2-14「ゴブリンVSゴーレム」

 動き出したゴーレムがこちらに向かってくる。全身が岩でできているため動きは遅い。とはいえあの巨体だ………威圧感はは絶大だ。脳裏にルイーダの死が蘇った。慌てて振り返り彼女を見ると震えていたが彼女は俺と違って中に入った訳ではなかった。


「来ちゃダメだ!俺が何とかする!」


 咄嗟に彼女を守らなくては…と思い彼女の返答を待たずにドアを閉めた。有難いことにオートロック式のようでこちらからは開かないようになっている。これで彼女が狙われる心配はない!


「こっちだ!」


 俺は言葉が通じていないだろなと思いつつゴーレムに声をかけ駆け出し、ドアから徐々に遠ざける。


 岩の身体に加えてこちらは小柄なゴブリンなので徐々に離れていくも部屋の壁には限りがあるので縦横無尽に動かなければならない。俺は捕まらないように注意を払いながら敵を観察する。


 敵は………見ての通りゴーレムだ、人間と同じ造形で腕と足が2本ずつに頭が1つ確認できた。全身が岩でできているため動きは遅い。しかしそれは裏を返せば………攻撃と防御は岩があるため厄介だということになる。前に戦ったタイプのサイクロプスのようにウィークポイントを突くというのが最善のやり方であろうがそうもいかないようだ………

 困ったことに顔の部分には目もなく腕などの関節部分にも接合パーツのようなものは見当たらない………全身が岩なのだ!!!

 核は岩に覆われているタイプか?そもそもそんなものはないのか?とにかく表面が岩しかないのならどっちでもいい!

 

………要するに早くも現れたサイクロプスの上位互換というやつか?


 俺は絶望に駆られ足が止まりそうになる。


 いいやダメだ!そんなことはないはずだ!何かウィークポイントがあるはずだ!考えろ………考えろ………


 弱気になる自分に強引に活を入れ足を我武者羅に動かし走るのを再開したそのとき、俺の脳裏にある記憶が浮かび上がった。



 子供のころ俺は広間でビデオを見ていた。猫型ロボットと眼鏡をかけた少年が昔の日本に行くという内容だった。そして偶然にも昔の人は石器を岩と岩をぶつけて作っていたことを知った。

 それを見た俺はすぐさま家を飛び出し手軽な石を2つ探し片方を地面に置いてから持っていたほうの石を思い切りぶつけた。

 すると持っていたほうの石が割れた反動で俺も石に手をぶつけてケガをした。


 何のことはない、ただの影響されやすい子供の失敗談、俺にとっての黒歴史だったが………今この記憶こそが俺にとっては重要なことだった!

 

俺は走るのを止めゴーレムに向きなおる。無論諦めたというわけではない、作戦がある!!!敵は諦めたとみるのかこちらに右の拳で攻撃をしてくる、俺はすかさずそれを右側に避け素早く右腕に飛び乗り駆け上がり肩まで登った。


「おーい、こっちだー!」


 挑発しながら足で肩をコンコンと軽くたたく。目がない敵がどうやって俺の位置を感知しているのか………音か熱か呼吸かは定かではないが今回は見つけてほしいのだからどれでもいい。感知させるためにできることをすべてやった。

 

 すると敵が俺に気付いたのか俺にめがけて左の拳を振るう!俺はそれを当たる直前で肩から飛び降り躱した。


 目標である俺に命中しなかったということは奴の拳は空しく空を切るのかというと無論、そうではない!

 

 奴の拳は奴の右肩目掛けて直進し………見事右肩に命中した!


 ズガアアアアアアアアアン!という音とともに奴の右肩に亀裂が入るも砕けなかったようで左腕の肘より下が空しく割れた。


 ………どうやらウィークポイントがないのなら自爆させて作ればいいという企みは想像以上にうまくいったようだ。


 次は───と出口の扉を見つけるもこちらは扉までは長い通路になっており、残念ながら硬いであろう扉に奴の拳をぶつけさせ壊すという作戦はできないようだった。

 辺りが所々破壊されているのに奴が5体満足なのをみるにそこらの壁に攻撃をさせても逆効果だろう。


 だったら………


 俺は再びゴブリンに向きなおり奴の攻撃を待つ。すぐさま振り下ろされた拳をさっきと同じように右に避けた後腕を伝い肩に乗った。そして奴の肩の所で棍棒を両手で持ち大きく振りかぶる。


「喰らい…やがれええええええええええええええええええええええええええ!」


 俺は奴の亀裂の入った部分目掛けて棍棒を思い切り振り下ろした。ボゴオオオオオオオン!という音とともに待ってましたと言わんばかりに亀裂から徐々に棍棒が奥へ食い込む。


 ───が、想定よりもゴーレムの身体は固く棍棒が……腕が……メキメキと悲鳴を上げる。


「この!ゴブリンを………舐めるなああああああああああ!!!」


 俺は力を振り絞り両腕に力を籠める。やがてズガアアアアアアアアアアアン!という音とともに肩は砕け俺は空中に投げ出される。肩が粉砕したのでズシン!と右腕が落ちる音を聞きながら俺は両足で着地した。


「ぐっっっ………うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」


 火事場の馬鹿力というやつか…ゴーレムの肩を粉砕できたもののあまりの痛みに俺は両腕をダランと垂らしながら大声を出してしまう。棍棒が折れているのが視界に入ったが幸か不幸か腕は折れていないようだった。

 両腕がしばらく使えないというのはいたかったが、ダイヤに回復してもらえばいい。それに奴も両腕を失っては侵入者にどうすることもできないだろう。

 俺はオパールさんとの約束通り彼女を守ることができたことに安堵し顔をほころばせた。



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