第12話 争いのあと
寝る前に国の様子をアプリで確認してみる。
学校帰り襲ってきたやつの国はどうなったのかを確認するためだ。世界全体図を見ると、領地が圧倒的に広がっている国がいくつかあった。
「僕にも見せてください」
アルベールは光の肩に座り、一緒に国を確認する。
国は色で領地を示しており、1つの国が大きいほど単色で示される。
全体図の北、山に囲まれた国がどんどん領地を広げているようで、一帯が1つの国の紫色になりつつあった。
南にはアルベールの国やクラシスの国があり、1つの国が大きくなっているようなことはなかった。様々な色が存在している。
東には南よりも細々した国があるようだが、やや大きめな国が1つある。しかし北側に比べればまだまだ小さい国だ。
西には特に大きな国も目立つような国もない。何も起きていないのかもしれない。
「北の方、すごくない?」
光がアルベールに話すと、アルベールは解説付きで答える。
「北の国は資源に乏しいのが現実です。土は痩せ、山には枯れた木も多く食料に困るほどです。だからこの戦争で領地を広げて食料にも困らないようにしたいのだと思います」
「へぇー……」
「どこの国もなにかしら抱えてますからね」
「これだけやられてるってことだよなぁ……出会いたくないよ」
「出会わないのを願うばかりですね」
「それな」
世界全体を確認した後は、アルベールの国を確認する。
変わらず町では笑顔があふれているが、路地裏に目をやると暗い顔をした人が目に入った。
「なんか変じゃないか?」
「こんな顔をしている方はあまり見たことないです……」
国民に話しかける機能はなく、暗い顔にさせる原因を知ることができない。
「そうだ!目安箱を設置しましょう!国民の意見を聞き取ることができます!」
ふと思いついたアルベールがスマホの画面を触り、操作し始めた。
メニューボタンからショップ、そこで目安箱をいくつか購入し国のあらゆる場所に設置した。
「後日、時間が経ってから確認しましょう。悩みごとだったり、よかったこと、要望を入れてくれると思います」
「なにかわかるといいな」
「ですね」
夜もいい時間となったので寝ることにした。
まだ戦いも始まったばかりだが、強い国がいくつかでてきている。今日のように襲われることなく過ごせることを願うばかりであった。
「おーはよ!昨日は眠れたか?」
学校に着くとすぐに新島がやってきた。遠くからでもやって来るのが見えていた。
「微妙なところかな」
「そっかそっか!俺はよく寝れた!授業中寝れば問題ないしな!」
新島は本当によく寝たのかいつもより元気な気がする。
新島のポケットからクラシスが顔を覗かせた。
「竜之介は本当によく寝たぞ。俺が説明し始めるとすぐに寝たからな……」
クラシスはため息をつきながら頭を押さえた。
新島がよく寝た理由は、おそらく小難しい話を聞いたので眠くなったのだろう。
「お疲れ様です、クラシス」
「ああ、サンキュー」
アルベールも理解したのかクラシスに声をかけた。
ガイダンスを含め、1日の授業を終えると今日も新島に連れて行かれて屋上へやってきた。
「光は部活入ってないだろ?だったら俺のとこに入ってくれ!」
「確かに入ってないけどさ、何の部活?運動も勉強も出来ないし」
「わり、言ってなかったわ。俺の部活、技術部なんだわ。やることといってもここの管理だけ」
こことは今いる屋上だ。屋上にはプランターがあり、様々な花が咲いている。
「ここの花の世話とか掃除すれば、屋上使いたい放題なんだよ。無理矢理先生にやらされてるんだけどな」
「だから前にここに普通に入ってたのか……なるほど」
「部員俺だけだし、ここ使いたい放題だし話し合いするのにも便利っしょ!ほれ、入部届」
新島は鞄からしわくちゃになった入部届を取り出して光に渡した。
「ちなみに顧問は学年主任の青沢な。必要なものは言えば買ってくれるし、基本はここの世話しとけば何も言われない」
「あの青沢が……よくここ使うの許可したね」
学年主任の青沢は厳しい教師である。授業をサボれば呼び出すし、呼び出しに応じなければ家に連絡されることがあると聞いた。
「問題児には何かをやらせとけば静かになるんだってよ。別に問題起こそうとはしてないんだけどな」
「酷い先生だ」
「んで、入ってくれるか!?」
自分のことを語ったとき、一瞬暗い顔をした新島だったがすぐに明るくなった。
「新島、くん?が言うなら入るよ……」
「ありがとな!苗字とかよそよそしいから、竜之介って呼んでくれ、光」
勢いよく光の手を握って嬉しそうに手を振る姿は犬のようだと感じた。
「よ、よろしく、竜之介」
「よろしくな!」
新島改め、竜之介はとても嬉しそうで、ポケットからずっとみていたクラシスも嬉しそうな顔をしていた。
「さっそくだが、花の世話すっぞ!草むしりと水やりだ。クラシス、アルベールも手伝ってくれるか?」
「おうよ」
「了解です」
4人で屋上の花の世話をする。
スマホは鞄に入れていたため、近くに他の契約者がいることを知らせる通知に気づくことはなかった。何事もなく部活動をしていた。
一通り世話を終えたとき、スマホで時間を確認したときにやっと通知に気がついた。
通知がきてから時間が経ってたが、誰か他に近くに人がいなかったのでそのままにして帰宅した。
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