銀の君は微笑まない
@leefie_no
銀の君は期待しない
自分が異常なのだと気付いたのはいつだったか。
幼い頃から誰も知らないことを知っていた。
幼い頃から誰も分からない言葉を話していた。
幼い頃から異様に成熟していた。
女の人が私を見下ろして気持ち悪いと泣いていた。
彼女は、私の母だった。
男の人が私に恐ろしい形相で怒鳴っていた。
彼は、私の父だった。
私はただそれを淡々と受け入れた。
それがまた、彼らの行動に拍車を掛けた。
そうして月日は経ち、ある日のこと。
私を取り巻く世界に、新しい存在が加わった。
私よりもずっとずっと小さくて。
しわくちゃな顔で大声を出して泣く。
近づけば、キョトンとして真っ黒い目が見つめて。
………嬉しかった。初めて私を認めてもらえて。
そしてとても愛おしいと思った。
そろりと頬へ手を伸ばした。あと少しで触れられる。その時だった。
「近付かないで!」
誰かが思い切り私を突き飛ばした。
母だった。
床に倒れ伏した私を、母は弟を抱き締めて睨み付けた。
「私の大事な息子に近寄らないで!穢らわしい………!」
その時、決めた。
今まで縋り付いていたものから、手を放すことにした。
痛む身体を無視して立ち上がる。
深々と頭を下げた。
____さよなら、私の母だった人。
____さよなら、私の愛しい弟。
その夜、シルキーはひっそりと姿を消した。
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