4-3「大きな船」
日没、港を訪れると白い大きな1隻の外輪船が止まっていた。バッグの中からでは見上げられないほどの大きな船だった。
「でっけーなああ……」
スペードが感嘆の声をあげる。ダイヤはあまりの大きさに言葉を失っているようだ。そういえば良い剣をプレゼントしてくれたりディールの店の一番良い剣バルムンクを何とか買うことができそうだと言ったり彼女はお金持ちのようだが、流石の彼女もこの船の大きさには驚きなのだろうか? ちなみに俺はこんなに大きな船は見たことはあるが無論乗ったことはない! しばらく3人で見とれていたが
「行きましょうか! 」
というダイヤの言葉を合図に2人は歩き出す。
「お、あれが船乗りじゃねえか! ! 」
スペードが白い服に身を包んだ受付と思われる船員を見つけたようで2人でそちらへと向かう。
「こんにちは、チケットはお持ちですか? 」
ダイヤがポケットからチケットを取り出した。
「失礼いたしました、何名様ですか? 」
「えーっと3…………いえ2人です! 」
「2名様ですね、少々お待ちください」
「あの、チケット1枚で何人まで乗れるんですか? このチケットをみてもよくわからなくて………………」
「失礼いたしました、こちらのチケット1枚で4名様までご利用いただけます」
「そうでしたか、ありがとうございます」
明らかに2人しかいないこの状況でダイヤが何故このような質問をしたのか、それは恐らく俺のためだろう。姿を他の客や船員にみられてはいけないほとんど密航状態だが本来は4人まで利用可能というのを聞いて肩の荷が少し降りた。
「代表の方のお名前を伺ってもよろしいでしょうか? 」
一瞬の間、恐らくダイヤがスペードのほうをみてアイコンタクトで相談したのだろう。
「ダイヤ・ガーネットと申します」
結局、ルーレットで当てたダイヤが代表者になると決まったようだ。
「畏まりました、それではお時間になり次第ダイヤ様御一行をお部屋にご案内致しますので少々お待ちください」
受付の女性が告げたその時だった。
「ふぉっふぉっふぉ! 元気な3人組じゃのう」
紫のローブに身を包んだ白いあごひげを胸元まで伸ばした老人が杖をつきながら歩いてきた。
「いえ、おじいさん申し訳ありませんが私は冒険者ではなくて…………」
老人の話を聞き受付の人が誤解を解こうと口を開いた。それを聞くと老人は
「おお…………すまんすまん、ワシの勘違いだったようじゃ! 」
そう快活に言って受付の人にチケットを差し出した。
「受付の人を見間違うか普通? 」
「まあ、近付いてましたしそう見えてしまったのかもしれませんね」
ダイヤがにこやかに言う。
あるいは…………いや、そんなことはないだろう、多分。その懸念を払しょくするためにも俺がこのままバッグに潜んだままではなくどうやって船に潜入するかを考えなくては!
「さてとオレは………………」
バッグから少し顔を出すとこれから積むであろう貨物らしきものが目に入った。
「あれに入るか。ダイヤ、悪いけど向こうまで行ってくれないか? 」
「え、もしかしてこのなかに入るんですか! ? 」
「ゴブリンってのも不便だねえ」
「まあそのまま入って見つかるのもまずいし………………あ! 前みたいにダイヤがやってくれればいいかも」
俺が冗談交じりに言うとダイヤは赤面する。
「あ、あれはもうやりません! 」
「なあ、あれって何だ?」
スペードが興味深いとニヤニヤしながら尋ねる。
「な、なんでもありません! 行きましょうスペードさん! ! 」
「窓開けといてくれよー」
そう言い終わらないうちにダイヤはスペードを引っ張って向こうへ行ってしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます