16‐2「突入! 魔王城」
ダイヤと2人でペガサスに乗るとペガサスは鳴き声とともに羽を羽ばたかせて宙へと舞う。みるみるうちにスペードとクローバーが見えなくなり小さくなっていった。
そうして2人の姿が見えなくなると不思議なことにダイヤと2人きりという事実を意識しすぎて彼女が俺の腰に手を回しているのも変に意識して気恥ずかしくなり何か言葉をかけなければという衝動に駆られる。
「ダイヤも『ワープ』使えるようになったの? 」
「はい、大賢者様のお陰で。一度行った場所はその場所を思い浮かべるだけで移動が出来るので本当に助かります」
「じゃあ、それでスペードとクローバーを迎えに行こうか」
「それは可能ですが……」
そういうと彼女は言葉を切る。なんというか事務的な会話になってしまった。けれどこの機会にそれはあまりに勿体ないように感じた。何かないかと下を見上げると既に随分高く来たもので島どころかすべての国を見わたせる高さにまでなっていた。
「この今見えるほとんどの場所を旅したんだなあ」
不意に呟くと背後から彼女の声がする。
「はい、トーハさんと出会うまでは夢にも思いませんでした。巻き込んでしまって申し訳ありません」
「俺も楽しかったから気にしないで、こんな経験向こうの世界じゃ出来なかっただろうし」
向こうの世界の暮らしを思い出す。向こうでは今こうしてペガサスに乗っていることすらあり得ないことだろうに更に個人的に言うと女の子まで乗せているなんて考えられないことだったろう。
「ペガサスで空を飛ぶのはこちらでも夢のようなお話ですよ。本当に綺麗な景色です」
小さくなっていく国を見下ろしてうっとりとしながら言う。
「うん、綺麗な景色だ。だから、この景色を守ろう」
そう、だからこそ俺達は勝たなければいけない。これまでの旅は全て魔王を倒すことが目的だった。俺はこの天国へ上っていくような夢のような状況の先で待ち構えている魔王を睨む。するとたちまち雲の隙間から空中に漂う要塞のような城が姿を現した。
『あそこが魔王城です』
ペガサスが俺達に語りかけた。
♥♢♤♧
ダイヤが迎えに行き4人で聳え立つ階段を見上げる。
「リベンジの時がようやく来たか」
「……今度は負けない」
「魔王を倒して世界を救いましょう」
「よし、皆行こう」
俺の言葉を合図に俺達は階段を昇って行った。階段を上った先は大きな広場で寂れて廃墟のような城が姿を現す。そしてその中央に黒いローブの男が立っていた。魔王だ。
「魔王様自らお迎えとは大変恐縮ですねえ」
「ふん、何も知らない貴様らがそこの女に爆発魔法を打たせてしまうのは可哀相でな」
俺の皮肉にそう言い返すと魔王はダイヤに剣を向ける。
「どういうことだよ、お前がダイヤの関係者ってことか」
「そうではない。貴様の仲間のことだ」
スペードの問いにそう答えた後ダイヤに向けた剣を俺に向け言う。
「そこの転生者は、我を倒すために召喚された。ならば我を倒したらどうなるか分かるだろう」
「まさか」
口の中が乾く。もう魔王が何を言わんとしているかは嫌なほど理解できた。
「そこの転生者は、我を倒すと消える」
魔王の宣告が辺りに響き渡った。
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