ラバーソウル
クラスメイトのあの娘は僕より2センチ背が高い。
だから僕は彼女といるときはいつもお気に入りの真っ白なラバーソウルを履く。
そうすると彼女のジャックパーセルよりほんのちょっと高い目線で話しができるんだ。
僕はいつもポケットにミントのタブレットを入れている。
彼女と会う前には必ず二粒口に放り込んで眠そうだねって言われないようにするんだ。
彼女はいつも僕を弟扱いする。
僕が一月生まれでひとつ年下だからって。
僕が不機嫌な顔をすると彼女は笑ってこう言うんだ。
「まったく子供なんだから。」
男の気持ちなんてまるで分かってやしない。
あの日、少し遅くなった帰りの電車で僕らはラッシュに飲み込まれた。
あと少しのところで吊り革に手が届かない彼女が、よろけた拍子に僕に掴まったんだ。
それから電車が僕らの町に着くまで彼女はずっと僕のシャツの裾を握ってた。
目一杯腕を延ばして吊り革に掴まってる僕の足もとにはお気に入りのラバーソウルが誇らしげに光ってた。
卒業してクラスメイトじゃなくなった僕ら。
背の高さも今じゃ僕の方が頭ひとつ大きくなって。
だけど、いまだに彼女は僕を弟扱いするんだ。
「まったく子供なんだから。」
そして足もとには今も真っ白いラバーソウル。
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