第39話迷宮ホウリョー6

フィルとドルガの戦闘が終わり


隠し部屋では黒い巨体のスプリガンとトキの戦いが


最後まで残っていた。


大剣を持つスプリガン。


姿を大小変化させてトキと戦闘していた。


「変わった戦い方をするスプリガンだな!


大きくなったり小さくなったり…


本来は巨体なら巨体のままでの


戦い方をするんじゃないのか?


まあ…楽しめるから良いけどな!


変化する魔物なんて滅多にいないし


お礼に武器を使って相手してやるよ!


とっておきだからちゃんと見ろよ!


改造…いや魔改造したハルバードだ!!


さあ!存分に楽しませて果ててくれ!!」


トキは告げて武器を腰から取り出す。




取り出した武器は手から肘までの長さの


ハルバード。普段は雑草刈りに使われている。


採掘にも使えて見た目は鎌やピッケルに近く


ハルバードとは思えない形をしている。


スプリガンはトキの持つ武器に興味を持った。


石突や槍先のある姿をしていて


本来2~2.5mの長さの武器が1/3程の


長さしかない。不思議に思ってると


ハルバードに魔力が流れて大きさが変化した。


本来の知っているハルバードへと姿を表した。


トキからの攻撃で使われるハルバードの形態は


様々な姿に変化していく。


斧やピックだけではなく鎌やピーラー、


エストックや槍、スパイクなどに変化する。




トキはスーサイドで悪党からの


戦利品を回収している時に


ありふれた武器を見て自分用の武器が欲しいと


考えた。誰も見たことの無い武器が欲しいと。


スーサイドは強靭で俊敏な魔物が跋扈する森。


ありふれたロングソードや弓矢では


魔物に歯が立たない。


たまに戦利品で変わった武器としてエストックや


フェンシングで使われるフルーレ、


ククリ刀、十手や多節棍やモーニングスター、


鉤爪や鎖鎌、杵など色々見た。


しかししっくりと手に馴染まない武器が多く、


珍しい武器を見て使ってもしっくりこない。


なら作れば良いと考え行動を始めた。


全ての武器を見て自分の知識から


構想を練り上げて作りだす。


スーサイドの魔物は特殊な魔物がいる。


その部位を使い作りあげたのが


魔改造したハルバード。




ハルバードには特殊な魔物の部位を使い


形状を変える性質を持たせている。


普段は雑草刈りや採掘で使われる形だが


自分の魔力を覚えさせた。


俺個人専用の武器として。


他の人が触っても鎌やピッケルとしか


使えない仕組みにしてある。


魔力を流すと槍先、石突、鎌、ピックが


標準として装備される。


鎌の部分が斧やピーラーにハンマーなど、


ピックが同じだが一回り小さい形に変化する。


槍先は槍とエストック、回転するドリルなど


形状記憶させていきロマン溢れる武器になっている。


・・・おかしい?異世界だからね!


自分から作っておいて疑問に感じたが


その言葉で片付けた。


もはやハルバードではないので


『フルバル』と名付けた。




トキはフルバルを使いスプリガンへ攻撃していく。


大剣で防ぐも鎌が襲い切り裂く。


釘抜きの形したハンマーで殴られ


腕に妙な跡をつける。


スプリガンが大剣を振るい反撃に出ると


嬉々として笑顔で避けたり防いだりしていく。


ピーラーで皮を剥かれ、ドリルで孔を開けられ、


釘抜きで印を作り、鎌が印に当たり切り裂く。




「おいおい!どうした?


まだまだ!まだまだまだまだ足りないぞ?


雑草でも刈ってる武器だぞ?


採掘にも使われる武器だぞ?


建築でも使われた武器だぞ?


穴掘りに使われる武器だぞ?


野菜の皮剥きに使われる武器だぞ?


肉叩きに使われる武器だぞ?


そんな日常的に使われる武器に


負けるのか?倒されるのか?死ぬのか?


もっと!もっともっと!!


もっともっともっともっと楽しませろよ!!!」


「ギャ!ギャギャギャァァァ!」


「いい返事だ!良い!とても良いぞ!!


フルバルも喜んでるぞ!!!


日常的ではなく本来の姿で武器として


使われている!ほら見ろよ!


嬉しくて赤い涙が出てるじゃないか!!


さぁ!さぁさぁ!!さぁさぁさぁさぁ!!!


もっと!もっともっと!!


楽しく愉快にダンスを踊ろうじゃないか!!!」


トキは声高々に響かせる。




ヴァイス達は戦闘を終えてトキの戦いを


遠くから眺めていた。


「先生に武器持たせると駄目だね・・・


性格が凶変してるよ・・・


しかもあれって先生が日常的に使う


台所用具や農工具だったんだね・・・


知らなかった…いや知りたくなかったよ…」


「キュゥゥ…」


「ルティ…ありがとう…慰めてくれて…」


「違いますよヴァイス殿!


