14‐2「両親からの贈り物」
坂を上りきった場所のすぐ右手に存在する木々が生い茂っている家屋、その建物こそがクローバーの家だったらしく彼女は身体を向けると門を前に立ち止まる。
隣は綺麗に草木は真ん中から100メートル程避けたようで空き地のようになっていた。
ふとみると空き地に向いた壁には幾つかの小さな穴が開いた木の板が置いてある。
「……ここ」
彼女はそういうとバッグから鍵を取り出して門を開けるとそのまま中に入った。
「お邪魔します」
「なんかこう、友達の家に入るの久しぶりだな、友達ってか仲間だけどよ」
「そうですね」
言葉をかわしながらクローバーに倣って門をくぐると玄関で立ち尽くしている彼女が見えた。
「覚悟はしてたけどちょっと散らかってる……とかそういうレベルじゃない」
どうしたのかと中に入ると彼女は埃被った玄関に立ちながら恥ずかしそうに俯いている。
「いえいえ、数ヶ月留守にしていたのですから当然ですよ」
「そうだぞ、それにきちんと片付いてるじゃねえか」
ダイヤとスペードがフォローを入れる。彼女達のいう通りで埃を除けば綺麗に整理整頓されているようで散らかっている様子は全くなかった。
「掃除、手伝うよ。せっかく帰ってきたんだから綺麗にしよう」
「……いいの? 」
申し訳なさそうに彼女が俺たちを見上げる。俺達は笑顔で頷いた。
それから夜まで俺達はクローバーの家の掃除をした。ありがたいことに女性陣3人に加えてセリカという女性も大きな箱を手に助太刀に来てくれたのでクローバーのお陰で広い家だったけれど掃除はスムーズに終了した。
「全く、感謝してよねクローバー」
1つのテーブルに腰掛けクローバーと向かい合ったセリカが肩をすくめる。
「……ありがとう」
「えっ、ちょっとどうしちゃったのクローバー! 前はそんなに素直じゃなかったのに」
「……うるさい」
クローバーが顔を赤く染めて顔を背ける。気心の知れたものと会話するクローバーはどこか新鮮で見ていて微笑ましい。
「それで、クローバー、どうするの学校は」
「……」
彼女は答えず両手をぎゅっと握る。
「そっか、クローバーはまだ若いってことは」
「学校に通っている年齢ですよね」
「ええ、エントの学校の弓のクラスの首席なのよクローバーは、実践も兼ねてと先生に許可をいただいて休学していたけれど……どうするの? 」
彼女はじっとクローバーを見つめる。2人の様子を見ながら俺はここでもしクローバーが残りたいと言ったら尊重しよう、と考える。
「行けない……ボクはタアハ達と旅にでるから学校には行けない」
キッパリとクローバーは彼女を見つめて言う。すると彼女はあっさりと引き下がった。
「そっか、じゃあ先生にはそう伝えておく。なんとなくわかっていたから。それとね、はいこれ」
彼女は持っていた大きくたいそう立派な木箱を彼女に手渡す。
「……これは? 」
「クローバーの両親から頼まれていたものだよ、本当はクローバーが大きくなって冒険者になってからのサプライズって約束だったけど。心はもう冒険者みたいだから」
「……お父さんとお母さんがボクに? 開けていい? 」
彼女は頷く。箱を開けると中には茶色の立派な弓が収められていた。
「……ありがとう、お父さん。お母さん」
彼女はそう言うと弓を抱きしめ涙を浮かべた。
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