物語のしくみを考える

志水鳴蛙

どんでん返し、いつ仕掛けるか?(1)

【映画『猿の惑星』『君の名は。』『マトリックス』の内容に軽く触れる(核心には触れないつもりですが)予定ですので、ご注意下さい。】


 もしも物語に出てくる要素がすべて最初の印象のまま最後まで変わらなかったら、かなり高い確率でつまらない作品なんじゃないでしょうか。逆に、ちょっとした脇役でも話の進行の中で意外な側面があるのを見せてくれたりする作品はサービス精神あるなって思うし、こちらの意表をつく大どんでん返しを見せてくれれば最高です。


 実は物語には限られた数のパターンしかないとも言われていて、それもある意味では間違いじゃないですけど、話がこの先どうなるかわからないから面白いという面もあるわけです。“知る楽しみ”と言ってもいいかもしれません。知る楽しみがあるからこそ、話の先が気になるわけです。

 どんでん返しとは知る楽しみを与えるための情報提示のやり方のひとつです。


 物語の中に出てくる謎というのも、機能としてはどんでん返しと似ています。前振りとして、読者や観客に「どういうことだろう?」と疑問を抱かせておいてから、後から「実はこうでした」と答えを示す。どんでん返しの場合は、前振りで「たぶんこういうことだろう」と思わせておいてから、後から予想外の事実を示す。前振りのしかたが違うだけで、後から「そうだったのか!」という知る楽しみを与える手法という点は同じです。


 物語を進めていくためには、読者や観客に次々と情報を提示していく必要があります。情報は順序よく、受け手が飲み込みやすいように提示していくのが基本ですが、それだけではつまらない。ときには、あえて情報の与え方に起伏を付けて印象を強めることも必要になります。それが、どんでん返しだったり謎だったりするわけです。


 次にどんでん返しの失敗パターンについて考えてみます。

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