第2話 友達

 私はいつもの時間に目を覚まし、昨日のような怪しまれる行動は、なるべくしないようにしようと心に決め、頬をパンパンと叩き自分の部屋を出て朝の準備を始める。


 顔を洗い、髪を整えその他諸々が終わり始め、私の準備が終盤になった頃、大河が眠そうに階段を降りてくる。


「姉ちゃんおはよ」

 大河は寝起きながらもちゃんと挨拶をしながら私を急かすように洗面所に入ってくる。


「もうすぐで終わるから、ちょっと待ってて」

 大河が急かしてくるので私は、急ぎで準備を終わらせ洗面所を後にする。


 準備を終わらせた私が、リビングに向かうと朝のご飯が用意されていた。

 私は机に前に座り一言「いただきます」と言ってご飯に手をつけ始める。


 しばらくは何事もなく食べ進められたが、テレビに映る朝のニュース番組で百合という単語が、出てきた時に私はもの凄く慌ててしまい飲み物をこぼしてしまった。

 そこでタイミング悪く準備が終わった、大河が朝ご飯を食べるためにリビングに来ていた。


「お母さんーまた姉ちゃんが飲み物こぼしたー!」


 私は急ぎで台所に向かい、台拭きで濡らしてしまった机を拭いていく。


「姉ちゃんやっぱりなんかあったでしょ?」


 今すぐにでも逃げたかった私は、大河の質問に「なんもないよ」、と答え台所に台拭きを戻し家を出てていく。


 このままではいつか問い詰められて、吐かざるおえない状況になってしまう気がするので、知り合いの中で唯一昨日のことを喋っても大丈夫そうな友達に、喋って気分を落ち着かせよう。


 私はいつも友達と待ち合わせをしている分かれ道まで行くと、先に待っている友達の向日葵ひまわりの姿があった。

 向日葵は私が高校に入ってから初めてできた友達で、男の人とほぼ変わらない長さの髪型をしているが、顔はとても可愛いそんな女の子だ。


 向日葵は私に気づくと私の方向に振り向き、元気よく挨拶をしてくる。


「葵ーおはよー」


 私も向日葵ほど元気よくは無理だが、なるべく元気よく挨拶を返す。


「おはよ向日葵」


 すると向日葵はよろしいというように、首を縦に振っていた。

 私は向日葵の横を通り過ぎながら「ふふ」と笑みをこぼして、通学路を歩いて行く。

 歩き初めて少し経った頃に私は昨日のことを少し緊張しながらも向日葵に話始める。


「向日葵、私昨日恋しちゃったみたい!」


 私は勇気を振り絞ったのだが、向日葵は全く興味なさそうに「ふーん」とだけ返事をしてくる。

 そんな返事をされても私は負けじと話を続ける、なぜならこの話の続きをすれば向日葵は、必ず食いついてくると確信していたからだ。


「その人ね、女の人なんだけど」


 すると向日葵は私の言葉を切るように目の色を変えて早口で喋りだす。


「それって百合ってことだよね! 現実で百合が見れるなんて」


 天にお祈りをするかのように、両手を合わせてそう言った向日葵は私の肩を掴み。


「それでシチュエーションは? その人の特徴は?」


 質問ぜめになりそうだったので、私は手を広げ向日葵の前に持っていき向日葵を止める。


「ちょっと待って、一個一個説明するから落ち着いて」


「ごっごめん、私百合のことになると歯止めが効かなくなることが多くて」


 向日葵は先ほどまで天に掲げていた両手を、私の前に待っていき謝った後に、「続けて」と言われたので私は説明を始める。

 昨日、向日葵と別れた直後にその人とぶつかったこと、その人の特徴スマホのこと、最後に私が勇気を出してその人の名前を聞いたこと、あと少し恥ずかしかったが家でのこと。


 なぜだかはわからないが、向日葵は百合さんの特徴と名前を聞いた時顔が少し青ざめていたような気がする。

 ただそんな青ざめた顔も私の家でのことを話終えた時には、もうすっかり普段の状態、もしかしたら普段の時よりも元気だったような気がした。


 そのまま向日葵にどうしたらいいか聞こうとしたが、昨日の話をしているうちに学校についてしまう、流石にここまで人が多い場所でこの話をする勇気は私にはない。

 その気持ちを察してくれたのか向日葵もそれ以上聞いてはこなかった。


 なんとかその日の半分の授業を終え、お昼休憩になったので私と向日葵は教室で一緒にお昼を食べ始める。

 お昼で教室には生徒の数が少ないとはいえ、まだちらほら姿が見えるので、そんなところで昨日の話ができるわけがなかった。

 そんな私を見て向日葵はお昼を食べながら一つの提案をしてくれた。


「昨日の話ゆっくり聞きたいから、今日私の家遊びに来ない? それに家来たら絶対驚くから」


 最後の一言が気になってしまった私は、すぐさま返事をする、まぁ単純に話を聞いてもらいたいという気持ちが一番にはあるが。


「うん行く行く! 久しぶりな気がする向日葵の家行くの」


「オッケーじゃあ放課後ね」


 向日葵がそう言い終わったタイミングで、午後の授業が開始するチャイムが鳴り始めた。

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