第70話ゾラム領ー3

ゾラム侯爵達の意識が戻るまで


トキ達は進化したブラッドについて話していた。


「凄いですね?ブラッド殿は進化して喋るなんて!


鎧?甲冑ですか?体に合ってますし


私のポジション奪われそうですね・・・」


「フィル?絶対に無いよ?喋る魔物ポジションは


消えたけどフィルにしかないポジションあるから!


あのリアクションは誰にも出来ないから!」


「キュイキュイ!」


「ヴァイス君とルティの言う通りだな!


新参の俺でも分かるぞ?


フィルのリアクションの真似は出来ないからな!


したくも無いがな…」


「ポジションあるなら問題無いですね!


いやー、良かった!良かった!!」


「キュイ!」


「ヴァイス君?あれは無視するのか?」


「・・・ガデルさんにお譲りします…」


「結構だ…トキに任せよう…ん?


トキがなんかぶつぶつ言ってるな?」


「キュイ?」「ガア?」




フィルはブラッドに喋る魔物ポジションについて


奪われたがポジションを確立しているのに喜ぶ。


ヴァイスとガデルは互いにツッコミを譲り合う。


ガデルはトキがぶつぶつ呟いてる事に気づき


ラグとルティが首を傾げた。




「・・・いやまさかな…進化するとは…


俺的にはラグが進化すると思ってたんだよな…


ラグが仏みたいな姿になって


顔が3面になって表情が怒り、冷徹、笑いで


カカカッて笑ってさ?あの筋肉の超人の敵の


砂の悪魔の相棒みたいになってだな?


筋肉の超人の技を真似てな?


人を逆さまにして落とすプロレス技すると思ってた…


微妙に技を変化させて最終的に悪魔に戻るきっかけの


アルティメット・・・みたいなの期待したわけよ…


魔物が6本腕持ってて何気にスーサイドで


期待して技を覚えさせたんだぞ?


初期からの技に改良とアルティメットをな?


そして3本腕が混ざるラリアットなんて


覚えさせて出来た時は感動を覚えたよ…


相手をフルネルソンに捕らえ上空に跳び、


真っ逆さまに落下する相手の足の上に


ダブル・ニードロップの体勢で膝を乗せ、


全体重をかけて地面にに激突させる技や


魔法無しに竜巻起こさせたりして


必死に覚えさせたんだ・・・


なのにまさかのブラッドだよ?


ルティはあいつらからの贈り物の卵だから


なんて思って無視して進化早いなと思ってたんだよな…


フィルは・・・違う方向に向かったが・・・


ブラッドの進化は半年前にしてから今日進化だと?


しかも甲冑の下は赤紫から赤黒い体に変化…


甲冑は着脱可能の自動装着…


甲冑は外せない籠手に思えば出来るなんて…


何処の戦隊ものの機能なわけ?


甲冑は何処に行くんだ?異次元かな?


籠手に縮小されて収納されてるのか?


・・・・・・・・・」


トキは思考の海でさ迷っていた。


思っていた姿と違うし展開と違う。


まさかの西洋に東洋の到来なんて。


必死にプロレス技をラグに覚えさせたのに。


なんて色々声に出して呟いていた。




「なんでトキは考えてるんだ?


なんかプロレス?とか竜巻?とか言ってるぞ?」


「・・・ガデルさん?先生には先生の考えが


あるんだと思いますよ?静かに見守りましょう!


きっと先生が知っている知識でこの世界に無い


知識が頭にあるのでしょうから…


下手に触れると火傷じゃ済まないですよ?」


「・・・そうだな…見守るとするか…


しかしヴァイス君は珍しい表現で諭すよな?」


「火傷のやつですか?先生の教えですね!


たまに本当に覚えてるかテストするんですよ…


筆記テストを…フィルとルティ、ブラッドも


させられてますよ…意味まで書かせるんです…


器用に口に咥えたり、指の間に挟んだりして


ブラッドなんてペンの持ち方覚えましたからね?


採点までしてダメ出し行い、一定の点数取らないと


再度勉強させられてテストですよ?1人でもですよ?


そうされたら覚えますよ!そんな教育されたらね…


この前は今までの復習だ!と忘れていた事まで


テストに出たので全員補習しましたよ…


確実にガデルさんも同じ目に合いますよ?


言われてませんか?テストに出るぞ?って…」


「言われたな…応援について言われたな…


トキは全部覚えてんのか?言った事を全て?


完全記憶保持者なのか?若いのに大変だな…


忘れる事出来ないとは辛いぞ?」


ヴァイスはガデルにテストについて話した。


ガデルはトキの完全記憶に憐れみを覚えた。




完全記憶とは自らの目で見た光景を全て記憶する


ことのできる能力を意味する。


「超記憶症候群 (hyperthymesia)」に罹患した


人物がこの能力を持つといわれる。


トキの場合は目で見たもの、耳で聞いたものを


忘れない。忘れる事が出来ない。


例えばこの世界て7ヶ月15日前に何してた?


と質問すると○○していた。とはっきりと答える。


と思うは無い。断言して答える。


そんな完全記憶保持者がトキである。




「主様は…何を…考えて…いるのか?」


ブラッドは進化した直後より流暢に


喋れるようになった。




「さあ?分からないが…ブラッドは


進化してどう感じてるんだ?知らないからなあ…


魔物の進化前と進化後の感想なんてな?」


「力が…以前…よりも…強く…感じる…


力の…制限…下げ…ないと…生活…出来ない…


魔法…使用…可能…なった…


今は…制御…出来ない…練習…必要…


今まで…鳴き声…簡単…言葉…難儀」


「そうなのか?進化すると良いところと悪いところが


あるんだな!勉強になったよ!ありがとうな!」


「ガデル…これから…宜しく…


ヴァイス…も…宜しく…」


「こちらこそ宜しくね!ブラッド!


言葉の練習なら手伝うからね!」


ガデルとヴァイスは互いにブラッドへ


改めて仲間としての挨拶をかわす。




「さて・・・現状把握終わったし


トキとゾラム侯爵達を戻すか!


俺のは特殊な方法で難しいからな?


目と耳塞いどけよ?危ないからな?」


ガデルはヴァイス達に指示する。


ヴァイスとブラッドとラグは


自分の手で耳を塞ぎ目を瞑る。


ルティは器用にパタンと耳を塞ぐ。


フィルはラグの空いてる手で耳を塞がれた。




一瞬何か聞こえて動いた気配を感じると


全員が肩を叩かれる。


「終わったからもういいぞ!全員戻ったから!」


ガデルの言葉に回りを見るとハッとしたように


意識を取り戻した全員の姿。




「ガデルさん?皆に何をしたんですか?」


「ん?ある言葉とある動きをしただけだよ?


真似は出来ないよ!俺だけの技だからな!」


ヴァイスはガデルに唖然とする。


一体何をしたのか気になる。


だけど全員が意識が戻ったので考えるのを止めた。




「さてトキ?ゾラム侯爵?昨日出来なかった


今後について話をしようか!


ゾラム侯爵の家のリビングでな?」


「そ…そうだな!リビングに案内しようか!」


ガデルの言葉につられて庭から動き出す。


ゾラム侯爵達は家へと案内する。


トキとガデルはヴァイスとルティと一緒に向かう。


ラグ、フィル、ブラッドは庭に残る。


フィルとブラッドは入れるが遠慮した。


ラグは門番の仕事が残っている為に


再び門番部屋に向かった。




ゾラム侯爵の家のリビングで各自が座り


お茶とお菓子が机に置かれる。


ブラッドについては放置する。


「さて今回は反乱軍の侵攻から助けて頂き心から


感謝する。改めて自己紹介しようか!


私はラベル=ゾラム。爵位は侯爵を叙爵している。


本当はもう少し後に地位を受け継ぐのだが


父の様態が悪くてな…兄2人いるのだが


私が譲り受けてしまい一時は内戦が・・・


これは言わなくても良いか!


とりあえず兄達は別の領地に嫁いでるよ!」




「・・・聞かなくて良い情報ですね?


改めて私はトキと申します。


べラムの街の冒険者をしています。


感謝は娘思いのクリプス辺境伯にしてください。


依頼を受けて来ただけなので!


まぁ、そのお陰で自重忘れて街を変えて


しまいましたけどね…」




「街の入口にある牢獄の事かな?


気にしなくて良いよ!罰としては最高だからな!


なにせ反乱軍の見せ物小屋であの中なら死なない!


隙間があるから住人のストレス発散に使われてるよ!


ニバル侵攻のリーダーのダスティから


色々情報聞けたしな!今では当て物屋を経営して


商売しているよ!今有名な反乱軍だからな!


助けも出来ないし、来ない!


話を聞いた村や他の領地に侵攻受けた貴族等は


早速ニバルに来て投げてるよ!


刃物は流石に禁止しているがな!


反乱軍の残党や盗賊とかは捕まりに来てくれる!


調べたら直ぐに分かるからな!


まだ侵攻されて鎮圧し1日しか経ってないが


1日でここまで稼ぐとは思わなかった!ワハハハ!


だからな!各地の侵攻と反乱が終わるまでは


稼がせてくれ!こちらから頼む!


終わったら好きに解除して良いからな!ワハハハ!」


・・・良い性格してんな?この侯爵は…




様態悪い親父さんがラベルを選んだ理由が


良く分かる言葉に思えた。


きっと兄達は出来ないだろう。


上手く人を使ってる。操ってる感じがした。


しかし同時に住民から愛されているのだろう。


いや、許されているのだろう。


でなければ住民から非難されてるはずだ。


反乱軍に侵攻を許してしまったのだから。


警備隊やギルド等の要人も一員だったのだから。


あれかな?貴族は人を見る目が商人に近いのかな?


良いものと悪いものを見極める。


・・・同じだな…自分の利を優先している。


その目と勘を信じて上手く使い悪用してない。




「ラベル様が言うなら任せますよ!


反乱関係が終わり次第直ぐに向かいますので


ラベル様は俺への保証書作って貰えますか?


俺はラベル様から保証されてると


魔物達も安全だから保証すると一筆お願いします!」




「トキ君は狙ってたのかな?この状況を!


君は大物になるよ?予想だがな!


君達はニバルいや領地の恩人で罪人を提供している。


こちらは罪人を上手く使っている。


牢獄では死なずに何でも喋らせる。


不満は全て罪人にいくからこちらに害は無い!


得しかないからな?君は面白い人物だ!


契約成立だ!保証書を書いておこう!」


ゾラム侯爵は勘を信じて吹っ掛けた俺の言葉に


勝手に解釈してくれてた。助かるわ!


これで2つの貴族から信用を得た。




「さてゾラム侯爵との契約も無事に済んだので


話を進ませますか!


俺がクリプス辺境伯から受けた依頼は2つ。


1つはゾラム侯爵領地の反乱軍の鎮圧。


2つ目はゾラム侯爵の関係者含めてべラムへの移送。


クリプス辺境伯が娘可愛さ兼侯爵の人命確保


ですかね?べラムは辺境で強い魔物もいますが


要塞として守りを固めて強さも保持してます。


反乱軍も迂闊に来ないでしょうし、攻められない。


理由は俺達や強い冒険者、強い魔物がいるから!


噂は聞いてますよね?俺のべラムでの生活をね?


当の本人が後から聞いて驚いてるんですから!


噂は広がってる。脅威として反乱軍が来ても


街までこれない…何故なら強い魔物がいて


それを狩る冒険者がいるから!そして俺達!


依頼して攻め込む?無理でしょうね!


もう反乱軍の情報は広がってるから!


誰がいるのか?首謀者か?何処にいるのか?


ゾラム侯爵も把握してるでしょう?


ではどうするか?もし残るのなら


ラグ預けますよ?優秀な奴ですからね?


俺の教育で人以上に働きますよ?魔物ですが!


橋作りに農業、治水調査等は普通に出来ますから!


護衛としても使えます!なんたって危険度ランクS!


庭での俺とブラッドの軽い運動見たでしょ?


あれぐらいに強い魔物ですからね?


護衛としてお勧めしますよ!


さてどうしますか?返答願いますね?」




俺は依頼について話をした。


反乱軍が活躍してる間はべラムでの生活を選ぶか


領地を選ぶか。まぁ領地だろうがな。


反乱静まったし逃げた残党が帰って


俺の脅威を仲間に話してるだろうし


仲間の末路も調べてるだろうから。


迂闊に攻め込まないだろう。


残るなら護衛としてラグを付ける。


一家に一匹。いや一村に一匹は欲しい魔物。


強くて賢くて気さくの良い魔物。


だから俺の持つ技術を与えている。


建築も出来るだろうしな!


ある意味で脅迫に近い案件を話してる。


さてゾラム侯爵はどう答えるかな?




「私達は・・・」

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