零と瑠那 妹③
「おにい」
「そりゃ今日は
もはや言われなくても分かる。大月家シスターズの恒例行事「絶対順番にやる」のパターンである。一昨日は芽生。昨日は友里恵。そして今日は末っ子瑠那である。
「ん。理解が早いようでとても助かる」
「いや、でも瑠那。お前が料理するのか?そういうタイプじゃないだろうに」
けだるげな目。なんだか知らないが若干大きいTシャツ。見るからにめんどくがりっ子なのだ。瑠那は。そんな瑠那が料理をするのかと疑問に思う。
「確かに。私は料理なんてあまり、というかほとんどしない。しかし今回は話が別」
「いつものように順番にやるから?」
「それもある」
「もってことは他にもあるのか」
「ん。私の将来に関わる問題」
「将来?」
……思った以上に深刻な話なのだろうか。
「私は将来専業主婦を目指している」
「……ほう」
「家に帰ってきたおにい……じゃなかった旦那さんに『おかえりなさい。ごはんにする?おふろにする?それともわ・た・し?』といった夫婦あるあるをやるのが夢だったりする」
「……すまん。いろいろ突っ込みたいことが多すぎるんだが」
どやぁっといった感じで胸を張る末っ子。心なしかいつもより目が輝いている。どうやら本気でそう考えているらしい。
「そもそもそれだと俺が結婚できないみたいじゃないか。ていうか兄妹間で交わす会話じゃないだろそれ」
どっちかって言うと新婚さんだろ。
「?」
「おにいが何を言っているのか分からない」
「へ?いやだから……」
「おにいにお嫁さんはいらないでしょ?」
キョトン、とした様子で首をかしげる瑠那。
「……どうしてそう思うのかちょっと真剣に話し合おうか
何でそういうこと言っちゃうのだろうか。泣くよ?お兄ちゃん年甲斐もなく大泣きするよ?
「だっておにいには私がいるし」
「は?」
「私、将来はおにいに養ってもらう気満々だから」
再びどやぁっと胸を張る瑠那。
「義妹よ」
「なにおにい」
「お兄ちゃんそろそろ一人暮らしを始めようかなって考えているんだけど」
「じゃあ私物件探しとく。おにいは自分の部屋の荷物と私の部屋の荷物まとめておいて?」
「一人暮らしって言ったよな!?」
やばい。この子マジだ。
「義妹よ」
「なにおにい」
「お兄ちゃん来年から男子校の寮に入ろうと考えてるんだけど」
「分かった。じゃあクローゼット空けて置いて」
「住む気!?男子校の寮部屋のクローゼットに住む気!?」
もはや執念すら感じるんだが……。と、うなだれた零の頭にポンッと手が乗せられた。
「?」
「おにい、もう諦めて二人暮らし用の物件探そ?」
人生で初めて女の子の笑顔が怖いと思った零なのだった。
……ていうかさりげなく残りの二人省いてるし!!
「はぁ、まあ取り敢えずそれは置いといて」
「ここのマンションとか良いと思うんだけど」
「話聞いて!?」
怖いよ!本気で調べてるよこの子!?
「む、そうだった。おにいとのハッピーでシュガーなライフのためにも私はめんどくさい料理をするんだった」
めんどくさいって言っちゃったよ。
「えっと、何作ろうか」
「ジンギスカン。疲れて帰ってきたおにいに精力を回復してもらうため」
もう突っ込まないぞ!?
「ジンギスカンか……まあできなくもないけど」
「あ、でも帰ってきて夕飯がいきなりジンギスカンだったら流石にきついかな」
「そこは真面目に考えるんだな」
ふざけてるんだか真面目なんだかよく分からなくなるなぁ。
「おにい、作り方教えて」
もうキッチンにいるし!エプロンまでしてやがる!
「ていうか結局作るのか。え、それでいいの?」
「ん。めぐねぇもゆーちゃんも食べたいと思うし」
「…………そっか」
ふっと笑うと自分も料理の支度に入る零なのだった。
あ、ジンギスカンは普通に美味しいと我が家で人気のメニュー入りしたのだった。
【おまけ】
「……このマンションなら結構ぴったりかも」
「!?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます