”私のセカイ”で一番のヒト
水谷哲哉
1
「はあ……」
今回の模試の成績を見て、私――織田巻美穂野はため息を吐く。
特段成績が悪かったわけではない。点数自体も問題が高一から高二の今までのすべての範囲から出ていることを考えればむしろ上出来だと自分でも思うし、志望校欄に何気なしに書いた難関大の判定も最低でもB判定で、成績表を初めて見た時に「おっ」と思わず声が漏れてしまった。
しかしそれ以上に頭にこびりついている箇所が一つ。
――学年順位、二位
――クラス内順位、二位
二位だって別にいいじゃないかと思うかもしれない。おそらくそれが大多数だと思う。偏差値も高く、難関大の合格判定もいい。何がそんなに不満なのかと実際に友達にそう聞かれたことだってある。
でも一位を取りたいと思って努力をして、それで一位を取れなかった時、どんな気分になるか想像できるだろうか。誰にも負けないという自信を持って挑んだ試験で、どこかの誰かに負けたという事実を突きつけられて穏やかでいられるほど私の心は広くない。それが例え「二位だね、おめでとう」と言われたとしても、だ。他人に褒められたとしても誰かに負けた現実は変わらないのだから。
じゃあ一位は誰なのか。その答えは大体わかる。
「すごいじゃん栄子!」
後ろの方の席に群がっている女子の一人が称賛の声を上げる。
その中心にいる人物が返す。
「別にすごくないよ」
「だってまた一位じゃん! あたしなんかもうぼろぼろだし……」
「順位なんて競っても意味ないって。問題は志望校判定でしょ?」
そうやって謙遜している女子が岸花栄子。この高校に入ってから模試で常にクラス、学年順位ともに一位を取り続けている学年一の秀才だ。バスケ部に所属していて運動神経抜群、社交的でこのように同級生が群がるぐらいに人柄が良く、そして成績優秀と絵に描いたような優等生だ。
私はずっと、この同級生に負け続けている。
多分あの子には私のプライドを踏みにじっているという気持ちはこれっぽっちもないに違いない。でも、いや、だからこそ、腹立たしく感じる。まるで私があの子の眼中にないような、私が一方的にライバル視しているだけで向こうは興味すら抱いていないような、そんな気がしてくる。
必ず見返してやる。そう思って、もう一年と少しが経とうとしていた。
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