ウェディングドレスは誰が着る(3)
「あー、うん。実際のとこ、嫁さんの気持ちなんかわからんけどなー。こう思ってればいいんじゃないかっていうな、うん」
「さすが人生の先輩っす!」
「俺だってさほど年食ってるわけじゃないんだぞー」
望月の愚痴が落ち着いた後はお互いの仕事の話などもした。
「自動運転てそこまできてるのか」
「きてますよ、レベル5までいけばナイト2000っす」
「うおお、ナイトライダーだ」
「産業用ロボットだってもうAI搭載で自分で学習するんですよね」
「工作機械だって対話型プロでプログラミングの自動化が当たり前になってるからな。人間の手間がどんどん減ってくよな」
「そうなったら、人間は何をすればいいんすかね?」
渉が漏らすと、川村も望月も黙ってしまった。ひとりあっけらかんとしているのは遠藤だ。
「いいじゃないっすか、人間は遊んで暮らしてれば。も、みーんなAIとロボットに任せて」
「おまえみたいのは真っ先に淘汰されるんだろうなあ」
「ム、なんすかそれ」
「それくらいの危機感をもって、人間にしかできないことを考えなくちゃだろ」
「むー」
「渉はどう思う?」
「子育てとか」
ぽろっと、ぼんやり考えていたことが口から落ちた。直後に、なんじゃそりゃとセルフツッコミを入れる。だが、望月も川村もうんうんと頷いた。
「感情的なことは人間ならではだもんな」
「そうするとなんか深くないですか? 仕事に感情を持ち込むのってよくないってのが今じゃないですか、でも逆に精神的な支柱が必要なことが増えてくってことですよね」
「想像力とか創造力とか」
「ドヤ顔するなよ。自分でうまいこと言ったと思ってんのか」
「遠藤くんて面白いよねー」
場が盛り上がるのに笑いながら渉もビールのジョッキをあおった。
「確かにあるあるだわ。結婚式なんて大昔すぎて覚えてないけど」
「蓮見さん二回やったんじゃないですか」
「するわけないでしょ、あんな恥ずかしいマネ。今のダンナとは入籍しただけ。届けだって私ひとりで出しに行ったし」
「ひええ、それはクールすぎですよ」
翌朝、渉が出社したときには遠藤がぺらぺらと昨夜の話を披露していた。
「仲直りできそう? 高山くんのお友だち」
優しい蓮見さんが気にかけてくれて、渉はデスクチェアに座りながら頷いた。
「きっと大丈夫っす。あいつら高校のときからの付き合いで長いし、お互いのことよくわかってるだろうし」
「カノジョさんが我儘言うのも愛されてる自信があるからってワケね」
「羨ましいですねえ」
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