4-4「I can fly ! 」
オレは荷物をダイヤのバッグに残し素早く箱の中に隠れる。
「ん、何だろうこれ」
今までバッグの中で窮屈だったので足を延ばす前に確認をするとどうやら小麦粉のようだった。10袋以上積み重なっていてかなりの量があるがこれは長旅なので多めに用意したというところだろうか?
「船旅も大変だね~しかし、これだけ小麦粉があれば…………ちょっと身体に塗ってパンダみたいにして人気者になれないかな? 」
オレは呑気に呟く。それからしばらくしないうちに
「行くぞ! 」
と野太い声が近くでしたと思ったら身体が持ち上げられる感覚に襲われその後箱がぐらぐらと揺れる。どうやら持ち運びを開始したようだ。
10分後、「よしここだ! 」という声とともに1度引っ張られる感覚に襲われた後揺れはピッタリと止んだ。しばらくするとボウーっという音が響く。
「どうやら潜入に成功したみたいだ」
俺は安堵のため息を漏らす。念のため、もうしばらくこうやって大人しくしておくとしよう。
更に10分後、辺りで物音がしないことを十分確認した俺は箱を少しずつ開き外へ出て探索を開始する。周りは食料だらけ、どうやらここは食糧庫のようだ。幾つか拝借したい気持ちもあるがここは我慢だ! 衛生的にもあまり触れることのない様に注意してその奥にある扉へと向かう。
扉を開けるとそこには幾つもの鉄のテーブルと数人の戦う戦士たちの姿があった。彼らは目の前の食材と真剣に向き合っている。それこそ後ろを振り向く余裕もないほどに!
「ここはオレに任せて先に行け! 」
コックの背中がそう告げている気がしたので頭を下げて奥にある扉へ向かう。そこはこれまたアンティーク製のテーブルと平行になるように幾つもの椅子が置いてあった。
「ここは食堂か、かなり広いな」
一応忘れないように口ずさむ。幸い出航したばかりで人はおらずシンとしていた。
窓を開けといてもらってそれを目印に…………と思ったけどこれはその窓を見つけるまでが一苦労だなあ。このまま通路に沿って行っても窓はみつからないだろうし人に見つかる恐れがある。一か八かでバッグの中に潜んでいざというときはダイヤにあれをしてもらうというほうが良かっただろうか? いや、それはそれで彼女に危険が及ぶと困るし何より照れるのでこれで良かったのだろう!
辺りを見回すと窓が目に入った。開閉式になっているのでここからなら景色が見れそうだ!
そうか! 窓を探すには窓をみればいいんだ!
俺はポン! と掌を叩いた。
俺は窓に身を乗り出し外の景色をみつめる。見渡す限り水平線上の海に夕陽が反射して綺麗な景色で潮風も気持ちよかったが見惚れている場合ではない、いつ人が来るのか分からないのだ!
まず上を見上げる。月の光に照らされた煙突がボウボウと忙しく煙をはくだけで上には人がいそうな場所はどこにもなかった。
続いて下を見る。下には窓がありその中の1つが開いていた!
あそこだ!
俺は意外と簡単に部屋が見つかったことが嬉しくて思わず微笑む。しかし、あそこへはどういけばいいのか………………人と遭遇しないことを祈って通路を進むべきだろうか? いや、それはやはり危険だ!
窓のすぐ下には僅かに出っ張っている部分が目に入る。あそこに着地さえできればゴブリン1体なら何とか渡れそうだ!
でも着地に失敗したら海にそのまま真っ逆さま、そこで俺の冒険は終わってしまうことだろう。かといってここに留まるわけにもいかない……
「ああああああああああああいきゃんふらああああああああああああい! 」
俺は意を決して窓から下にある僅かな出っ張り目掛けて飛び降りた。フォウッ! と先ほどまで気持ちよく感じていた潮風が俺の着地地点をずらそうとするように強く吹き俺の身体が飛ばされる。この飛ばされた地点から目標に着地するのは不可能に思えた。
「ちくしょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお! ! ! 」
ここでまさかのジ・エンドか! ? 仲間が2人も出来てこれからってときに? 魔王と出会えず海に落ちて死亡?
「冗談じゃないぜ! そんなことがあってたまるかああああああああああああああああああああ! ! ! ! ! 」
俺は決死の想いで手を伸ばし何とか棒に捕まった。ガクン! と腕に振動が来るけど海に落ちるよりは遥かにマシだ。
「よっこら……せ! 」
落ちたら終わりという状況なので力を振り絞り無理矢理登る。しかし、登ったところで足を踏み外したら終わりなので安心はできない。しかし、ゴールはすぐそこにある。窓は俺が両手を伸ばせば届く位置にあったので手を伸ばして俺は勢いよく部屋に入り込んだ。ふわり、と柔らかい絨毯の感触が広がる。
部屋には綺麗なアンティークチェアに机にベッドが2つ並べられていてその上に乱雑に荷物らしきものが置かれていた。玄関の方には綺麗なガラス製らしき洒落た置物が置かれている。部屋はしんと静まり返っていて留守のようだった。
「なんだこんなに散らかしてもしかしてスペードか? いや、それにしてはダイヤの荷物がないしバッグもスペードのモノでもなさそうだ。まさか………………」
俺がその結論に辿り着きすぐさま窓から帰ろうとした寸前、この荷物の持ち主であろう何者かが室内に入ってきた。
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