3-14「連携って難しい」
彼らの目は「さあ、リベンジだ! 」と燃えていた。正直相手にしたくはないのだけれどここはダイヤとの待ち合わせ場所なので逃げるわけにもいかない。戦うしかないのか! ? いや待てよ………………
俺の頭に彼らを退散させるいい考えが浮かんだ。
「ウギギギギッギギギ? 」
自分でもなんて言っているか分からないことを口にしながらおもむろに首をかしげる。
そう、この森にはゴブリンが何匹もいるのだ! 昨日戦ったゴブリンだと決めつける証拠は何処にもない! ! 故にこうして無関係のゴブリンを装えば戦わずに済むかもしれない! ! !
「ねえ、本当にこのゴブリンなのダンスタン? 何か首をかしげて心当たりがないって言いたいように見えるけど」
ミスアという魔法使いがゴブリン違いだから他をあたろうと今にも立ち去ろうとする。しかしそれをダンスタンが引き留めた。
「間違いないさ、ごらんよあいつの右頬を! 奴の右頬には昨日戦ったやつについていたのと同じ傷跡がある! ! ! 」
なんだとおおおおおおおおおおおおおおおおおおお! ! !
動揺して思わず右頬を擦る。擦る前から分かってはいたがまさかこの傷跡を目印にされるなんて! !
「まあ、計算高いゴブリンね! 」
それを聞いたミスアも再び闘志を燃やした眼でこちらをみつめた。
避けられないのか………………
俺は覚悟を決めて木から飛び降りた。
みるとダンスタンは剣が昨日の大剣ではなく短くなっていた。その剣をブンブン振りながら叫んだ。
「ミスア! 今度こそ俺はこのゴブリンを倒す! ! 」
手を出すなということなのだろう、それだけ伝えると一目散にこちらに近付いてきた。何か勝算があるのだろうか?
「くらえ! 必殺! 『連続斬り』! 」
連続斬り………………余りに捻りがなさすぎるがその通りだと連続で斬るということだろう。
考えているうちに縦に斬るように1振り目が来る。俺はそれを横に避けた。
二度も縦に斬るなんて見た目も効率も良いとは言えないので次は横だろう。
予測通りに横に斬る2振り目が振るわれる。
パワーならこちらのほうが上だ!
俺はその軌道に剣を挟んだ。するとガキィン! という音とともに彼の剣が弾かれる。必殺技にしても名前が安直すぎるのは予想されるから考えものだ。
「クソッ! 一人じゃ無理か…………ミスア! 」
彼は悔しそうに魔法使いに声をかけた。
「了解! 」
と彼女が待ってましたとばかりに杖を構えた。
さて、ここからが本番だ。これからは剣と魔法の両方を警戒しないといけない。
「『ブリズァード』! 」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお! 」
彼女が呪文を唱えるのと同時に男がこちらにかけてきた。連携して魔法を俺に当てる作戦か……! ならば簡単だ、奴が避けるのを待って俺もその方向に跳べばいい! 昨日見た速度なら避けられる!
ガキィンッ! ! と剣と剣がぶつかること数秒、あえて力を入れずに鍔迫り合いに持ち込む。
「俺たちの勝ちだ! あばよ、ゴブリン! ! 」
男はそう言って剣を逸らし右へ避けた。それをみて俺も右へよけようとしたそのときだった。
「ちべたぁい! ! ! 」
何処か抜けたような悲鳴が森に響き渡る。みるとそこには────氷の塊が見事命中しているダンスタンの姿があった。
「ご、ごめん! あんた右にゴブリンをはらうかと思って…………」
彼女が慌てて駆け寄りながら謝罪の言葉を口にする。
「あ、あああああああ冷たいよ寒いよ寒いよ」
みると恐ろしいことに氷の尖っていた部分が数ミリほど鎧を貫通したようで肌に氷が直接当たっている状態のようだ。
「ま、待ってて! 今すぐ村で溶かしてあげるから! ! ! 」
そういうと彼女が俺など眼中にないように彼の両腕を持ち引き摺って村のほうへと早足で向かっていった。
連携って難しいんだなあ…………
と連携の難しさを確認しつつも彼らの冒険者としての先行きが不安になった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます