白鷹水滸伝

銭屋龍一

第1話

 やれ。

 玉座に座っている男は、穏やかな声で、ゆっくりと命令した。

 肌の色が異様に白い。

 細身だが背はかなり高そうである。

 それがさらに輝くような白衣に身を包み、綠の腰紐を結んで端座している。

 地面は敷き詰められたタイル状の石畳。

 長年の使用のためか、それは水平ではなく、凸凹にゆがんでいる。

 石造りの大きな建物の内部だ。

 空気は冷たい。

 玉座の前に、七人の男たちが手足を縛られて並べられている。

 いずれも頭を紅に染めた布で包んでいる。

 若き男、壮年と、年齢は様々だ。

 その男たちの背後におよそ百人ほどの軍属が整列している。

 青銅の兜をかぶり、同じく青銅の鱗状になった鎧を身につけているので、ひと目で軍人だと分る。

 その軍人達の間にたちまち緊張が駆け巡る。

 が、すぐさまそのざわめきのような緊張の波は凍り付いていく。

 しわぶきの声ひとつも聞えない。

 唾を飲み込むのさえ、音をだしてしまわないかと、躊躇しているように見える。

 整列した軍属の中からふたりの巨漢が歩み出て、玉座の前で片膝をつき、深く頭を垂れた。

 玉座に座ってる男からの、新たな言葉はない。

 代わりに玉座の男の両端に立っていた、女のように美しい顔立ちの少年がふたり進み出て、ふたりの巨漢の前に青龍刀を置いた。

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