男はみんな狼なのよ?(2)
少し面倒だったけれど大事な用件かもしれないと折り返し電話をかけたものの通じない。とりあえずなんの用かと尋ねるメッセージを送っておく。
ぽてっと枕もとにスマートフォンを置いて、渉はすぐに寝入ってしまった。
「わたるー。お父さんと工場に行くんでしょ。起きなさいよー」
ドア越しに母親の声が聞こえたときにはもう朝。寝ぼけ眼で画面を見ると、昨夜寝入った後に遠藤からまた着信があったようだ。完全にすれ違いだ。
メッセージでの返事はないから結局なんの用件かがわからない。大したことではないということか。
朝から電話しても出ないだろうと思い、しばらくしてから電話することにする。
朝食の後、父親とふたりで工場に向かい、L型アングルを階段の踏み板の寸法に合わせて切断してもらった。それから近くのホームセンターに行ってコンクリート用の接着パテを手に入れる。
工場に戻って必要な道具を軽トラックに積み込み、いったん自宅へと帰った。
昼食のそうめんを茹でてもらっている間にスマートフォンをチェックし、遠藤に折り返しの電話を入れるつもりでいたことを思い出す。
その場ですぐにかけてみると、今度はすぐに遠藤が出た。
「お疲れ。何度か電話もらってたみたいだけど」
『あー、うん、頼みたいことあったんだけど。もういい、大丈夫』
遠藤はどこか外にいるのか、周りががやがやしている物音が伝わってくる。
「いいのか?」
『うん、いい、いい』
なんだか忙しそうだ。じゃあまた休み明けに、とだけ挨拶して渉は電話を切った。
「お兄ちゃん今日も〈ひまわり〉に行くんだよね」
真美は自分も行きたそうにしていたが、友だちと約束があるから行けないと残念そうだった。
今日も日差しがきつくて汗が出る。渉は頭にタオルを巻いて気合を入れ、軽トラックを運転して〈ひまわり〉へと向かった。
「げ。また来やがった」
顔をゆがめる
「言っとくけど、かやこはいないぜ」
「え?」
「用ができたって、今日は来ないって。いいトコ見せたかったんだろうに、残念だな」
そりゃあ茅子に会えれば、と期待はしたが目的はそれじゃない。自分にできることをしに来たのだ。しっかりと、丁寧に。
「よし」
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