ルティ殿は知らなかったの?って


鳴いてるんですよ!」


「え?そうなの?ルティ?」


「キュイ!」


「励まされていたと考えてたよ…甘い考えをね…


まだまだ未熟だね…僕…」


ヴァイスはトキの凶変と武器に驚き、


ルティの言葉に励まされていたと思ったら


違う事に落ち込んだ。




「あの姿も主殿ですよ?


スーサイドでは良く見ていた光景ですね!


懐かしいですね!今では大分丸くなりましたから!」


「キュイ!キュイ!」


「丸くなったんじゃなくて今は元の人格に


限りなく近くなったが正解じゃないかな?


先生の過去を知った僕だから言えるけど


人間が武器無しで力もなくあの場所に


強制的に飛ばされたら人格変わるよ?


確実に文明的な知識が消えて


原始の姿に変わるだろうね…


良く先生は文明の知識を持って今にいるよ…


本当に…本当に心から尊敬するよ…」


ヴァイスはトキの過去を知ってるからこそ


スーサイドでの生活をしたからこそ


トキに心から尊敬と同情を抱いた。


10歳が18歳に同情をしていた。




スプリガンとの闘いも終わりを迎えていた。


トキは加減をしている。


能力の制限は変わらずに武器だけの使用。


魔法は一切使ってない。


ヴァイス達は能力制限を解除して


1割の能力に魔法を使い戦った。


ルティも元の姿に戻って戦ったが


トキは違う。


逆に5%から2%に下げて戦っていた。


楽しむために。武器を使う為に。


武器の性能を試す為にハンデを課していた。


ハンデも関係なく今は巨体なスプリガンと


対面している。


大怪我のスプリガンに多少の傷あるトキ。


この傷も楽しむ為に態と付けている。


最早バーサーカー、戦闘狂へとなっている。




「さぁ!ダンスもここまでだ!


観客がエンディングを待っている!


スプリガン!君は素晴らしかった!!


楽しい舞台を演じてくれてありがとう!!


君の悲劇は俺の喜劇で幕を閉じる!


まだ俺の演劇は終わらないがな!!


武器もハンデもものともせずに


残ってくれた勇姿に心から敬意を持とう!


ああ…ハンデは俺のほうだけどな!


では・・・敵意を持ってフィナーレだ!」


トキは眺めてるヴァイス達を見てスプリガンに告げる。




「今の聞いた?あれで加減してたなんて…」


「キュゥゥ…」


「いやはや…主殿はどこまで行くのでしょうね?


あれで見た感じ2%ですかね?」


「2%!?普段よりも下げてるよ!?」


「キュイ!?」


「分からなかったんですか?


ヴァイス殿は生徒として…


ルティ殿は従魔として


もう少し目を養って頑張りましょう!」


「はい…フィル先生…」「キュゥ…」


「武器の性能試す為にでしょうね?


魔法も使ってないですし…


気配も闘気だけですね!


殺気なんて無いですし…


私も頑張らないといけません!!」


「僕達…何処に向かってるの…ルティ…


先が遠すぎるよ…遥か遠くに先生が感じるよ…」


「キュゥ…」


ヴァイスとルティは遥か上にいるトキを見て


頑張る!・・・ではなく嘆いていた。




トキはフルバルを巨大なハンマーへと姿を変える。


巨体な達磨落としをする様なイメージで。


目の前に持ってる人間よりも遥かに


大きな面がある木槌が現れる。


スプリガンはハンマーを見て不思議に思うが


一瞬だけトキから殺気が出て後ずさる。


後ずさりトキを見ると姿が無い。


どこかと探してると強い衝撃を受けて


急に赤と黒の体と壁が目に映る。


さらに何かに当たり頭をうつ。


何事かと考える前に新たに強い衝撃を


受けて意識が消えた。




「頑丈な首だったな…


まさか落としても目が動いてるとは…


気持ち悪くて潰しちゃった!」




トキはスプリガンの首を達磨落としの様に


平行にハンマーを振り抜き


ヴァイス達と逆の方へ打ち抜いた。


打ち抜いた頭は壁にめり込み目が動いてる。


敬意を持ってるいたが流石に気持ち悪くなり


正面から再度振り抜いた。


頭の無い巨体はその姿のままで


立ち尽くしていた。


大剣が杖となり支えている。


トキはフルバルを元のハルバードに戻して


小さくし腰につけ直した。




「さてと・・・フィル?何か掴めたか?」


何事も無かった様にフィルに話しかける。


「主殿!砦の過去とスプリガン達の過去が


わかりました!


後、お笑い魔物についてもです!


お笑い魔物は今違う場所に移動して


この国にいないそうです!」


「そうか・・・残念だな…


お笑い魔物見たかったな…」


「キュゥ…」


「砦の過去とかは良いんですか?先生!」


「ん?そうだな…魔物の印象が強すぎてな…


砦の過去やスプリガンについては忘れてた!


とりあえず…あの扉の先を見てからだな!


その後に洞窟に向かうから


洞窟に向かってる時に歩きながら教えてくれ!」


「了解しました!主殿!」


トキ達はお笑い魔物について落ち込み、


目の前にある扉へと向かった・・・

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