3-13「謎の女剣士」
それからドンカセの方向へ歩くこと10分ほど、誰もいない静かな森の中で立ち止まる。念のため見渡したが尾行なんかもなさそうだ。
「さてと、もういいかな。ダイヤ? 」
俺はついてきてくれているだろうダイヤに声をかける。
「はい」という言葉とともに彼女が目の前に現れた。
「ダイヤの透明になる魔法とダッシューコは本当に凄いな、今までどこにいるのか検討もつかなかったよ。盾の呪文はゴブリンシャーマンも褒めていたし本当に頼もしい限りだ」
素直な気持ちを伝えると彼女は両手を前に出して勢いよく振りながら
「い、いえ……凄いのはトーハさんのほうです! まさかケルベロスを倒すばかりかゴブリンに人間の村を襲わないように決定させるなんて! 」
「あ、ありがとう」
予想外の返しに思わず口籠る。俺はあるものや人の力を使っただけなのだがこういわれると悪い気はしない。
「それで、これからどうしましょうか? 」
彼女が尋ねる。
彼女が尋ねているのは今後の俺たちの行き先だろう。ここまでは噂で成り行きで来たがここからは目標となるものがない。
「そうだね、他に魔王のペットとやらがこの国にいないなら他の国に行こうか」
「もしかして………………」
彼女をみると額が汗で濡れている。
「うん、やっぱり魔王のペットというのを倒せるだけ倒そうと思って、現状手がかりはそれしかないし…………」
「…………確かに、ドンカセの叔母さんも何も知らないようでしたけど……薄々そんな予感はしていましたが実際聞くと緊張してしまいます。でも、トーハさんとでしたらできる気がします。他の国にあると思われるオーブも探さないといけませんし」
彼女がこちらを見て満面の笑顔で言う。
うっ……できるだけというつもりだったのでこう純粋な表情をされると辛い…………。
「よし、それじゃあ港へ向かおうか! ここから近い港はどこ? 」
気持ちを切り替えパン! と手を叩き尋ねる。すると彼女はすぐ「北東方向です」と答えた。
「なら北東へ向かおう! 」
目指すは北東の港、いざ出発だ! ! !
………………そう意気込んだ時
「ああああああああああああああああああああああっ! ! ! ! 」
彼女が何かを思い出したように大声を上げた。
「ど、どうしたの? 」
「忘れ物………………してきちゃいました。すみません、叔母さんの家まで取りに行ってきます! 」
彼女が申し訳なさそうに言った。
忘れ物を取りに村へ走るダイヤを数回待ち合わせした木の上で見送る。さて、忘れ物を取りに行くだけなら30分ももあればお釣りが来そうだけどどうしようか? 辺りをキョロキョロと見渡すも特に何も変わったことがない平和そのものの森だ。
思えば、ここに来てからも色々なことがあった。特に何かを起こさないでもたまには平和を満喫するとしよう。
そう決め込んで木の上で葉に隠れのんびりと馬車が行き来すること数分、
「見つけたぞモンスター! 」
と何やら下から声が聞こえた。
しまった! 見つかったか! !
思わず冷や汗をかいて恐る恐る下を見たらどうやら俺のことではなかったようだ。下を見ると1人のダイヤと同じくらいの茶髪の女剣士がタカラスと相対していた。見る限り鎧も着込んでいなく軽装という感じだった。
何だ何だこの時代でも意外と鎧は高級なのか! ? あんな軽装じゃ早く勝負がついてしまうぞ!
思わず身を乗り出していつでも飛び出せる用意をしていると予想通り勝負はあっという間についた。
しかし結果は俺とは異なっていた。
「くらえ! オレの必殺技……『秘剣稲妻斬り』! 」
女剣士は声を上げるが否や即座に剣を構え駆け出しタカラスの懐に入り込み一気に切伏せた。タカラスは声を上げる暇もなく一閃された。
「みたかああああああああああああああ! ! ! ! ! ! 」
女剣士は大声をあげて興奮した様子で村のほうへ戻っていった。
鎧を着ないというのは動きが軽くなるという利点もあるのか………………確かにあれ重そうだよなあ。それにしても、必殺技か……あの年の女性にしては変わってるな。
しかし、必殺技というだけあって一閃されたタカラスをみると鮮やかな切り口だった。いきなり懐に入られてこんな風に斬りつけるだなんてかなり手強そうだ。
見つからなくてよかったなあ………………
そう改めて幸せを噛み締めたときだった。
「見つけたぞゴブリン! 」
真下から以前聞いたことのあるような声が響いた。視線を向けるとそこには以前戦ったダンスタンとミスアという2人組が険しい目でこちらを見つめていた。
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