第十八話:先輩秘蔵の○○画像集。


「え、マジで先輩どっかのエージェントなんすか?冗談きついですよ!」



「今更とぼけても無駄。どこの手のものなの?洗いざらい喋るのならば楽に死なせてあげるわ」



 何も知らないし殺すの大前提で話すのやめてくれませんかマジで。



「ちょ、ちょっと待って下さいって!俺ほんとに関係ないんです。秘密の入ったカードなんてよくあるスパイものとか、そういうのであるじゃないですか!だから冗談のつもりで…!」



「…万が一にもそれが本当だとして、今事実を知られてしまった以上結局始末するしかないのよ」



 その理屈はおかしい!!



「そ、それに今俺を殺したらどう考えても犯人は俺を連れ出した先輩って事になりますよ!証人はクラスのみんな全員です!だから早まった真似はっ!」



「……それもそうね。私ならいくらでも誤魔化せる自信があるけれどそれであれこれ詮索されるのも面白くないわ。いいでしょう。今は殺さないであげる。その代わり、私のカードをすぐに返しなさい」



「それも本当に知らないんですってば」



「もう殺してやろうかしら」



 その後必死に先輩を説得するが返せ、殺すの二言しか言わなくなってしまった。



「あ、あの…だったら俺がそのカード探し手伝いますよ。だから殺さないでくれませんか」



 生き延びるにはそれしかない。無いものは出せないのである。ならなんとかそれを見つけ出して許してもらうしかないのだ。



「まだシラを切るの?もし本当に貴方が盗んだのではないのなら…それはありえないのだけれど、どちらにせよ早くしたほうがいいわ。ここで殺さなくても他の機会であれば完全に証拠を隠滅した状態で殺す事ができるのだから」



 こえぇぇぇぇぇ!!先輩のダークサイドなんて知りたくなかった!!俺には本当に心当たりがないが、解決策はある。白雪に先輩をどうにかしてもらう方法と、カードのありかを教えてもらう方法だ。一番自然で俺の濡れ衣を晴らすためにはカードの場所を突き止めて先輩と一緒に回収しにいく。それで真犯人がわかれば俺は晴れて無罪放免、それが一番負債を少なく穏便に解決する策だと、俺は確信した。




 …のだが。それは間違いだった。




「おい白雪、いったい何を見てるんだ?」



 一時的に人魚先輩から解放され、俺はあの後放課後になるまでクラスメイトからの悪意に満ちた眼差しを耐え続ける事になった。



 何人かから、何をしていたのかと問い詰められたが断固黙秘で通した。ハニーからもそれとなく聞かれたのだがこればっかりはハニーに相談するわけにもいかないのでいつか話すからと納得してもらい、放課後になると同時に白雪を連れて急いで帰宅した。



 一応白雪には帰りながら事情を軽く説明済みだ。いざ帰宅しこれから対策を練るところだったのだが、俺がトイレに行って部屋にもどるまでの間になにやら白雪がパソコンを操作している。



 こいつは俺のHDを壊した前科があるからあまり精密機器には触ってほしくないのだが、そのモニターに写っていた物に俺は目を奪われる。



「…これ、は…なんという…」



 そこに映し出されていたのは、学内のあらゆる女子生徒達だった。遠めに撮っている写真から、何気ない風景の動画、そして着替え盗撮まで。健全な男子垂涎の品である。



「これはすごいのう。女子生徒のデータベース付きじゃぞ。身長体重3サイズに趣味、好きな食べ物…?なんとまぁこれだけのデータを人の身で集めるとは感服物じゃな」



 そんな事を言いながら画像や動画を次々に開いていく白雪。なんとその中には修学旅行先であろう旅館内でのガールズトークや温泉に入る際の更衣室、浴場内の動画もあるようだった。



 俺はその素晴らしい画像や動画を見る事よりも、これを何のために収集したのか、そして誰の物なのかを考える事に夢中だった。



 これだけの大量の盗撮物となると集めた人間はどう考えてもヤバイ奴だ。変態としか思えない。そして、おそらくそのヤバイ奴というのは人魚先輩なのであろう。



 正直秘密組織のエージェントとかそういうのよりやばい秘密を知ってしまった。そりゃ先輩も必死に取り返そうとするだろう。



「どうしたのじゃ?童貞には刺激が強すぎたかのう?」



 いや、それはおいおい拝見させて頂くとしてだな、そんな事よりも、「なぜこれがここにある?」当たり前のように白雪が見ているのは何故だ。犯人はお前か!?



「なぜって…このなんちゃらカードとやらはそこに落ちとったんじゃ。最初はお主の集めたエロ画像か何かかと思ったのじゃが…さすがにここまでとなると狂気の沙汰じゃ。お主にここまでの度胸はあるまいよ」



 軽く馬鹿にされてるのはおいといてだな、そんな事よりもこの部屋にあったって事か?誰がどうやって…俺の部屋に運び込んだんだ。俺を陥れようとしてる何者かが…



「あー。お主は気付かんかったかもしれんがこれはお主が自分でこの部屋に運び込んだものじゃ。その制服の袖に忍ばせてな」



「なっ…」



 慌てて自分の袖を確認する。制服の袖の部分には折り返しがあるのだが、昨日人魚先輩のバッグを漁った時に折り返しの部分にカードが入り込んでそれを知らずに俺が持ち帰ってしまった…という事だろうか。



「把握したかの?」

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