2‐36「ドンカセへ」

 翌日、またまたスライム達に厄介になった俺は目を覚ます。常に暗いというのは眠ることを意識すると悪いことではないと悟った。見張りの時間は彼らと分担したが数が増えた分一体当たりの眠ることのできる時間も増え彼らも助かったようだ。


「おはよう」と見張りのスライムに挨拶をしたあと木の棒で影を見るとまだ南東をさすにはかなりの時間があったようなので川を探して水浴びをした後最後の収穫とリンゴを取りに向かった。リンゴを取ってから戻り木の影を再び確かめると丁度今から向かえば丁度集合時間になりそうだった。


「ピューイ」


 それを悟ったのかスライムが1体洞窟から出てきた。最初に出会ったスライムだ!


「名残惜しいけど、今度こそお別れだ。今まで世話になったよ、ありがとう」


 俺はそう言いながら別れの印とリンゴを渡しつつスライムの頭に手を置いた。スライムの頭はひんやりと気持ちが良かった。


「ピューイ……」


 言葉が通じたのか寂しそうに鳴く。その姿を見てスライムとの思い出が走馬灯のように脳裏に蘇る。


「そんな寂しそうな声で鳴かないでくれ……俺も寂しいんだ」


 そう言ってスライムを抱きしめる。スライムも小さく震えていた。抱き合う俺たちを優しく風がなでた。


「じゃあ、元気で!また会おう!! 」


「ピューイ! 」


 10分ほど抱き合い涙を流した後、涙を拭いてスライムと笑顔で別れた。元気に手を振るとそれに答えるようにスライムが跳ねる、俺は歩きながらもスライムが見えなくなるまでいつまでも手を振っていた。


 1人で森を歩いてニンビギに辿り着いた。途中何体かのオオカミやスライムと遭遇したが幸い、ゴブリンだったので特に戦闘もなく見逃された。


「あ、トーハさああああん! 」


 木の前には既にダイヤが立って待っていたようで俺の姿をみつけ手を振る。


「ごめん、待たせちゃったね」


「いえ、私も今来たところです」


 彼女がはにかんで答える。そしてバッグを下ろして


「馬車は既に予約済みでそちらに待ってもらっています。行きましょう! 」


 と言いながらバッグを開き俺が中へ入るように促す。中には袋に入ったパンや薬草、干しブドウなどがみえた。


「結構買い足してくれたようだけど重くないかな? 」


「大丈夫です、昨日腕立て伏せをしましたし頑張ります! 」


 彼女はガッツポーズをした。


 まあ、他に手段もないし彼女が頑張ると言ってくれるなら仕方ないか、ありがたく頼るとしよう。


 俺は彼女のバッグに入った。


「それでは、出発です! 」


 そう言うと彼女は元気よく歩き出した。



2章終了時点ステータス

 阿藤踏破


【職業】会社員


【種族】ゴブリン(ヒューマン)


【武器】蒼速の剣


【筋力】C+


【魔力】─


ダイヤ・ガーネット


【職業】魔法使い、冒険者


【種族】ヒューマン


【武器】伝説の杖


【防具】鎖帷子


【筋力】D


【魔力】A+


【魔法】シルド(盾)、ヒール(回復)、フラッッシュ(発光)



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