第7話:結局巻き込まれる
「よぅし! 今日も意見を聞かせてくれ!」
「フォルク師匠、僕はご意見番ではないです」
魔導具ギルドに紹介されて一週間。
毎日のように魔導具ギルドに行っては色々な事を教わっている。
勿論白属性魔法については、母から教えてもらっているが、この魔導具用の魔法は中々興味深いのだ。
ちなみに教えてくれているのは、先週のマイネッケ老である。
ちなみにこの人、フルネームではフォルクハルト・マイネッケと言うそうで、「フォルク師匠」と俺は呼んでいる。
さて、この一週間。
なんというか、フォルク師匠の試作品の改良策を提案することが、メインになっている気がするのだ。
「固いこと言うな! さあレオン、こいつはどうだ!?」
全く俺の意見はスルーされて、新しい魔導具を見せられる。
「これは?」
「こいつは中の温度を熱く保つためのポットだ!」
「金属ですね」
「ああ、持ち運びの頑丈さを考えてな。それにこいつは二層構造になっている。先週のポットの話から思いついてな! 間に火属性の魔法陣を何個か入れている」
「問題点は……コストと重量ですか?」
そう。このポットかなり重たいのだ。
サイズは4合炊きの炊飯器くらいだろうか。
こんなに金属と魔石を使ったらいくらになるのだろう。
「全くその通りだ! こいつは持ち運びを考えたいんだが、魔石の重さがな!」
「小さくすると時間が持たないと……」
「おう! しかもどんどん熱くなるからな、がっはっはっ!」
そんな笑顔で「おう!」なんて同意しないで欲しい。
結局魔法瓶みたいな物だろうか。だが、温度を上げる機能のみのようだ。
そりゃ、最終的には沸騰するわな。
本音としてはサーミスタみたいな物で制御して、一定温度に達したら止めたいんだが……これは課題だな。
あ、一応見てみるか。
「【ヘルプ:サーミスタ】」
《ヘルプ:お探しの情報は見つかりませんでした》
ちっ…………
まあいい。とにかく今は……
普通に魔法瓶を作るとしようか。
* * *
気付いたらフォルク師匠が別の作業をしているので話しかける。
「フォルク師匠」
「あん?」
「ちょっと魔導具を作りたいんですが」
「いや、お前さっきのポットはどうした?」
「改良のために、魔導具が必要でして」
今回の改良をするに当たって、真空引きをしなければいけない。
だが、真空ポンプなんて物はないわけで。
「改良のためか」
「ええ。魔法陣を使わずに、温度を極力変えないように保つポットを作ります」
「ほう! 魔法陣を使わないのか! だがそれは……魔導具か?」
確かに。
「魔導具を使わないと作れませんので」
「ふっ……なんか誤魔化すみてぇだが……良いだろう。作り方は俺が教えてやる。ついてこい!」
* * *
「ここだ」
「はい、師匠」
工房の奥の部屋。
さっきの工房ではみたことがないような色々な道具がおいてある。
「魔導具の作り方ってのはな、基本的に年数が経って、信頼できる奴に教えるもんだ」
「はい」
「だからレオン、お前さんは特別なんだ。使うなとは言わねぇ。だが、気を付けろよ」
「勿論です。技術は財産ですから。師匠たちに迷惑がかからないようにします」
「ふん……分かっているならいいんだ。じゃあ、まずは——」
魔導具の種類は色々ある。
魔石を加工した魔結晶自体を魔導具にするもの。
魔結晶を組み込んで動作させるもの。
魔法陣を使うもの。
「魔結晶を使う魔導具は稀少だ。というか、コストが洒落にならねぇ。魔結晶自体についても作れる工房も少ねぇし、こいつだけは王都の魔導具ギルドの専売なんだよ」
「なるほど」
「だから、多くの場合魔法陣を使うものが普及してんだ。定期的に描き直しは出てくるが、金額も安い。庶民でも手が届くっているのはいいな」
「そうですね。それに描き直しにも少しは金額が発生するんでしょう?」
「おいおい、そいつは言わねぇお約束だぜ」
まあ、耐久性が高すぎると、新しいものを買う人が減り、ギルド側としては儲けが出ないし。
「ってことで、魔法陣の描き方を教えてやる」
「お願いします」
「といってもよ、基本は普通の……ってそうか、まだ五歳か」
「ええ」
「なんか、お前と話してると、大人と話している感じなんだよな……」
「よく言われます」
中身は三十歳超えましたし。
「さて、普通魔法使いはこんな文字を使って魔法陣を描くんだ」
そうやって見せられたのは、普通使う文字とは全く体系の異なる文字だった。
「文字の種類は大体50種類くらいだ。で、こいつを組み合わせて単語らしいものを作っていく……だが、この魔法文字と、魔法陣の作り方は旧世界の方法でな。まだ完全には分かってないんだよ」
え、あまり分かっていない文字で作っているのか?
