追宮信一は未来に帰れない

野口マッハ剛(ごう)

第1話 未来世界、どうなっているの?!

 20XX年。

 現代世界とやらは平和だよな。宇宙的な意味で。

 俺は高校から下校するところだ。

「信一? 一緒に帰ろ?」

 俺を呼び止めたのは、未来人仲間である桃金枇杷子だ。俺と枇杷子はそれぞれの未来世界から来た未来人。その秘密は誰にも知られていない。

「いいぜ? 歩いて行くか?」

 俺と枇杷子は自転車を押しながら帰ることになる。これで何回目の一緒の帰り道だろう?

 未来人の決まり、その一。その先の世界で恋愛してはならない。

 その約束を俺は守っている。もちろん枇杷子もだ。

 しかし、いったいどっちの未来世界がより未来なのかはわからない。

 俺はこの現代世界に旅行に来ていた。ちなみに枇杷子は任務で来ている。

 任務ってなんなのだろうなぁ?

 俺たち二人は自転車を押しながら歩く。

 ちらっと枇杷子の方を見た。

 目が合って、ポッと顔を赤らめる枇杷子。

 おい、待て。恋愛は禁止なんだぜ?

 俺は気付かないふりをする。

「ねぇ、信一? 私たちって友だち、だよね?」

「それがどうした?」

「うふふ、なんでもないよ♪」

 ん、待て。

 そうやって人をはめようとするのやめろ。

 万が一、この現代世界で未来人二人が恋に落ちようならば、それぞれの未来世界が変わってしまう。

 まったく。

 そもそも、なぜ俺たちが未来人だとわかっているのかは、この世界に来る前に事前に知らされていたからだ。

 だからこその恋愛禁止ルールが重要なのである。

 それなのに、この枇杷子っていう女子はわざと俺を恋に落とさせようとしている。

「ねぇ、信一?」

「なんだ?」

「私と未来、どっちが大事?」

「未来に決まっているだろ」

「それじゃ、私の居ない未来は?」

 う、こいつ……! 誘っていやがる‼️

「ねぇ? どうなの?」

「あのな? 俺たちは友だちだろ?」

「そうよね……」

 ふう、危ない危ない。

「それじゃ、私はどう思っているって思う?」

「知らない」

 俺が冷たく言うと、枇杷子は自転車を押して歩くのを止める。

「どうしたんだよ?」

「ひどい、私のことキライなの?」目がうるうるとしている枇杷子。

 う、こいつ……。

「あのな? 未来人の俺たちがこの世界で恋愛するとどうなるか知っているだろ?」

「いいんです、私の居た未来世界の地球はブラックホールにとっくに飲み込まれたので」

 え? どういうわけ?

「私はあなたを一目見た瞬間から恋に落ちましたからね、うふふ」

「うふふ、じゃないよ! え? もう地球がないの?!」

「はい♪」

「はい♪ じゃねぇよ! どうなるんだよ! 俺、帰れないじゃん!」

「大丈夫、信一の居た未来世界の地球はまだあるのよ? だから、道連れにするの」

 おい、やめろ。

 俺は自転車に飛び乗り全力で逃げ出した。



(続く)

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