私が聞いたお話

星宮コウキ

 これは、私がある時に聞いたものでございます。人によって違うところがあるかもしれないし、共感できることもあるかもしれません。なんせ正しいことなんて私たちにはわからないわけですから、誰かが決めることもできません。ですからこれは、私の体験談であります。他の意見を否定するわけではなく、かと言って肯定するわけでもなく、聞いたお話が私の中に印象深く残ったので体験談として語ろうという結論に至ったのでございます。どうか暖かい目でご覧ください。



 昨年度、私の父方の祖父が亡くなりました。今まで経験した中で一番身近なものだったと思います。とても悲しかったのと同時に、死ってなんだろうと思いました。そんな時に、祖父の高校の頃の同級生の方から貴重なお話を聞きました。その方は、臨死体験を二度ほどしたそうなのです。


 理由などは詳しく聞いていないのですが、内容は少し聞いております。ぐるぐると渦潮のようなものに飲み込まれ、下へと落ちていったそうです。そして、体感的には1日ほどであったらしいのですが、目が覚めてみると、意識を失ってから一週間以上も経っていたそうであります。

 その方は言いました。


「落ちていったときは怖かったね。俺は死んだら地獄に落ちるんじゃないかな」


 そういって笑っていました。気持ちいいほどの笑いで、生きていることを存分楽しまれているような気がしました。


「死んだ後はね、時間という感覚がなくなるんだよ。自分で時間を感じられない。概念がなくなるんだよ」


 自分の体験からそう思ったそうです。


「死んだらね、きっと宇宙に帰るんだよ。概念がなくなって無になる。宇宙は無だからね。俺らは、いつかは無に帰るんだよ」


 確かに、そうなのかもしれません。広い宇宙に、どんな生命体がいるのかわかりません。我々は、現時点では地球の生物しか知らないわけではありますが、その中でも人間だけが時間という概念を作って、利用しているのだと思います。動物たちは「暗いから寝る、明るいから動く」といったような感じでしょう。「そろそろ3時だからおやつちょうだい」などと犬に言われたら、それは人を超えうる存在なのかもしれません。多少、人との暮らしで習慣付いているペットもいるかもしれませんが、時間という概念を自覚していることはおそらくないでしょう。人間は特有の概念を使って生きているのです。


 死んだら、無に帰る。それでは、お墓はなんのためにあるのでしょうか。


「それは、生きてる人のためだよ。生きてる人が、死んだ人を形として取って置いてるのさ」


 確かに、人は死んだら無に帰るかもしれません。ですが、他の人の記憶には残ります。その人をいなかったことにはできないのです。人の魂は体という器を抜け出すかもしれませんが、形として残ります。それを私たち生きている人がその人の生きた証拠として祀って置くのです。それが、自分の祖先の証明、すなわち自分の証明にも、少なからずなっていると思うのです。


 日本で導入されているかどうかは知りませんが、宇宙葬というものがあるそうですね。


「お墓は、生きている人のためのものだよ。石碑に刻んでも、本体(お骨)を無の世界、宇宙に飛ばしちゃったら意味ないよ。俺らが会いに行けないじゃん。」


 要は、これも生きていた証拠として残したいのでしょう。生前に本人が頼んだにしろ、ご子息が決めたにしろ、「この人は、宇宙で眠りにつきました」のような話題にでもなれば、より多くの人の記憶に残り、生きていた証明になります。それを人は望んでいるのでしょう。戦時中、特攻隊などで「国のために死ぬことが名誉」などというようなことがあったと耳にしますが、名誉とか関係ないのです。どんな死に方をしても、無に帰るだけなのです。


 アニメなどで「どうして生まれてきたんだろう」のように感じている悲劇系のキャラがいますが、皆さんはどのように思うでしょうか。私は、愚問であると思います。生まれてきた意味なんて、考えたってしょうがありません。だってすでに生まれてしまっているのですから。そして、生きている理由を探すことが生きている理由ではないでしょうか。私は、なんのために生きているのか。私はまだ探している途中です。おそらく、皆さんもそうなのではないでしょうか。それでいいのです。なんのために生きているのかわからなくても、それを探してがむしゃらに生きる。それが他の人の記憶に、より残るのではないでしょうか。完璧でなくていいのです。達成できない目的でも、それを全力で目指していることに意味があるのです。そうやってた人の記憶に残る。それが人の望みなのだと思います。


 これが「生と死」について、話を聞き、私が思ったことです。皆さんは、どんな生き甲斐がありますか?なんのために生きていますか?人生は楽しいですか?


 私は、そこそこには楽しく過ごせていると思います。

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