「色々出土する旧世界の魔導具を調べて、どういう意味なのか分かってきてはいる。それでも、やっぱりそこまで複雑なものは出来ていないんだよなぁ。一応魔法文字は現在の文字に対応させられるらしくてな、詠唱をこの文字で書けば、大体同じ効果を得られるんだ。だが、後の20個くらいの文字の意味が分かってないんだよ」
あ、一応今の言語に対応させようと思えば対応させられるのか。
それは便利だな。
先にこれは習っておきたかった……
「さて、文字は後で覚えろ。それよりも重要なのが魔法陣だ」
「あれ、でも普通の魔法使いも魔法陣を使うって……」
魔法陣は普通の魔法使いでも使う。
であれば、何故重要なのだろう。
「魔導具用の魔法陣は特殊なんだ。普通の魔法使いが使う魔法陣は自分の魔力を使うから自分で制御できる。だが、魔導具は違う」
「あ、一般人も使うから……」
「そうだ。特に魔石を使う以上、魔力の雰囲気も違うんだ。下手に使えば魔導具が暴走しちまう。だから、そこの辺りは魔導具ギルドの専売なのさ」
「それを……教えていただけるんですか」
「ああ」
つまり安全装置はブラックボックスなのか。
それを教えてもらえるのは有り難いな。
「それじゃ、始めるぞ」
「よろしくお願いいたします」
そうやって、魔導具の作り方と、魔法陣の描き方を学ぶのであった。
* * *
更に二週間後。
「出来た……!」
「おお、出来たな……」
真空ポンプの完成である。
「全くこいつの用途が分からねぇが、なんか出来たな」
「フォルク師匠、これであのポットの改良が出来るんですよ!」
そう。これで二層構造の間の空気を抜き、断熱効果を持たせるのだ。
「そうだったな……しっかし、お前さんは面白いことを知ってんな。空気があるから冷めるんだって……訳が分からなかったぜ」
「ははは……」
真空ポンプを作りながらこれの用途を話していたのだ。
この世界は少々知識面のちぐはぐさがあり、科学的に理解されている部分と、そうでない部分がある。
それが非常に変で、前提条件は知られていないのに結果は知られている、と言うような状態だ。
「さ、では早速作ってみましょうかね」
そう言って、魔法を発動させる。
「【モデリング:セレクト:鉄のインゴット】」
魔法名【モデリング】。
これをヘルプでみるとこんな感じだった。
=========================================
・モデリング
モデリングは指定された対象の形状を変更する
コマンド。
サブコマンドで離れた位置からでも対象を指定したり、
形状の変更ができる。
ただし、形状を変更する場合、サブコマンド以下で形状を
指定するか、十分な出力の思念が必要。
【モデリング:[サブコマンド名:対象:形状]】
=========================================
十分な出力の思念、つまり想像力をしっかり働かせておかないと、変な形状が出来てしまう。
勿論後で形状を変更できるとはいえ、魔力を使うのでかなり無駄なのだ。
最初は中々形状が定まらず大変だった。
ちなみに手で触れていれば、簡単に手で形状を変えられるのだ。
意外と便利な魔法である。
ただし、迂闊に使っていると……
「あ! またワシのインゴットが! レオン、お前また魔法で形作りしたな!」
「え!? すみません!」
どうも選択範囲が広かったのか、別テーブルで作業していた職人に怒られた。
この辺りはまだ制御が甘いところである。鍛錬せねば。
「よし、形状は出来た……後はここに差し込んで……」
ポットの底面に、真空引き用の穴を設け、そこから真空ポンプで中を真空にした後、封をする。
封は専用の魔導具で行えるので楽である。
「よし、出来た!」
「おお、出来たか!」
後はポットに蓋をつけ、この工房作出ある事を示すマークを押す。
蓋はパッキンがなかったので、コルクを一部に使った蓋にする。
ちなみにこのマークも魔導具で押すため、偽造防止になるのだ。
これを偽造すると、罪に問われて重労働刑になる。
「完成! 『マジックポット』の一号です!」
『おお!』
できあがったものを掲げると、職人たちが手を止めて見に来る。
「おう! こいつなら軽いな!」「持ち運びに良いぜ!」
「魔石はないが、半日は保ってたからな! こいつは売れるぞ!」「俺の分も作ってくれ!」
口々に褒めてくれる。
それを見ていると、肩を叩かれた。
「師匠」
「よくやったな」
たった一言だったが、何よりも嬉しかった。
少し泣きそうになりながら、我慢する。
「ありがとうございます!」
「ふん! まだまだひよっ子なんだ。これからも頑張れよ……レオン様」
えっ?
