ABILITY
神楽
−87話 青いバラ
「きゃあああ――!」
少女の甲高い声が響き渡る。しかしその表情は恐怖と言えず、笑顔そのものだった。その声を周囲で聞いていたお年寄りはクスクス笑っていて、誰も助けようともしない。
その少女は鬼に捕まってしまった。
「はい、捕まえた」
「お兄さん早いからすぐ捕まっちゃうよ」
ため息交じりに悔しさを込めて少女は言った。
小学生くらいだろうか、五人の少年少女が鬼ごっこをしていた。福祉センターであるこの場所には「みんなのひろば」という子供の遊び場がある。そこで今日初めて顔を合わせた五人は昔からの友達のように打ち解け合い遊んでいた。
「これから本を読みますよ」
透き通った声で、「みんなのひろば」の職員が子供達に声をかけた。
「あっち行こうぜ!」
五人の中で一番年上だと思われる少年がそう言うと、四人は頷き、皆で職員の方へ向かった。
職員が読み語りを終えた後、先程鬼に追われていた少女が一つの本を持ってきてこう言った。
「お姉さん、これ読んで」
その本は少し分厚く難しい漢字が書かれているものだった。職員はその少女のキラキラした目に負け、「うん、いいよ」と笑って答えてしまった。
中年の女性が読み聞かせをしていた職員に声をかけた。
「もう子供達、みんな寝ちゃってますよ」
「あら、本当。やっぱり難しい本だったのかしら」
そう言い、子供達に毛布をかけた。
すると中性的な顔立ちのヒトが現れてこう言った。
「子どもの寝顔は癒されるね。ボクもここで一緒に寝ていいかな?」
職員はそのヒトを不思議そうに見ながら、「どうぞ」と声をかけた。
ここの職員は基本的にどのような人でも受け入れることと言われているので、少し変わった人がいても普通に受け入れる。
「ありがとう、じゃあ失礼するね」
そのヒトはある少女の隣に行き横になった。
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