最終章4  『セレネの千の妹とサン・フラワー』

 ソレイユ姉妹のツイン・マジックにより、

 この星を覆っていた一万を超える空中戦艦が

 爆発四散。――完全に沈黙。

 

 ダンダリオンと、ソレイユの魔法によって、

 前線の部隊は壊滅。


 密集陣形を採用することの愚を

 理解した、異端審問官ハインリヒ・クラ―マー

 率いる戦艦は、互いに距離を取ることで、

 連鎖的な爆発を防ごうという

 この判断は正しいであろう。


「次はワタシたちの番デスね。……行きましょう、千の妹たちよ!」


 セレネを元に作られた姉妹たちが、

 本部ギルドの地下に突貫で建造していた、

 最終兵器が解放される。


 ギルドの戦闘訓練用のグラウンドが、

 真ん中から、左右に綺麗にきれいにスライドし、

 その漆黒の空間から、巨大なるやりがせり出してくる。


 ――そのミサイルの名前はサン・フラワー


 小型の核融合炉を搭載した、超大量破壊兵器。

 構造自体は、異端審問官ランクルの搭乗していた

 フライング・コフィン空飛ぶ棺桶に搭載されていた、


 魔法推進機関、小さな太陽をセレネの科学的解釈

 により再構成したエンジンが核融合炉である。


 構造解析さえできれば、後は、この世界の

 賢者たちの複製魔法を使うことで量産が可能。


 現在は、ゆうに千を超えるが、

 雲一つない晴天に聳え立っそびえたっている。


「クオーレ・シスター0003――全サン・フラワーの整備状況の確認。オールグリーン!」


「クオーレ・シスター0083――二発目以降の発射に備え、賢者たちを指定座標に配備!」


「了解。妹たちデータリンクの同期をお願いしマス! 演算能力を並列に切り替える事によって、射撃精度の向上を図りマス」


「クオーレ・シスター0001から1000までの同意が得られました。全演算能力をマザー・クオーレ――セレネ姉さんに集中させます」


「ありがとうございマス! ――0131発射シークエンスのカウントダウンをお願いしマス」


「オーケー。カウントダウン開始、サン・フラワー壱號機から壱千號まで全てローンチ可能。10、9、8、7、6、5、4、3、2、1」


「――発射ッ!!」


 一斉に宙に向かって、ミサイルを飛翔ひしょうする。

 千を超えるサン・フラワーが成層圏を貫き、


 漆黒の暗闇を切り裂き、空飛ぶ棺桶かんおけ

 向かって一直線に飛翔ひしょうする。


 ――だが、一発も当たらずに空飛ぶ棺桶かんおけの横を通り過ぎる


「――開花ッ!!」


 セレネたちが開発したこのミサイルの名前はサン・フラワー。

 つまり、向日葵ひまわりの名を冠したミサイルである。


 何故なぜ、このミサイルに向日葵ひまわりを冠する名前が

 付けられたのか、その身をもって彼らは

 知ることになるだろう。


 空飛ぶ棺桶かんおけの横を通り過ぎたサン・フラワーは、

 戦艦の遙かはるか後方で、開花し

 ――まるで向日葵ひまわりの花弁から


 種が飛翔ひしょうするかのように

 3000の小型ミサイルが、防御が手薄な

 敵戦艦の後方から、敵戦艦に向かって飛翔ひしょうする。


 しかも、全弾、セレネ・シスターズが、

 制御する、誘導形式のミサイル。

 つまり、回避不能。


 セレネと、彼女の千の妹たち

 並列処理で高速演算をしなければ

 いけなかったのは、この小型ミサイルの

 無重力下の姿勢制御と誘導のためである。


 1000を超えるミサイルの一つ一つが

 3000の小型ミサイルを射出する。


 ――つまりは、300万のミサイルの制御を

 セレネとその妹たちが行っている事になる。

 

 だが、セレネの妹達による誘導は完璧。


 漆黒の空間を飛翔ひしょうする300万の

 ミサイルの最初の一撃が、着弾した。


 ――超新星爆発のようなまばゆい光がミサイルから放たれた


 そう。このサン・フラワーを冠するミサイルのもう一つの由来。

 それは、このミサイルが小型の太陽と同じような、

 熱量を発する核融合爆弾だからである。


 いくら小型のミサイルとはいえ、その爆発によって

 生み出される熱量は膨大。


 着弾と同時に、周囲の百隻以上の戦艦を

 破壊し尽くす。それが、300万発である。


 ――つまり、少なくみつもって3億の

 空飛ぶ棺桶かんおけが光に飲まれ消滅したのであった。


「全弾命中――更に、賢者たちによる複製魔術によるサン・フラワーの複製は完了済みです!」


「発射台への再装填も完了済みです!」


「壱號機から壱千號のコンディション・オールグリーン。いつでも発射可能です!」


「ラジャ。それデハ――カウント・ダウン完了後に全弾を発射してくだサイッ!」

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