17
『すごいね!ビューンって落ちたよ!』
耳を付けたいと買い物をしたり、その間にもまたファンサしたり、やっとの思いでアトラクションに乗れた頃にはもうお昼。
開園ダッシュはしなかったけど、早く家を出たのは大正解だな。
Twitterは、俺たちがディズニーシーでデートをしているのがバレて大炎上していた。
だけど、繋いだ手をブンブンと振りながらスキップするルナが最高に可愛いから、今日のサプライズは大成功だろう。
「あ、チキン美味しいんだよね。食べる?」
『うん!』
「俺並ぶけど、その間ルナはどっか見に行ってもいいし…」
どこか1人で見て楽しいところは無かったか、と考えていると、
『…いい。ユキ君と一緒に並ぶ。』
ルナは急に腕を絡ませて、距離を縮めて来た。
「…ん。」
最近ルナは、こんな風に、突然甘えたような態度をとるんだ。
それが、素直に、嬉しい。
***
一通り有名なアトラクションを回れば、すっかり日も暮れている。
「レストラン、予約してあるんだよね。もう御飯食べれる?」
ちょこちょこと買い食いをしていたので心配になって聞くと、大丈夫!なんて喜んでくれる。
『なんだか外国みたい~!…今度は旅行にも行きたいね。』
無邪気に笑う彼女には、当然のようにうんと応えたけれど、ルナの中では次もあるってことかな、と胸が高鳴る。
お店の人には何も言っていなかったものの気を回してくれたのか、俺たちの周りの席には他のお客さんを通さないでくれた。
「じゃあルナ、お誕生日、おめでとう。」
ワイングラスを掲げれば、ありがとうと言ってグラスを鳴らす。
少し横を向いてワインを飲む姿も絵になって、もう俺は、ルナに完全に魅せられてしまってるんだ。
『あー…楽しかったなぁ。ユキ君、本当に 本当にありがとう。』
「…喜んでくれれば、何よりだよ。」
『んふふ。もうね、今までで最高の誕生日だよ!』
「えー?本当に?」
『私、嘘言わないよ!』
「ははっ…うん、知ってる。」
素直すぎて、嘘なんて言えないじゃないか。
いつだって純粋に世界を見ていて、どんな時だって楽しんで、幸せをいっぱい身にまとって、それをそこらじゅうに振りまいて…
周りを、パアッと明るくする。
本当は、眩しすぎて、気付かない振りしてたんだ。
初めてドラマの現場で会ったあの時から、俺はずっと、ルナの底抜けに明るい笑顔しか目に入っていなかった。
ずっと、ルナが、好きだった。
ご飯を食べて、たくさんお土産を買えば、もう帰らなくちゃいけない。
朝通った地球儀まで戻ると、最後に思い出を写真に残そうとするお客さんで溢れていた。
もちろんルナも撮りたいというので、ライトアップされて朝とは表情を変えた大きな地球儀によって、その人口池のへりに腰掛けた。
『んー!良い感じ!このユキ君すごくカッコ良いよ!』
「いや、カッコ良いも何も、暗くてシルエットしか見えないし」
『え、だからカッコ良いんじゃん!』
「うっわー、失礼な。」
『えへへ~』
俺に色々な注文を付けては色々な角度から写真を撮って、ルナなりに最後まで楽しんでいるらしい。
「…ルナ。」
でも俺は、ちゃんと自分の気持ちを伝えるまで、今日のデートは終われないんだ。
「4月にルナの家に行ってから、2ヶ月。毎日一緒にご飯食べて、遊んで、仕事して。今日もこうやってデートに誘って…きっと俺の気持ちなんてもう気付いてるだろうけど、やっぱり、ちゃんと言わせて欲しい。」
おもむろに手を取れば、ルナは、俺を映すその大きくて澄んだ瞳を揺らす。
俺は一日中繋いでいたその手にグッと力を込めて、深く息を吸った。
「俺……ルナのことが『ダメ』」
…え?
突然遮られたことに驚いて、俯向くルナを覗き込むと、
『ユキ君…それ以上、言っちゃ、ダメ……』
ルナは大粒の涙をポロポロとこぼしながら訳のわからないことを言って、
「…!」
俺に優しいキスを落とした。
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