10‐3「高騰する食料」

 数日ぶりのスペードの要望で再びステーキレストランへ入ると来店を告げるベルの音とともに驚きの光景が目に飛び込む。何と客らしき人が誰もいないのだ! 


「おかしいですね、お昼時なのに」


「味が悪いのかボッタくりなのか」


 ダイヤとスペードが囁く。念のために意識をして匂いを嗅いでみると匂いは悪くない、それどころか食欲そそられる芳醇な香りだ。


 そうこうしているうちに店長らしき男性がくたびれた様子でメニューを手に俺達の元へ駆け寄る。


「この値段で宜しければご注文をお伺いします」


 そう言って彼が提示したメニューを見る。するとどのメニューも元の値段らしきところに斜線が引かれておりどれも必要金貨の枚数が記してあった。


「一食金貨1枚から! ? 」


 驚いて声を上げる。いや、それ自体は


「……外からは高級そうには見えなかった」


「店も見かけによらねえってことか」


 予想外の事態だ、軽く食べるはずが思いのほか高級レストランに来てしまったらしい。


「それでどうしますか」


 ダイヤが尋ねる。俺達はアイコンタクトを取った。


 払えないということはないけれど気持ちの問題だった。こういう贅沢は昼ではなく夜にするほうが楽しいだろう。それは今の反応から見ても同じようだ。


「それじゃあ、失礼ですが我々は──」


「4人だ、宜しくな爺さん」


「……こんなに高いステーキ、食べるの初めて」


「「「え? 」」」


 再び3人顔を見合わせる。全然違うじゃないか! 思わず叫びそうになるもクローバーが嬉しそうに食べたいというのなら俺としては断るのは気が引けた。


「それでは4人で」


 俺がそう伝えると男性は店員としては珍しく注文が入ったというのに顔を曇らせた。


「あのですね、旅の方とお見受けしますが……実はうちは高級レストランでもない普通のレストランで食材もありふれた肉なんですよ」


「え」


 申し訳なさそうに言う男性を見て反応に困った俺は思わずそんな声を出す。元いた世界でもほとんどチェーン店にしか入ったことはなくぼったくりには縁のなかった俺だったけれどその手の店はもっと堂々としているだろうと思っていたのでこの反応には驚かされる。こういう種類のぼったくりもあるものなのだろうか?


 横目で言い出しっぺなら詳しいだろうとスペードを見る。ところが彼女も俺と同じような反応だった。


「一体どういうことですか? 」


 俺は尋ねる。すると男性はため息をついた。


「実はですね、この町に来るときに塔をみたでしょう? 」


「塔? 」


 言われてこの町の旅路を思い出す。しかし塔なんてどこにもなかったはずだ。するとその反応をみて言わんとしていることが分かったのだろう男性が口を開く。


「いえすみませんでした、貴方方はエトイから来たのでしょうね。それでしたら塔は見えないはずです申し訳ありません」


 そう謝罪の言葉を述べて彼は続ける。


「実はですね、この町のシンボルみたいなものであったその塔にモンスターが住み着きましてね。そのモンスターが最近手当たり次第に食料の積み荷を襲い初めまして今ではこの町では肉は貴重品のようなものなのです」


「いえ、今は肉だけのようですがいずれは他の食料も……」


 なるほど、話は分かった。つまりこのままではもしかするとこの街の食料が無くなってしまうということだ。



「この国の王様は何をされているのですか? 」


「女王様ですか? 支援はモンスターに襲われるだけですので討伐目標のようでしたが、如何せんギルドは東の国からなので冒険者に依頼していては間に合わず軍隊だけで解決することに決まったようですが勝てるのかどうか……」


「もしかして、そいつでかいのか? 」


 軍隊がモンスター討伐に動くというのに男性は勝算を感じていないようすなところから勘付いたようでスペードが尋ねると男性は首を縦に振った。


「はい、目撃したものの話によると巨体にワシのような上半身にライオンの下半身をしたモンスター……グリフォンのようです」


 グリフォン……か。息を呑む。確かに神話の空を飛ぶことのできるモンスターだとすると討伐するのは容易ではなさそうだ。しかし軍隊が動いたとなれば大丈夫なのかもしれない。


「それで、軍隊はいつグリフォン討伐に」


 俺の問いに男性が期待と不安が入り混じった様子で答える。


「つい先ほどここを通りかかったのが見えましたので、今頃は塔についている頃かと」


 なるほど、それならば安心だ。彼らの勝利を待てばいいのだ、軍隊というのだから実力もあるだろうからそれが一番だろう……が、もしものことがあったら。


 3人の顔を見る。3人とも額に汗を浮かべながらも瞳のペードの要望で再びステーキレストランへ入ると来店を告げるベルの音とともに驚きの光景が目に飛び込む。何と客らしき人が誰もいないのだ! 


「おかしいですね、お昼時なのに」


「味が悪いのかボッタくりなのか」


 ダイヤとスペードが囁く。念のために意識をして匂いを嗅いでみると匂いは悪くない、それどころか食欲そそられる芳醇な香りだ。


 そうこうしているうちに店長らしき男性がくたびれた様子でメニューを手に俺達の元へ駆け寄る。


「この値段で宜しければご注文をお伺いします」


 そう言って彼が提示したメニューを見る。するとどのメニューも元の値段らしきところに斜線が引かれておりどれも必要金貨の枚数が記してあった。


「一食金貨1枚から! ? 」


 驚いて声を上げる。いや、それ自体は


「……外からは高級そうには見えなかった」


「店も見かけによらねえってことか」


 予想外の事態だ、軽く食べるはずが思いのほか高級レストランに来てしまったらしい。


「それでどうしますか」


 ダイヤが尋ねる。俺達はアイコンタクトを取った。


 払えないということはないけれど気持ちの問題だった。こういう贅沢は昼ではなく夜にするほうが楽しいだろう。それは今の反応から見ても同じようだ。


「それじゃあ、失礼ですが我々は──」


「4人だ、宜しくな爺さん」


「……こんなに高いステーキ、食べるの初めて」


「「「え? 」」」


 再び3人顔を見合わせる。全然違うじゃないか! 思わず叫びそうになるもクローバーが嬉しそうに食べたいというのなら俺としては断るのは気が引けた。


「それでは4人で」


 俺がそう伝えると男性は店員としては珍しく注文が入ったというのに顔を曇らせた。


「あのですね、旅の方とお見受けしますが……実はうちは高級レストランでもない普通のレストランで食材もありふれた肉なんですよ」


「え」


 申し訳なさそうに言う男性を見て反応に困った俺は思わずそんな声を出す。元いた世界でもほとんどチェーン店にしか入ったことはなくぼったくりには縁のなかった俺だったけれどその手の店はもっと堂々としているだろうと思っていたのでこの反応には驚かされる。こういう種類のぼったくりもあるものなのだろうか?


 横目で言い出しっぺなら詳しいだろうとスペードを見る。ところが彼女も俺と同じような反応だった。


「一体どういうことですか? 」


 俺は尋ねる。すると男性はため息をついた。


「実はですね、この町に来るときに塔をみたでしょう? 」


「塔? 」


 言われてこの町の旅路を思い出す。しかし塔なんてどこにもなかったはずだ。するとその反応をみて言わんとしていることが分かったのだろう男性が口を開く。


「いえすみませんでした、貴方方はエトイから来たのでしょうね。それでしたら塔は見えないはずです申し訳ありません」


 そう謝罪の言葉を述べて彼は続ける。


「実はですね、その塔にいるモンスターが最近手当たり次第に食料の積み荷を襲い初めまして今ではこの町では肉は貴重品のようなものなのです」


「いえ、今は肉だけのようですがいずれは他の食料も……」


 なるほど、話は分かった。つまりこのままではもしかするとこの街の食料が無くなってしまうということだ。



「この国の王様は何をされているのですか? 」


「女王様ですか? 支援はモンスターに襲われるだけですので討伐目標のようでしたが、如何せんギルドは東の国からなので冒険者に依頼していては間に合わず軍隊だけで解決することに決まったようですが勝てるのかどうか……」


「もしかして、そいつでかいのか? 」


 軍隊がモンスター討伐に動くというのに男性は勝算を感じていないようすなところから勘付いたようでスペードが尋ねると男性は首を縦に振った。


「はい、目撃したものの話によると巨体にワシのような上半身にライオンの下半身をしたモンスター……グリフォンのようです」


 グリフォン……か。息を呑む。確かに神話の空を飛ぶことのできるモンスターだとすると討伐するのは容易ではなさそうだ。しかし軍隊が動いたとなれば大丈夫なのかもしれない。


「それで、軍隊はいつグリフォン討伐に」


 俺の問いに男性が期待と不安が入り混じった様子で答える。


「つい先ほどここを通りかかったのが見えましたので、今頃は塔についている頃かと」


 なるほど、それならば安心だ。彼らの勝利を待てばいいのだ、軍隊というのだから実力もあるだろうからそれが一番だろう……が、もしものことがあったら。


 3人の顔を見る。3人とも額に汗を浮かべながらも瞳の奥には信念の炎が灯っているように見えた。


「教えていただきありがとうございます。そういうことでしたらすみません、またグリフォンを倒したらまた来ます」


 そう言うと踵を返して店の外目掛けて歩き出す。3人は驚いた様子もなく俺についてきてくれた。



 

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