ゾラム領異変ー1

トキ達が戻る数日前。


「父さんどうでした?スーサイドの様子は」


「儂が統治してた時より大分変わってたのぅ…


魔物や植物は変わらず驚異じゃが


川の流れが激流から緩やかな流れに


変わっていてのぅ…


儂が長年出来なかった対岸への橋が


数台出来とったよ…


驚き過ぎて思わず釣りをしてしまったわい!」


「変わらないですね?釣り好きなのは…


でもこれで全域の調査が出来るんですね?


噂では森の民が暮らしてるとありましたから…


回るにも他国経由しないと行けなかった場所です!


幻獣が出たときは対岸からだと思ってましたよ…


これで不安要素は除かれますね!


あと、そろそろ年寄言葉やめてくれます?


普段違うじゃないですか?


私の依頼で変えてたのは知ってるんですからね?」


「そうじゃのぅ・・・


調査中はこれで済ましてたから癖になりかけとるな!


お前の依頼通りにヴァイスに言っておいたよ?


王国からの依頼でべラムから離れていたとな…


この先の反乱軍との戦いで上手くトキ君を


誘導してくれると助かるんだけどね?


ある程度反乱軍の知識を持ってるから


深読みしてくれると良いがな!」


「トキ君はべラムの重要な戦力ですからね?


彼の実力は冒険者ランクBの実力じゃないですからね!


父さんも知ってるんじゃないですか?


実力の一部を?調べてくれたんですよね?」


「ホッホッホッ!ほんの触りだろうな?


あれは異常だよ!私に驚きを与える人物だよ!


釣り中に彼を釣るつもりが釣られてもうたしな?


スーサイドの魔物の一部を飼ってるぞ?


前のボスのグランドラが倒されたのは知ってるだろ?


ボスとして岩竜達がスーサイドを支配してるが


あれらの飼い主じゃよ?トキ君は!


他にも平均危険度ランクS以上の魔物と仲良しで


その魔物が農業や橋と治水調査、鍛治までしてた…


躾られとるぞ?下手したら反乱軍より驚異じゃ!」


「父さんが言ってるのは事実なんでしょうね…


じゃないとスーサイドの緊急依頼受けませんからね!


普通は断りますし3人が暮らせる場所じゃない!


そんな場所で今も暮らしてるのが不思議ですからね?


幻獣はなんだったか知れましたか?」


「・・・」




「どうしたんです?急に黙って?」


「いやなに…今でも信じられない事だからな…


口にして良いのか分からん・・・」


「そんなに不自然が起きたんですか?」


「お前の息子のヴァイスな?影響受けすぎてるぞ!


強くなるのは喜べるんだがな?


三つ首のヒュドラを倒したらしい・・・」


「ヒュドラ!?まさか!!?居たんですか!!


しかも倒したらしいって不確定なんですか?」


「見てないからだ!しかもな?


五つ首のヒュドラも倒されてる…トキ君にな?


現物見たが三つ首は複数で頑張って倒したと


見れたが五つ首は余裕で倒されてる。


トキ君が説教してたよ?スーサイドでね?


討伐と戦いは違うだったかな?あれは響いた!


感覚で違うんだろうね?彼にとっては!


長引かせてまで戦うな!直ぐに殺せだとな!


あれは人の世界で生活してたら出ないな!


野生の世界を知ってるからの言葉に感じたよ!


説教終えてまさかの儂紹介された時の


雰囲気の変わりようには凄さしかなかったよ…


落ち込ませての儂登場ってどんな顔したら


良いのかこの年で悩んだよ…」


「・・・鞭に鞭ですか?私より酷いですね…


私も説教受けましたが人の出せる気配じゃない!」




この場所はスーサ=クリプス辺境伯の家。


スーサの執務室に親子が揃って話していた。


スーサ=クリプスとヴァルカ=クリプス。


スーサイドに幻獣が出たとヴァイスから報告あり


トキへ討伐依頼していた。


そのトキの異常さにヴァルカが反乱軍の煽りを


受けて戻って来たのでスーサは調査をお願いしていた。


スーサイドの調査も兼ねておりその報告を


受けている最中である。




「まぁあの時はそこまでは無かったが…


度々出る言葉には驚かされたよ?


何せ急遽、武道会が始まってな?負け残りが進む。


ボスの岩竜とミックスケルベロス、牛鬼侍が


命懸けの戦いしてるんだ!儂はヴァイスだった。


凄かった!トキ君のグリフォンとマーブルテイルが


岩竜とケルベロスに勝ち残った!


人のガデルだったかな?牛鬼侍に技で勝った。


あれは大道芸を技に昇華していた。


ヴァイスも岩竜に勝った…今でも信じられない…


11歳が戦う相手ではない相手に勝ったんだ!


儂は相手が良かったとしか言えないレベルだ!


良いか?トキ君と対立はするなよ!


したらべラムは滅ぶ!確実にな?」




固唾を飲んで喉を鳴らすスーサ。


父さんの話は真実で自分の目で見ている。


そして自分が受けた説教での殺気も知っている。


迷宮ホウリョでの活躍も知っている。


ゾラム侯爵領の反乱軍侵攻も活躍している。


だからこそ分かる。


トキは自分にとっても恩人である。


私達の命の恩人、ヴァイスの引きこもりからの脱却、


スラムの改革、挙げれば切りがない。


トキは自分にとっては隣人でいたい存在。


決して不幸にさせてはいけないし、してはいけない。




「・・・分かってますよ?


