Eye6 任せられない案件
「ふぅ、一段落ついたか」
そう呟いて時計を見る。もう朝の四時だ。大体の資料は片付いたし、後は厄介な資料を片付けるだけ……なのだが一眠りしよう。予想外に疲れてしまった。それに視界もボヤけている。キッチンに行ってタオル蒸し器からタオルを出す。
「はぁー」
リビングのマッサージチェアに深く座り、弱モードをかけ、蒸しタオルを目に当てながら寝る。私としてはこれが一番疲れが取れるのだ。
――
何やら物音がして目が覚めた。恐らく彼女だろう。
「お目覚めですか、西崎さん」
「ああ、おはようさん。ていうか二見、あんたいつ寝たんだ?」
「四時ですよ。今何時です? 時計が見えなくてね……」
「! 八時だけど、あんたまさか……」
「いつもの事ですよ。お気になさらず」
「本当にいつもすまん……」
毎度の事ではあるが西崎はこういう所がしっかりしているので、それも仕事を請け負う理由になる。そうでなければ視力をここまで落としてまで仕事はしない。毎回の西崎の態度はある意味「お代」の一部だ。
「あんた程じゃないけど朝食でも作ろうか?」
「ええ、是非とも。そうだ蒸しタオルを取って貰えますか?」
「あつつつ、はいよ」
「どうも。出来たら声をかけて下さい。もう少し寝るので」
そう言っておいてまた眼を閉じる。西崎は謙遜しているが中々に料理は美味い。本人曰く、母親と祖母の料理を見て覚えた、との事だ。それなら十分だろう。
それから夢と
「いただきます」
この挨拶から食事が始まる。二人で話をしながらラジオを聞いているとこの嵐はまだ続く様で今日一日は危険だそうだ。
「西崎さんは大丈夫です?」
「この嵐じゃ出るのはヤバそうだな……」
「まだ、幾つか資料が残っているのですが」
「すまんな……今日も泊まらせてもらうよ」
「ああ、そうだ。お願いがありまして」
朝食を終えた私は西崎に幾つかの資料を見せる。そして……
「この案件は私に一任して頂きたい」
そう願い出る。これは私がやる以外には無い物だ。
公的機関には任せられない。
「……あんたが言うならそうするしかないね。私としてもお願いする」
「警察としてなら?」
「当然ノーだ。でもあんたに任せるよ」
「事後所理は?」
「こちらで上手くやる」
「ありがたいです」
このやりとりの後、暫く沈黙が続いた。外からは嵐の音が聞こえてくる。
「あんただけが頼りだ。何としても奴らを助けてやってくれ」
「ええ、どんな手を使ってでも助けますよ」
私の場合は「手」ではなく「眼」だが。
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