第10話 文香ちゃんと

カウンセリングが予定より遅く始まり、その上に時間がかかり、その後の診察があったので、病院を出るのがかなり遅くなった。

 

お母さんからもらった病院の診察代にお昼ご飯代は十分に足りた。


病院前のバス停でバスの時間を見ると、少し前に出たばかりで次のバスまで約1時間、1時間待つのなら電車で帰ろうと考えた。

近くの駅の電車の時間を調べたら、歩いても間に合う時間だし、料金もバスとあまり変わらないので、駅まで歩くことにした。


少し風が強く歩きにくかったが駅までの歩きは楽に感じた。


スマホの呼び出し音が、

文香ちゃんからだ。


「もしもしぃ~、文香だよっ カウンセリングは終わったのっ?」

「終わって、バスが無いので駅まで歩いてるよっ ところで、もう帰ってきたのっ?」

「うん、さっき帰ってきた ところで、何時に駅に着くの?」

「4時過ぎに着くはずかなっ? 駅に着いたら、連絡するねっ」

「ところで、カウンセリングの方は?」

「今日が初めてだから、まだ分かんないよ~ しばらくは週1回のカウンセリングと診察なんだって」

「おかしな病気じゃないと好いけれど~」

「帰ったらお話しするよっ」

「駅まで迎えにいってあげる いろんなお話もあるしねっ」

「うん、わかった とにかく、駅に着いたらでんわするよ~」


ボ~ッとしながら電車の窓からの風景を見ながら考え事を...。

いったいぼくのカラダってどうなってるのかなっ?

カラダだけじゃなくって心も、どこに流れていくのかなっ?

なんてことを思っていたら、駅に着いた。


「文香ちゃん、ぼくだけど~」

「あら、もうそんな時間 いま、駅の近くの本屋さんにいるから、少し待ってて」

「うん、わかったよっ」


あゆ君、わたしの姿を見てきっとビックリするよっ‼ と、歩の顔を思い浮かべながら駅に急いだ。


中央改札の真ん中に立っている歩を見つけた文香は、スキップしながら近づいた。


「あゆ君、お帰り~ どうかしら、カワイイ? それとも・・・?」


これまでの文香のスタイルと違う髪形にメガネに、ひとむかし・ふた昔に流行ったジーンズのコーディネイトで歩の前にあらわれた。


「なんかねぇ~、この前に会った時とは・・・」

「でしょ~、これねっ、伯母さんが若い頃着ていたんだって 誰も着ないし、サイズ的にはわたしに合うからって、もらったの」

「いいなぁ~~」

「えっ、カワイイとかじゃなくって?」

「いや、可愛いけれど~~、女の子って、着るものひとつでこんなに変わるって、羨ましいなっ!」

「髪形も変えたし、このメガネもイイでしょっ!」


いつもと・・・というか、歩の受け答えがこれまでと違うことに、文香は少し異様に感じた...。

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