ラバーソウル

@pungent_sugar

memoly

明け方になって電話をかけた。


出るはずのない人、つながるはずのない電話。


さよならも言えない別れから今日でちょうど一年。


とっくに解約されているであろう番号。


以前酔った勢いでかけたときには、お客様がお掛けになった・・・

ではじまるアナウンスが流れてきて、思わず携帯を床にたたき付けた。


そのせいで新規で携帯を買うはめになり、メモリーをまたいちから埋めるという作業におよそ二ヵ月を費やした。


おまけに大事な約束を不意にしたことも一度や二度ではなかった。


しかし、このことがふたりの関係が完全に切れたことを表しているようで、未練も断ち切ってくれたようにも感じた。


もし、そのままだったら彼女の番号を消すことさえ出来なかったかもしれない、それどころかいつまでも彼女からの電話を待っていたかもしれない。


結局、一年たっても番号は何かの呪文のように頭にこびりついて離れない。


カレンダーに付けた小さな印。


まるで何かの記念日のようで思わず苦笑する。


そして今、僕はその呪文をダイヤルしている。


開け放された窓から差し込んだ朝の光が写真立てに反射している。


モノクロの写真の彼女は変わらずにほほ笑んでいる。

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