第12話 眠り
私は今にも倒れこみそうな、百合さんの元に走って近づいていく。
百合さんの元に辿り着いた私は、百合さんの片腕を私の首に回し、体を支える。
するとそこで少し遅れて向日葵がニヤつきながら風呂場から出てきた。
私が向日葵に声をかけるよりも早く、向日葵自身が百合さんに気づいたようで、ニヤついてた表情を真剣な表情に変えてこちらに駆け寄ってくる。
「どうしたの?」
向日葵はもの凄く心配そうにそう言いながら、百合さんのもう片方の腕を首に回した。
私はわからないの意味を込めて首を横に数回振り喋り出す。
「私が気づいた時には、もう倒れそうになってたから」
「とりあえずリビング連れて行こ」
向日葵はとても冷静とは言えない表情で、そう言うとゆっくりと歩きだした。
私も向日葵についていくようにゆっくりと歩きだす。
その後私達はリビングに置いてあるソファーに百合さんを座らし、向日葵はコップに水を注ぐために台所に向かった。
その間私は、少しでも百合さんの気持ちを休ませようと、百合さんの手を優しく包み込むように握った。
「ありがとう、葵ちゃん」
百合さんはとても疲れているのか、小さな声で、呟いた。
そのタイミングで向日葵が、コップを持ってこちらに小走りで近づき、百合さんの手に水が入ったコップを握らせた。
百合さんは手に握ったコップを、口元に持っていき勢いよく水を飲んでいく。
水を飲み干した百合さんは、コップを机の上に置き短くため息をついた。
そこで私は、百合さんの顔にあざのようなものがあるのに気づき、少し迷いながらも質問をする。
「百合さんこのあざ、どうしたんですか?」
すると百合さんはさっきまで、疲れていた表情を苦笑いに変え誤魔化すように答えた。
「あーこれね、気にしなくて大丈夫だよ」
そう言い終わると百合さんは、ゆっくり立ち上がり私と向日葵の頭の上に片方ずつ手を置くと、数回撫でた。
「二人とも今日はごめんね」
百合さんはそう言い終わると、私達の頭から手を離しリビングのドアを開き手を振りながら、一言。
「葵ちゃんゆっくりしていってね」
とだけ言いリビングを後にした。
その時見えた百合さんの首元にもあざのようなものが見えた気がした。
その後私と向日葵は、ほとんど会話をせずに夕食を食べ、寝るために向日葵の部屋に向かった。
部屋につくと向日葵が机を退かし、私が寝るための布団を敷いてくれた。
「寝るの布団で大丈夫?」
向日葵は布団を敷き終わると申し訳なさそうに、質問してきた。
私は少し慌てながら「う、うん大丈夫」と答え一つ気になっていたことを向日葵に、質問した。
「あの時向日葵、なんで百合さんに全然質問しなかったの?」
質問を聞き向日葵は、考える素振りもせずにすぐに答えた。
「あそこでお姉ちゃんに聞いても、適当に誤魔化されて終わるだろうなーって思っただけだよ。葵は? なんであそこで聞かなかったの?」
私は予想外の質問に、戸惑いつつもなんとか冷静を保ち喋り出した。
「あの時は家族でもない私が、あれ以上踏み込んだらダメな気がしてそれで」
私がそう言い終わると向日葵は「ふふ」と微笑んだ。
私がなーにー! と言うような表情をすると向日葵は、微笑みながら喋り出した。
「ごめんごめん、葵がそんなに気を使う必要ないと思うけどなーって思っただけ」
私はそれを聞いてなんだか照れくさくなり、向日葵から目線をそらすと追い討ちをかけるように向日葵が喋りだした。
「でも私は葵のそういうところが好きだよ」
私は顔が熱くなってしまい向日葵から逃げるように、布団に潜り込んでいく。
「照れちゃって葵、可愛いー」
向日葵の小馬鹿にしたような声が聞こえてきたので、私は跳ね返すように一言。
「もう照れてないよ! おやすみ!」
とだけ言い布団に深く潜っていく。
向日葵はまだ小馬鹿にしながら「おやすみー」とだけ言って布団に潜っていく。
「そういうところがホント好き」
向日葵から何か言われたような気がしたが、私はうまく聞き取れなかった。
「もう向日葵はなに言ってるの、好きとかそんなの」
私は向日葵に聞こえないぐらいの声の大きさで呟き、目を閉じて眠りについた。
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