最終章7  『ソロモンの悪魔の百三番目の試練』

「ソロモン72柱序列71位のダンダリオンの名に置いて課します。――カグラさんに百三番目の試練。――あの旗艦に居る少々目障りな異端審問官ハインリヒ・クラ―マーを消滅させなさい。ぷっくくっくっく」


「っざけんな!! ダンダリオン! 俺にそんなことができてりゃぁ! とっくにやっているんだよ! こんな時に冗談を言っている場合か?!」


「くっくっく。ほう……カグラさんにはできないと? ですが、残念ながらダンダリオンの課した試練に――拒否権はありませんっ! ぷっくっく」


 ダンダリオンが最も愉悦を感じるのは、

 カグラに無理難題を突きつけて、

 苦悶くもん歪むゆがむ表情を見る瞬間である。

 ダンダリオンは恍惚こうこつに震える表情で言い切る。


「はあぁ?! どうやって……あんな敵を倒せって言うんだよ?! ウルトラマンだってあんな700億の戦艦を破壊することは無理だぜ?! 今は、世界の危機だ、何か知っているなら教えろ! ダンダリオン!」


「ぷっくっく。世界の危機……はて。悪魔である私には、関係のない事、むしろ愉快な事ではないでしょうか? ……故に、カグラさんには答えは教えません。そうでうね、でも、それでは試練になりませんので、カグラさんに一つだけヒントは与えましょう。――思い出しなさい、あなたのもう一つの能力を」


(……俺の能力?……神楽流と、ソードオフガンの技術、攻勢防御結界……それと、確かもう一つあった…………でもあれは……現実逃避の妄想で……)


「……悪意の花を、そして悪意の花を討ち破る力……?」


「くっくっく。答えは言わないと約束していましたね? ――私があなたに与えられ得るのは、ヒントまでです。さて、それではカグラさんと、猫箱暴きの魔女デュパンさんを、異端審問官ハインリヒ・クラ―マーさんの居る、旗艦に直接転送して差し上げましょう――レメゲトンソロモンの鍵の魔法、ゴエティア Goetia


「おい! 僕にはにゃんの確認もなく巻き込みにゃ?!」


 猫箱暴きの魔女デュパンが抗議の声を上げる。

 とはいえ、この700億の狂信者たちが駆る

 空中戦艦は、異端審問官ハインリヒ・クラ―マーの

 指示のもとで動いている。恐怖と、隷属と、信仰による支配。


 ――故に、その信仰の象徴たる旗艦を落とすのは

 非常に合理的かつ効果的な策である。


 直接転移し、大将の首を落とすそれができれば、

 あとは烏合うごうの衆。


 それにしても、旗艦には何億という

 魔術結界のジャミングによって、

 転移阻害の術式が施されている。 


 その旗艦に直接転移させること

 ができると言い切るのだから、

 ソロモン72柱序列71位のダンダリオンの、

 レメゲトンソロモンの鍵の魔法は恐ろしい。


 ――最も、300億の魔術船が破壊された

 事によって、旗艦のジャミングの魔術結界に

 綻びが生じたという理由も大きいのだろう。


「それでは、カグラさん――ご無事で。私はカグラさんのために千番目の試練まで用意していますので……必ず生きて帰ってきてくださいね。ぷっくっくっく」


 そう言うと、目の前に荘厳かつ巨大な

 悪魔的な装飾を施した門が顕現し、

 

 その門がぎぃ……っという音を立て、開いたのであった。

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