第6話 誘い

 私は昨日の夜「もう寝ないとやばいので」とか言っていたのにもかかわらず、昨日よりも遅い時間に眼を覚ましてしまった。

 躓きそうになりながら急いで階段を降りて、洗面所に向かい準備を始める。


 いつもの数倍早く準備を終わらせリビングに向かい朝ごはんを食べ始めるが、いつもならゆっくり食べるているところを今日は、急ぎめで朝ごはんを食べ終える。

 なんとかこれでいつもよりも少しだけ遅れた時間には家を出れた。


 大丈夫向日葵はちゃんと居るとそう念じながら私は、分かれ道に向かって歩いていく。

 分かれ道につくとそこには、向日葵の姿が見えた、私は嬉しくなり思わず向日葵の元に走っていく。


「おはよ、よかったちゃんといて」


 そう言いながら私は眼に一粒の涙を垂らしながら、向日葵の手を握った。


「なにそれ、私はいつでもいるよ」


 向日葵は少し微笑みながら言葉を返してくれた、ただ何かその言葉に空元気のようなものを感じたが、私はここで聞いても仕方がないので無視をした。


「それじゃあ学校いこう!」


 向日葵は元気よくそう言いながら歩きだしていく。

 私もそれに続くように「う、うん!」と呟き向日葵についていく。


 その日一日は通学路、学校、帰り道、ずっと向日葵と一緒にいたが、何か昨日までとは違う壁があるような気がしてならなかった。


 それから数日が経った日、今だに壁は建ってはいるものの私と向日葵は今までどおりに、友達でいられている。


 そんな時帰り道で向日葵が突然呟いた。

「葵ープール行きたくない?」


「なんで突然プール?」

 私は普通に疑問を返した、すると向日葵は自分のカバンからスマホ取り出し、スマホの画面を私に見せてきた。


「ネットの抽選で当たったからだよー」


 自慢げにそう言った向日葵は一旦無視して、画面をみてみると、一年ぐらい前にそこそこ近いところにできた大きめのプールに、三名ご招待と書かれていた。

 三名、私と向日葵と百合さん、百合さんの水着どんなのだろう、そんな想像をしていると突然、私の胸を誰かが触った。

 私はすぐさま触った何かをどかして、その者から離れる。


「な、なに!?」


「私よりは小さいけど、私は葵ぐらいの大きさのほうが好きだよ!」


 その言葉を聞いて触った犯人はすぐに突き止められた。


「向日葵! やめてよ突然」


 触った本人向日葵は、少し微笑みながら「ごめん」と謝ってきていた。

 まぁ向日葵にならと私は一言「いいよ、許す」と呟いた。

 すると向日葵は何事もなかったかのように話を戻し始めた。


「で、葵はプール行くの? 行かないの?」


 断る理由もないので私は、「行く!」とだけ返事をした。

 ただ一つだけ気になっていたことを向日葵に質問する。


「三名招待って書いてあったけど、あと一人誰誘うか決めてあるの?」


 向日葵は何か言おうとしたが、私の眼を見て何か察したようで一度ため息をついて喋りだした。


「お姉ちゃん誘う?」


 私はすぐさま「うん!」と返事をした、その時の向日葵の表情は私とは真逆と言っていいくらいの表情だった。

 私はそれに気づけていなかった。

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