1章 Dehuman

1-1

 反人類は、XF暦363年に生まれた。

 前年の362年──それは、かつて日本と呼ばれていた国が地図から消えた年だ。

 その年日本では極めて大規模な地震が頻発ひんぱつし、地割れ、津波、家屋の倒壊、土砂崩どしゃくずれなど、多種多様な二次災害を引き起こした。

 人々が逃げることを拒むかのように、もしくは外部からの助けを遮断するかのように台風が次々と発生し、降水量は認知の転移前からの統計史上最多を記録。犠牲者は当然のごとく増え続けた。

 そして363年。

 神による一年間の大規模工事により、ユーラシア大陸東端の諸島であったはずの日本は、直径百キロメートルの真円形をした、ただ一つの島へと形を変えた。 

 海抜〇メートルの平らなその島は、高さ百メートルの塀に囲まれている。その塀の中にいた唯一の生物が、否。生物が、原初の反人類として知られるマーシーである。

 ──

 そう。たった一年で、日本国の人口はゼロ人となった。それどころか、その島には微生物でさえも生息していなかったのだ。

 人類を含めた生物、また山々などの自然物を含めたすべての物体は圧縮され、圧縮され、ついでにもう一度圧縮され、島の基礎となっている。

 こうなってしまった以上日本国は国として存続することは不可能となり、また物理的に──物理というものがどこまで信じられるのかは分からないが──日本列島は消失したため、日本という国は地図から消える運びとなった。

 反人類を生み出す代償に、何億もの命がその未来をなげうったのだ。

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もし日本が-100人の国だったら @Chaikey

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