* * *
「師匠は、知ってたんですか!?」
工房から出て、魔法陣を教えてもらった奥の部屋で師匠と話す。
「おうよ。というか、俺は最初お前の母親が来ているのも見てんだ。ここに長く住んでりゃ、領主の奥方の顔だって知ってらあ。大体、ギルマスがわざわざ紹介してんだ。大体の予想は付くってもんよ」
「ははは……そうでしたか。でも、師匠は師匠ですから、公の場以外なら普通にレオンと呼んでください」
「そうか! 俺も堅苦しいのは苦手だからな! 助かるぜ」
そう言って師匠は笑う。
こういう風に何でも言ってくれる大人は大切だ。
「さて……この話はここまでにして、もっと現実的な話をしよう」
「え? ええ」
「それはこいつの販売についてだ」
ああ、できあがった以上量産していきたいからな。
「こいつはいくらくらいで売れると思う?」
「そうですね……今のところは銀貨1枚でどうです?」
銀貨1枚は、日本円で言うとおよそ1万円。
この世界では、銅、銀、金、白金、聖金と貨幣があり、それぞれコイン(貨)とプレート(板)に分かれる。
銅貨1枚が約100円で、素材が上がると100倍になるのだ。
ちなみに銅貨1枚を「1ドラール」と呼ぶ。ドルかよ。
「そりゃあ、ちと安すぎるぜ」
「そうですか?」
だが、安いと言われてしまった。
師匠に言わせると、新しいものである以上、高めの価値にして良いそうだ。
「こういうのは大体お貴族様……いや、レオンもそうか……まあ、金があるところとか、見栄を張りたいところが買いたがるんだよ。だから、こういうのは金貨1枚だって問題ないんだ」
「材料費は銅板3枚くらいですけどね」
「それは言いっこなしだ。真空ポンプだっけか? あれだけで金貨数枚飛んでんだからよ」
実は真空ポンプを作るに当たり、どうしても一部魔結晶が必要になったので、それが高かったようだ。
「まあ、そこは師匠のお手並み拝見ということで」
「お前、自分で値くらいつけろよ……これも修行だ修行」
「はーい」
最終的に、15,000ドラール、つまり金貨1枚と銀板5枚という事になった。
「ちなみに販売はコールマン商会に任せる」
「ああ、うちも色々買っているみたいですね」
「そりゃあ、政商だしな。だが、基本はエクレシア・エトワールを拠点にして、絶対動かさないから信頼が置けるんだ」
やはり販売になるとギルド直売ではなく、商会を通すんだな。
* * *
数ヶ月後。
今日は昼から魔導具ギルドに行く予定だ。
最近護衛が減り、精々二人が側に付いているくらいである。
……多分この前、騎士団を百人斬りしたからだろうな。
最後の方は集団戦だったのできつかったが、某格闘漫画でも世界最強の男が「結局当たるのは4人だけだ」って言っていたとおり、直接当たる人数に制限があるので、どうにかなったのだ。
ありがとう、勇○郎さん。
魔導具ギルドの扉を開け、中に入るとすぐに師匠が出てきた。
「おう、来たかレオン。ちょうど良いからこっち来い」
「どうしたんです?」
「実はな……」
師匠に連れられ、ギルドマスター室に向かう。
途中で聞いたところによると、どうも「道具ギルド」という、魔法を使わない道具を作るギルドの代表が来ているらしい。
「この前作った『マジックポット』の件らしいが……」
「あれ、結構売れているみたいですね」
「おうよ。おかげで元はすぐに取れたしな」
「僕もそれなりに頂きまして……」
そうなのだ。
マジックポットのおかげで開発者として一定金額をもらうことが出来た。
その前に真空ポンプの開発でも幾ばくかもらったが。
少なくとも、前世の給料一年分を遥かに超える金額をもらうことが出来たのである。
「まあ、売れ行きの方はどうでもいいんだ。どうも、あちらさんの代表がいちゃもん付けてきてるらしくてな……」
