誕生日
今日、和田って名前の友達の家で誕生日会を兼ねた飲み会したのよ。
男ばっかで全員で4人。
みんなで酒やツマミを持ち寄ってさ。誕生日のケーキも俺が買ってきて持ち込んだ。
定番のケーキにロウソクを立ててそれを消してもらって。
久しぶりだったんで、わいわいやりながら飲み食いしてさいつの間に終電が過ぎた時間になってた。
次の日は朝から俺は用事あったからこのままオールして、始発で帰ることにした。
じゃあ俺らも朝まで付き合うかって全員でオールすることになった。
さすがに深夜にもなると溜まっていた話すネタも尽きてきた。みんなは仮眠するかな~って思ってたら、誰かが百物語をしよぜって言い出したわけ。
ちょうど時間も俗にいう丑三つ時。
今思えば。一体誰が言い出したのか。
ちょうどロウソクもあるから、やってみようぜって変にもりあがってさ。
灰皿にロウソクを5本立てて、怪談を話し終わったら火を消す。まあ定番通りのやり方。
一人目は事故が多発する古いトンネルの話をして、ロウソクを消した。
次は自殺の名所のダムの話をしてロウソクを消した。
3人目は殺された女がずっと殺した相手の一緒にいる話。
その次は俺で、最後は和田だった。
そしておれの順番になった。何を話そうかと、今まで聞いたことのある話を必死に思い出そうとしたけど何も浮かばない。
もういいや。俺は適当に話を作ることにした。
「この家の近所にさ、ガレージ有ったろ?あそこって前はアパートでさ。そのアパートで殺人事件があったらしいよ。なんでも若い女が殺されてさ。頭に包丁を突き刺されて殺されたんだって。その女が今も出るらしいよ、駐車場で」
と、即興で作った話を言い終わると俺はロウソクを消した。
そして最後は和田の番だった。確か、自宅に留守電をセットしていたか確認の為に外出先から掛けたら女が出たとかそんな話だったと思う。話が終わると最後のロウソクを消した。
部屋が暗闇に障つつまれる…
それだけだった。当たり前だけど何も起こらない。
どこからともなく笑い声が漏れてくる
「何も起きねーな」「はいはい、終わり。終了~」
誰かが部屋の電気を点ける。
「なんだよ、つまんねーな。もっと呑もうぜ」
和田が俺に話しかけてきた。俺も笑いながら和田の方を見て頷いた。
「どうした?」
和田が俺の顔を見て、怪訝な顔している。
「ごめん、やっぱ朝早いから俺帰るわ」
自分の荷物を急いてまとめて俺は玄関から飛び出した。
全力で走った。少し酔ってるのに走ったから気分が悪くなってきて、立ち止まった。
いつの間にかさっき話してた駐車場まで俺は来ていた。
さっきの事を思い出して、俺はとうとう吐いてしまった。
涙と鼻水と胃液で俺の顔はぐしゃぐしゃになっていた。
「おい、大丈夫かよ!」
和田の声だった。
「悪酔いしたのか?」
彼は心配そうな表情を浮かべて近づいてきた。
「う、うん。大丈夫。この先でタクシー呼ぶから心配いらないから」
「無理すんなって、送って行くから」
「本当に大丈夫だから!」
俺は少し後ずさりして彼と距離を置く。出来るだけ姿を見ないようにしていた。
「なあ。さっきの百物語のさ話しなんだけど」
俺に話しかける和田の声は至極平静だった。
「あ、あれさ咄嗟に思いついた話で」
「この駐車場、この場所のことだろう?」
「だからあれは作り話だって言ってんだろ」
少し間が空いてから和田が語りだした。
「誰も知らないはずなんだよ。誰もに見られてもない。証拠も残してないはずだったんだけどな」
俺は意を決して、顔を上げて彼の方を見た。
笑っているような怒っているような表情をしていた。
「バラバラにして…」
俺の言葉で和田の顔色が変わった。
「燃やしたのか。頭に包丁を突き刺したままで…」
和田の口元が歪に歪む。強引に作り笑いを浮かべているのがわかった。
「どうやって知った?いつから知ってた?」
「今だよ、知ったのは…」
「何を訳わかんねー事を言ってっ…」
俺の視線の先が自分では無いことにようやく気づいたようだった。
俺が見ていたのは、和田のすぐ背後。
「さっきの百物語の後からいるんだよ。お前の後ろに。
頭に包丁を突き刺して、真っ黒に焦げてる首だけの女がよ!」
俺は振り返って力の限り走って、その場から逃げ出した。
背後に和田の悲鳴が聞こえたが、俺は振り返ることはなかった。
三日後
和田の家が火災に遭ったと友人から聞いた。
焼け跡からほぼ炭になった彼が発見された。
そして俺は思い出したんだ。
あの日俺たちは4人で集まったんだよね。
でも百物語の時さ、話は5話語られ、消されたロウソクは5本だったんだ……
一人多いんだよ。
和田の遺体を検死解剖を担当した監察医は頭を悩ませた。
皮膚側よりも内臓側の方がより焼けていた。
これは内臓から先に燃えたことを表す。
内臓から燃える?
アリエナイ
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