15-23「デーモン降臨」

「また防がれた! 」


 俺とクローバーの幾たびにも攻防に再び歓声が上がる。既にこのどちらかが間違えたら命に関わるやり取りは二桁は続いていた。ダイヤ達は上手くやってくれただろうか?

 考えると再び枝がガサガサと揺れる。

 合図だ

 俺は再び剣を構えたその時だった。突如上空に何かがやってきて思わず後ろに避ける。


 ドシャン!


「な、なんだ? 」


「人だ、人が降ってきたぞ! 」


「おい、あいつが持っているのって」


 突如落ちてきた宝箱と鍵を持った焦げた人に会場は瞬く間にパニックになった。


「誰だよあいつなんで鍵を」


 その声を受けて2人の王がそれぞれの箱を調べたようで悲鳴をあげる。


「す、すり替えられてる! 」


「本当だ、いつの間に! 」


 両陣営は御前試合のことなど頭から抜け落ちたようで即座に裏切り者の確認へと向かった。


「ヤギリさん!? 」


「馬鹿野郎、唯一人間ながらも俺たちに味方してくれたヤギリさんが裏切り者なんて冗談でも口にするんじゃねえ」


「何言ってんだヤギリさんは人間側に付いてくれていて……」


 さらにそこで交わされる会話から明かされたヤギリさんの正体に一同は更にパニックになるのだった。


「うー……ん、ここは」


 ヤギリさんが程なくして目を覚ますも即座にモンスター人間両者から睨まれている現状から何かを理解したようだ。


「説明をしてくれないか」


「そうだ! 説明だ! 」


 2人の王が詰め寄る。するともう観念したのか1人腹を抱えて笑い出した。


「フハハハハ、ようやくお気付きですか。ええ、私はハナからどちらの味方でもございません。私が忠誠を誓うのはただ1人、魔王様です! 魔王様は認めてくださった。この国が瓦解し宝箱に収められているであろうオーブを手にすればこの国を下さるとまで言ってくださった。この闇の魔法使いとまで言われた私に居場所をくださった! 貴様等みたいなバカに腐っても忠誠など誓うものか! 」


 そう口にすると近くにあった杖に手を伸ばす。急いで回収しなくてはと思ったその時だった。


「……っ! 」


 それを阻むかのように突如現れた一本の矢が杖を弾き飛ばす。見上げるとやはりクローバーだった。


「……次に変な真似をしたら身体を打つ」


「クソガキが! だがもう手遅れだ! 貴様等にはもはや絶望しか残っていない」


 そう勝ち誇った瞬間だった、ガリッという音とともにその顔が苦痛に歪む。


「どうしたヤギリ! 」


 王が叫ぶももう言葉はない。それどころか彼は息すらしていなかった。


「毒薬だ、でも皆さん用心しましょう。まだ死んだふりの可能性も」


 俺が皆に声をかけた次の瞬間、ヤギリさんの身体がメリメリと裂け中から頭の左右に黒い角を生やしたドス黒い生物、デーモンが姿を現した。


「ハハハハハ、イカガデスカ。ミズカラノカラダをモンスターにするコノジッケン! もはやキサマラガタバになってカカッテモムイミ! 」


 クローバーが即座に背後から首を狙う。しかしそれをデーモンはいとも簡単に手で弾き返す。

 それだけではない。デーモンはみるみるうちに大きくなっていき遂に全長10メートルほどの巨大になった」


「化け物だ」


「逃げるな! 戦うんだ! 」


 逃げ惑うもの戦おうとするもので再びパニックになる。これではダイヤとスペードと合流出来そうもない。いやそれよりもまずはここから皆を逃さなければ


「みなさん!落ち着いて2人の王様を守ってお逃げください。ここは俺が彼女と食い止めます」


 それを聞いた兵士達が王様を囲むとそのまま走り出した。これでなんとか彼らは大丈夫そうだ。


「残るは……デーモンか」


「フハハハハおバカサンですねえ今ニゲテモいずれ私の手にオチルだけですのに」


 デーモンが笑う。しかし事実その通りで俺とクローバーで倒さなければいずれはこの国が乗っ取られてしまうだろう。


「やってみせる」


 そう言って剣を構えると突如声が響き渡る。


「おうおう、派手にやってなさるね」


 今の声は、いやそんなはずはない。


 恐る恐る声の主を確かめる、しかし俺の期待も虚しくそこには侍が立っていた。

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