「うわあ、面倒くさい」
「どうも『作った奴を出せ!』って言っているらしくて、ギルマスも困ってんだってよ」
「それ、僕行っちゃ駄目なんじゃ?」
「まあ……それはそうだが……」
「まあ、ノエリアさんのためですし。行ってみましょう」
「おう、助かるぜ」
そんな話をしていたらギルドマスター室に着いた。
——コンコン。
「どうぞぉ」
「失礼します」
ギルドマスター室に入ると、ちょうど正面にノエリアさんが座っており、その正面には恰幅の良い……というか太っている中年の男性が腰掛けている。
「ん? 誰だ小僧」
「紹介しますねぇ。彼があの『マジックポット』の開発者、レオンくんですぅ」
「なっ! こんな小僧が作れるわけがない!」
失礼な奴だな。
「すみませんが、あなたはどちら様ですか?」
「儂が誰かだと? これだから……儂は『道具ギルド』のイゴーリ・アブラモフだ。まあ良い……小僧が開発者というなら話は簡単だ。おい小僧、あの『マジックポット』とやらの権利を買ってやる。金貨5枚だ、いいな? ふん、ガキには過ぎた金額だがな。精々感謝しろ」
えー……
何こいつ面倒くさい。
というか失礼なだけじゃなく、権利を奪って儲けようとしているのが見え見えだ。
「ちょっとぉ、アブラモフ代表。それはぁ……「お断りします」」
「うるさいぞ! ならお前、儂のところに夜に来る…………は?」
「ですから、お断りします。まさかそのお年で難聴ですか?」
鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしているな。
しかしこいつ、ノエリアさんの身体も目当てか?
「こ、小僧! 儂に逆らうというのか!」
「逆らうも何も、あなたがどこの誰だかなんて関係ありません。これは法律違反ですよ」
「黙れ! 法律など、役人など金を握らせておけば黙るのだ!」
おやおや。自ら賄賂を使っていると暴露ですか。
ろくでもない奴だな。
「いずれにせよ、今申しましたようにお断りします。これ以上、ここで騒がれるようでしたら営業妨害として、警備隊にお迎えに上がらせましょうか?」
「このガキ……! 覚えておれ! ノエリア、貴様もだ! 儂に泣いて許しを請うてももう遅いからな!」
そう言いつつ、太った身体を揺らしながら出て行った。
「いやはや、お名前の通りですね。脂ぎってる」
そう言いながら見送っていると、背中に温かく柔らかい感触が。
ふと振り返ると、ノエリアさんが背中から抱きしめてくれていた。
「レオン様ぁ……あんまり無理しちゃだめよぉ……?」
そう言いながら、頭を撫でてくれるノエリアさん。
だが、その手と、背中の感触が震えていることに俺は気がついた。
「大丈夫ですよ……それに、ノエリアさんや師匠の魔導具ギルドのためにも、体を張ってこその僕らですから」
彼らも領民なのだ。
それを守るのは当然僕ら王族や貴族の務め。
少し落ち着いたノエリアさんと、対面で話す。
「でもぉ、本当に大丈夫かしらぁ? 道具ギルドは古くからあって、大物貴族の後ろ盾があるって聞いているわよぉ?」
「うーん、大物貴族ですか……それってうちより大きいんですかね?」
「うふふ……それもそうねぇ……」
ライプニッツ公爵家、いやイシュタリア公家であるうちの権力は当然非常に強い。
表立って逆らえば、それこそ国家反逆罪に問われてもおかしくないのだ。
「いずれにせよ、警戒は必要ですね」
「ええ。仕入れについても、販売についても邪魔されないようにしなきゃぁ……」
「出来れば、正面から実力行使してくれた方が有り難いんですがね」
「えぇ……それは困るわぁ」
「両親にも報告しておきますから」
「お願いねぇ」
「しかし、なんで道具ギルドはうちを目の敵みたいにしているんです?」
