晩御飯

家に帰るやいなや、母さんが部屋から出てこないと娘が泣きついてくる。


全く困ったもんだとネクタイを緩めながら寝室へと向かう。


「母さん、どうしたというんだい。出てきておくれよ」


素っ頓狂な声で返事が返ってくる。


「いやよ、あの子が悪いのよ」


また何かしでかしたのかと娘に聞くと、何も言わずにキッチンをあごで指す。


どうせ、母さんの料理にけちでもつけたんだろう。


「好き嫌いはいけないぞ」


娘にそう言ったが、母さんも大人気ない。


「何もそんなことで部屋に閉じこもることもないだろう。あの子もわかった筈だから早く出てきておくれ」


「嫌よ、あの子なんて言ったと思う。


『母さんの料理はまるで一流レストランみたいだね』なんて」

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