第16話オーバードライブオンライン1


「さて……」


 本格的にVRMMOアクションRPG『オーバードライブオンライン(通称オド)』の教習をすることになった。


 電子世界にダイブしてオドに飛ぶ。


 待ち合わせ場所は秋子と夏美の都合を考慮してフリーフィールドの初心者設計……そのとある村にしてある。


 イベントもクエストも一切無い村だ。


 ポップする敵も極端に弱くレベル1でも無双できる。


 というかオド自体が無双アクションゲーなのだけど。


 基本的に自身(というより自身のアカが創ったアバター)が身を置く場所は大雑把に分けて三つ。




 一つはマイルーム。


 ログインする際に必ず一度は送り込まれる場所だ。


 複数のアバターを管理したり参加可能なクエスト一覧を見たりログインログアウトをしたりするための場所で、一人に一つ設置される。


 電子世界でこう云うと盛大な矛盾をきたすことになるのだけど他のアバターには秘匿性の高い環境なのである。


 主にゲームの休みにマイルームに籠り身内でチャットしたりクエストのチームを組んだりするくらいの役には立つんだけど。


 僕みたいなプロプレイヤーにとってはオークションへの出品にも使われるか。


 後は………………一人になりたい時とか。


 でもまぁいくら秘匿性が高いとはいえ一人になりたくてマイルーム……VRMMOにダイブする人間がいるとは思えないけど。


 それならセカンドアースで景色の良いアルプスの草原でデータの風に当たっている方がよほど心安らぐだろう。


 閑話休題。


 オドでは、まずマイルームに送られてアバターを選択した後に、後述するクエストフィールドかフリーフィールドにログインすることが出来る。




 一つはクエストフィールド。


 ゲームにおける条件クリアを前提とした遊技場だ。


 クエストに特化したフィールドが個々に、かつ無数に用意されておりマイルームや後述するフリーフィールドから飛ぶことが出来る。


「どこそこのボスキャラを倒せ」


「アイテムを指定の場所まで運べ」


「敵軍を殲滅せよ」


「とあるキャラクターの護衛をしろ」


「数時間生き延びろ」


「ダンジョンから指定されたオブジェクトを見つけ出せ」


 そんな条件付きで縛りの効いたプレイをするためのフィールドだ。


 だいたいキャラを育てたい時やレアアイテムをゲットしたい時のために利用されるフィールド……というかそんなのはどのVRMMOゲームでも同じだろうけど。




 一つはフリーフィールド。


 クエストを選ばずマイルームからログインすれば身を置ける場所だ。


 だいたい島国くらいの広さを持ち、そこかしこで敵キャラが現れるため好き勝手に暴れまわることが出来る。


 単純に無双ゲーを楽しみたい時に使われる他、袖擦り合った他人とコミュニケーションをはかるための場所でもある。


 村や町や街があり酒場や食事処で知りあったり、知己でない人間同士がグループ組んで狩りしたり。


 後は……フリーフィールドからしか行けないクエストフィールドもある。


 マイルームから行けるクエストフィールドは、例外は数有れど一般的にオドを楽しむための物だ。


 例えば先日の、ソロクエで『呂布シリーズ』のレアアイテムを出したようなクエストはフリーフィールドを介して選択しなければならないことが多々ある。


 僕が今度揃えようとしている『オーディンシリーズ』もフリーフィールドの中の北欧神話エリアからしかリンクできないクエストフィールドにて揃えられるモノだ。


 ちなみに『呂布シリーズ』のオブジェクトを集めるクエストは三国時代エリアからリンクできる。


 つまりフリーフィールドで雑魚を蹴散らしながら目的のクエスト玄関に辿り着き、それからクエストを楽しむというのが一般的なオドでの楽しみ方と云うことである。




 で、現在はフリーフィールドの安穏とした名も無い村に僕がいる。


 秋子と夏美もそれぞれログインしてきた。


 秋子のアバターは青い長髪に青い瞳の神秘的な美女。


 水の妖精にも例えられる儚さを持ち、スラリと長い身長で「お姉様」とでも呼びたくなる容姿である。


 アバターの名前はコキア。


 自身の名前……「秋子」を反転させたのだろう。


 たしかコキアはほうき草の別名だったはずだ。


 夏美のアバターは赤い長髪に赤い瞳の快活な美少女。


 コキアより幼い印象だけど胸はコキアより大きい。


 ちなみに現実世界の夏美の胸は秋子と比べるべくもないくらい残念である。


「そのコンプレックス故なのだろうか?」


 とも思ったけど心の内に秘めておく。


 アバターの名前はミツナ。


 こちらも自身の名前……「夏美」を反転させたものだ。


 おそらく他にアバターネームを思いつかなかったのだろうと思われる。


 「三名」とでも漢字変換すれば無理な名前でもない。


 どちらも美しい容姿だけどVRMMOのアバターを選択する際に容姿貌面に加点しない人間の方が少数だろう。


 かく言う僕も冴えない黒髪黒眼の大和少年ではなく、白い短髪に赤い瞳の美少年のアバターだ。


 いいでしょ。


 電子世界でくらい格好つけたって。


 ちなみにアバター名はハイド。


 もう一つネトオク用のアバターがジキル。


 二重人格を普及させた名作小説の「ジキルとハイド」が元ネタだ。


 土井春雉。


 どいはるきじ。


 反転して「じきるはいど」


 真ん中で分けて「ジキル/ハイド」である。


 そういう意味では秋子のコキアや夏美のミツナに意見しにくいんだけどさ。


 とまれ、


「うん。無事ログインできたね」


 コキアとミツナを確認して僕ことハイドはコックリ頷いた。


 さて、では始めようか。

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