早食い大会

鈴木かくひと

第1話

実況「いよいよ決勝戦が始まります。勝ち残ったのは三人の猛者。一人は中肉中背お腹だけぽっこり出ている並山選手。続いて巨漢のデーブ選手。最後の一人は細身の骨川選手。三人とも前例に無いほどの好成績で予選通過を果たしているようですが、どう思われますか、解説の前半さん」

解説「そうですね、これは三人の」

実況「あっと料理が運ばれてきました! ピラミッドのように詰まれた大量のおむすびだ! これを先に食べきった選手が勝利となります。今回はおむすびと言うことですが、これが試合にどう響くのでしょうか、前半さん」

解説「そうですね、これは日本人」

実況「さあ試合開始のホイッスルです! 前半は退屈なのでカットします」

解説「そ」


――――


実況「さあ試合も後半戦。高々とそびえていたおむすびのピラミッドも大量に削られています。信じられません。例年ならとっくに棄権者が出ている量です。どう思われますか解説の後半さん」

解説「ここまでの食事力はプロでも見たこと無いですね。レベル高いですよ」

実況「おっと、ここで審判のホイッスルだ。並山選手の元に駆けつけたようですが・・・・・・」

解説「ボディチェックが入りましたね」

実況「ああー! 並山選手の服の中から犬が! 並山選手食べる振りをして服の中におにぎりを放り込んで犬に食べさせていた!」

解説「服の中の犬に食べさせていたんですね。これは反則でしょう。これでデーブ選手と骨川選手の一騎打ちになりました」

実況「あっと、審判デーブ選手の元にも掛けより、ボディチェックでしょうか」

解説「なにやら揉めてますね」

実況「ああー! デーブ選手の口から謎の生物が! 胃液まみれの謎の生物が地面に吐き出されました!」

解説「お腹の中の生物に食べさせていたんですね。これは反則でしょう。これで骨川選手の優勝ということでしょうか」

実況「おっと? 審判、骨川選手にもボディチェックをする様ですが・・・・・・骨川選手の口に手を当てて何かを唱えています。おっと骨川選手の顔に何かの魔方陣が!」 

解説「あれは転送タイプの魔方陣でしょう。口の中の魔方陣に食べ物を放り込んでどこかに転送させていたんですね。これは反則でしょう。全員反則ということで今回の大会は中止・・・・・・」

実況「ちょっと待って下さい! 審判の様子がおかしいですよ・・・・・・泣いている?」

解説「主催者の金持ちまで涙を流して嗚咽してますね。これは?」

実況「!! 今入った情報に拠りますと、魔法で転送されたおにぎりは恵まれない子供達に贈られていた模様です!」

解説「恵まれない子供達に食べさせていたんですね。これは反則でしょう・・・・・・こんなもん、ヒック、泣いちゃうでしょうが!」

実況「涙ちょちょぎれお涙ごっつぁんで、優勝は骨川選手です!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

早食い大会 鈴木かくひと @yomu_kaku

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る