昼下がりの衝撃(3)

「結婚しようと思って」

「誰と?」

「かおるに決まってんだろ!」

 反射的に愚問を発してしまった渉に望月が突っ込む。言われてみればそれはそうだ。望月のカノジョのかおるも渉の同級生で、ふたりは高校時代からの付き合いなのだ。


「四年間遠距離で我慢してもらったしさ、もう結婚しちゃおうって言われて、それもいいかなって」

「え……向こうからプロポーズされたってことか?」

「あれ? そうなるか? うん、そういうことか」

「そういうもんか」

「そうだなあ」

 ちょっと言葉が出てこなくて、渉は黙って望月の顔を見つめる。望月も反応に困った様子で渉を見つめ返す。


 しばし男二人で見つめ合ったあと、ようやく思い至って渉は言った。

「それはおめでとう」

「ん、まあな」

 友人の結婚など渉にとっては初めてのことで、どう応じればいいのかわからなかったが、多分これで正解なのだろう。


 それで、と望月は改めて身を乗り出した。

「結婚することに決めたけど、入籍とか式とか全然まだ先の話で」

「うん」

「報告したのも親以外でおまえが初めて」

「そっか」

「今日もこの後、かおると待ち合わせて式場見学に行くんだけど」

「え、時間大丈夫かよ」

「あと少ししたら行くけど……ああ、だから結婚式、おまえに新郎側の受付とか、二次会の幹事とか、頼みたいんだけど」


 顔の前で両手を合わせて望月はぎゅっと目を瞑っている。こんなふうに拝まれてしまったら断れるわけがない。

「わかった。なにすればいいのか、まったくわからないけど」

「それは大丈夫。段取りとか全部こっちで考えるから。当日、動いてもらうだけでいいから」

「そうか」

 こくこく頷いて渉は了承した。初めてのことでとにかく何もわからないのだし。


 呼び出したのは自分だからと奢ろうとする望月を制し、割り勘で会計をしてファミレスを出た。

 ビルから外に出てみると、梅雨の合間の青空が鮮やかで、既に夏のような大きな雲の白さも眩しかった。週末の好天候のせいで行き交う人の数も多い。


「あっついな」

「もう夏だな」

「そのうちまた、釣りに行こうぜ」

「おう」

 短く言葉を交わして手を振ろうとしていた望月は、思い出したように通りを見渡した。

「おまえの会社、近いんだよな」

「そうだけど、ここからじゃ見えないかな。もう少し、先」

 腕を上げて渉は駅前通りの先を指差す。

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