「それはねぇ……」
聞くところによると、元々道具ギルドに所属していた職人が独立して出来たのが魔導具ギルドらしい。
といっても、職人たちの数も余っており、しかも主流派から弾かれたようなメンバーが独立したので、元から対立しているそうだ。
道具ギルドは生活に必要な調理器具や様々な製品を作っている。
それに対して、魔導具ギルドは魔力を作った道具を作る。
どちらも種類は異なるとはいえ、魔導具ギルドの道具は品質もよく、道具ギルドの商品を更に改良したものも存在しているのだ。
そりゃあ、勝手に敵視されても仕方ないような……
でも、本来貴族向けの製品を作る魔導具ギルドに対し、庶民向けの道具をつくる道具ギルドは充分成り立っていたのだ。
だが、今の代表に代わってから数十年。
道具の新規開発もせず、改良もせず、値段を上げているため、庶民からの受けが悪くなったようだ。
さらには魔導具ギルドもコストを抑えて庶民でも購入できるものを作り始めたものだから、対立が深くなってしまったようだ。
そうは言っても、魔導具ギルドが庶民向けに出すようになったのは王城からの命令だったそうだが。
そのようなわけで、俺はちょっと面倒な事に巻き込まれてしまったようだ。
* * *
それから更に数ヶ月。
警戒を続けながらも販売を続け、エクレシア・エトワールの魔導具ギルドは発展した。
提携しているコールマン商会も売り上げが右上がりで喜んでいるようだ。
ちなみに、道具ギルドはコールマン商会ではなく別の商会に商品を卸しているらしい。
道具ギルドもマジックポットを買って、研究しているみたいだが芳しい成果は上げられていない。
そりゃそうだ。割ったところで魔法陣は描かれていない。
その間に魔導具ギルドは、容量違いや、デザイン違いのものを出したり、ポットの底面に取り付けるヒーターを作ったりした。
結局これ、温度についてはポットの先端に笛を取り付けるということで終わったが。
いずれきちんとサーミスタとかも考えたいものだ。
この数ヶ月間、たまに例のアブラモフ代表が乗り込んできたりもしたが、全てお帰り願って終わり。
そろそろ諦めて欲しいと思っている。
両親に言った結果としては、道具ギルドと取引している商会が制限を食らっているという状態である。
「さて、そろそろ帰りますね師匠」
「おう、気を付けて帰れよ」
「また明日ぁ」
師匠とノエリアさんの声を聞きながら、魔導具ギルドのロビーに来ていた護衛と共に帰路に着く。
魔導具ギルドは一般街にあるため、護衛と共に途中まで歩いたところで馬車に乗る。
一応師匠とノエリアさん以外は俺の正体を知らせていないのだ。
「そういえばレオン様」
「どうした?」
「最近、マーファン商会の連中が怪しい動きをしているそうです」
「ふーん、そうか……そのまま尻尾を出してくれれば助かるんだけどね」
「いやいや……護衛する身にもなってくださいよ」
「確かに……そりゃそうだな。悪いね、ガイン」
「いえ……」
護衛は前からの知り合いであり、俺の実力を知る一人であるガインだ。あと二人の護衛を率いている。
最近ガインは、軍というよりイシュタリア公家の護衛騎士として扱われているらしい。
「さあ、そろそろ馬車が来ますので」
「ああ」
いつも決まった時間に馬車が迎えに来る。
そろそろ来る頃かな……
その瞬間。
「なっ!!」
周辺を白い煙が覆う。
「煙幕か! レオン様!?」
「ガイン隊長! レオン様がいません!」
ちょうど煙幕に巻かれた瞬間、俺は何者かの声を聞いた。
『大人しくしろ』
そのまま猿轡を掛けられ、どこかへと連れて行かれたのだった。
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