出してるから厄介事は


あいつに任せれば直ぐに終わるのに…」


「当たりじゃが、それもいかないらしいぞ?


本人はやる気らしいが借り物だからといってな?


トキ君の答えを聞いてからと言っておったぞ?」


「そうか・・・なら会うかな…


反乱軍とは違うだろうな…


情報と合わないから異変が起きたか?」


「正解じゃが…スーサイドでよく情報得れるのぅ?」


「優秀な奴がいるからな!分かった!


会いに行くから・・・ヴァイス!


テイマーギルド行ってゲルム補佐官呼んできてくれ!


登録するからと言えば来るだろう!


首輪を特大より大きなやつ1つと普通を3つ、


持ってくるように頼んでくれ!


ガデルとアーニアは俺と一緒に来い!


フィル達はリケラ達と居てくれ!


以上だが何かあるか?」


「大丈夫です!先生!行ってきます!」


「おい、頭にルティ・・・行ったな・・・」


ヴァイスは頭にルティ乗せたまま走っていった。




「俺は大丈夫だかアーニアは?」


「私も大丈夫よ!緊張するわね…」


「俺がいるから安心しろ!


アマゾネス時代の性格だしたら止めるからな?」


「分かったわ、頑張って抑える!」


「・・・ボケなのか分からんな…」


「私達も了解です!」


「お待ちしてますので!」


「頼んだぞ!シルも残れよ?


足にしがみついても連れていけないからな?


登録すんだら来ても良いけどな?」


「ワゥ…ワン!」


トキはシルを宥めてヴァルカの案内で


スーサの家に向かった。


スーサの家に行くとラグがアイサと戦闘していたので


スルーして執務室に向かった。


・・・ゾラム侯爵の関係者だろ?


・・・護衛として来てるのか?


・・・ラリアット上手くなりやがったな…


一瞬見て考えるトキ。


対してラグはトキがスルーしたのを見て・・・


「ガア!?」


「急ぎの用だからね?後で会えるわよ」


アイサが宥めて戦闘を続けた。




「お久しぶりだな!トキ君!」


「お久しぶりだな?ゾラム侯爵がいるとはな…」


「異変が起きてな…依頼したいんだが良いかな?」


「スーサイドの報告終わったらな?


スーサ殿も久しぶりだな?」


「久しぶりだね!君はゾラム侯爵にも説教したんだね…」


「お、告げ口かな?また「今は良いから!」なら良い」


スーサが割り込みしたが後で軽く説教してやる。


「報告は今からでも大丈夫か?」


「ゾラム侯爵の件があるからね大丈夫だよ!」


俺はスーサイドの報告を貴族2人に話す・・・

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