トキ君は私にとって恩人であり


良き隣人、親友でいたいと思っています!


ヴァイスがあんなに輝いてるのはトキ君がいたから!


アイサが無事にべラムに居るのはトキ君のお蔭!


そんな大恩人に迷惑や対立はしないですよ!


何かあれば貴族の権力使ってでも助けますよ!」


「そうか!なら安心だな!


まぁそんな相手に反乱軍との戦いに


誘導してるけどな…」


「トキ君なら大丈夫だと・・・信じてますよ?


『俺も混ぜろ!潰してやるよ!


俺の!俺達の平穏を壊す奴はな!!


だから逐一情報を渡せ!!責任を取らせる!!』


って言いましたからね?情報を与えてますよ?


遠回しな言い方になりましたが・・・


また説教が無いことを祈りますよ…」


スーサは上を見上げた。


忘れて無いようにと想いを込めて祈った。




スーサが祈ってる時に家に一人の男性が


護衛を数人連れて訪ねる。


その男性を見て庭で鍛練していたアイサは驚く。


「なぜ此処に?」


「急用が出来てな!クリプス辺境伯はいるかな?」


「執務室にいると思うわ!


シーサに案内させるから少し待ってて!


護衛は此処で待ってて頂戴ね?」


アイサはシーサを呼び出すと男性を見て驚いた。


シーサに案内を任せて護衛の相手をするアイサ。


執務室にシーサは男性を案内終えると…


コンコンコン…


ノックの音に気付いて入るように伝えると・・・




「久しぶりだな?スーサ=クリプス辺境伯!


冒険者のヴァルカ=クリプス殿!お元気で!」


「お久しぶりですね?べラム侯爵?


べラムに来られる予定は無かったですよね?


何故此処に本人が来られたのですか?


来賓の用意出来てないですよ?」


「急用が出来てな…トキ君はいるかな?


我が領内で異変が起きてな…


出来れば内密に頼みたくて来たのだが…」


「トキ君は今依頼でスーサイドにいますよ?


予想では数日以内には戻ると思いますが?


反乱軍が侵攻してきましたか?」


「分からん…複数の村から連絡が途絶えた…


調べに行かせた兵士が一切帰ってこない…


命からがら逃げてきた住民によると


空から人が3人落ちてきて動物に変身して


占領されたと話が出たのだよ…


もし本当なら軍を出したいが今は厳しい…


ある護衛に任せても良いがトキ君からの


借り物だから命を散らせたくない。


本人はやる気なのだがな!


冒険者も今は動けない!


反乱軍の動向によっては動かさないといけないが…


なので護衛の要望もあって来たのだが・・・


スーサイドか・・・護衛が行きたそうにしてたな?」


「トキ君から借りてる護衛はもしかして・・・」


「大きな声で言えないが…熊型魔物なんだよ…」


「もしかして6本腕ある奴ですか?」


「知ってるのか?ラグの事を!


借りてるがニバルでは人気があってな!


最近は文字まで覚えてる!


建築、農業、治水調査など作業が上手でな!


特に橋作りが凄いぞ!


芸術性ある橋を作って観光名所になりかけてる!」


「・・・トキ君は何をゾラム侯爵に貸してるんだ…


その魔物はスーサイドで有名な魔物ですよ?


アシュラグリズリー!スーサイドのボスの一匹です…」


「なるほどな!だから行った時に居なかったのか!


ゾラム侯爵に貸して人気が出ている…


儂があった魔物も人懐っこい物が多かったな…


スーサイドと関係持ってるとは思ってたが…


ホッホッホッ!彼はやはり面白い!


この年でまた驚かされるとはな!」


「ラグがスーサイドのボスの一匹!?


なんでトキ君がいや名義はヴァイス君か…」


「・・・ヴァイス!?何故ヴァイスなのですか!?」


「え?ヴァイス君が連れてきたからなんだが?


おかしな事を言ったか?」


「・・・ヴァイスの白髪の理由が


なんとなく分かりました…


なるほどトキ君か…ハハハ…何者なんですか!?彼は!!」


「いや、こっちが気になってるんだがな?


貴族関係無く説教してきたぞ?


お蔭でニバルの未来は明るくなったがな!」


「ゾラム侯爵も仲間ですか・・・


トキ君は権力者に説教する趣味あるんですかね?」


「儂には分からんよ!若いのに流石先生か?


安心しろゾラム侯爵!数日で戻ると思う!


領内の事はトキ君が解決してくれる!」


「それなら有り難いのだが…説教されたのか?


クリプス辺境伯も?」


「説教して年甲斐も無く泣かされましたね・・・」


「「・・・」」


ゾラム侯爵の出現によって新たな事が判明する、


そして説教仲間が爵位は違うがいたことで


仲良くなる2人。


ゾラム侯爵はトキが戻るまでアイサと


夫婦仲良く過ごすことにした。




トキ達のスーサイドの幕は閉じて


再びゾラム領内の幕が開かれた・・・

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